自転車
自転車通学に最も適しているタイプは、効率の良さという意味で、荷物が多く財布がどこにあるのかが分からなくなり勘定台のところでまごつくようなタイプの高校生などより、冴えない首巻きをまいて基本的には静かに自転車通学を続けている彼女のような学生なのだろう。彼女は、自転車に乗っていながら、意識からそのことが抜け落ちていることがしょっちゅうだ。
学生に限らず、いつの世も自転車を速くこぐやり方の、これがずっと筆頭であり続けている。
過去のじぶんの失敗を、痛いくらいに鮮やかに思い出して見ること。
猛烈な勢いでペダルを回すとき彼女は彼女じしんを、昨日の愚かしさを見ている。夜中に思い出したくもないことで、しかし結局無為に部屋じゅうを転げ回っているぐらいだったら、自転車に乗っているときこそ、そういうことは思い出すようにしたほうがいい、自転車通学をしているうち彼女はだんだんそう思うようになった。
残念なのは、彼女にどこにも行く当てなどないこと、けして行くのが少しも怖くないわけではない高校ぐらいしか行くところが今の彼女にはないということだった。
だがもし行き場ができたとしても、恐らくじぶんのことだからきっと猛スピードで自転車をこぐか床の上でのたうち回るかするような、また何かとんでもない失態をそこでも演じるだろうから、今くらいの状態は、もしかすると私の人生で一番身軽なときだったりするのかもしれない。ちかごろ彼女はそう考えもするのだった。




