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 高校生にして初めてできた女友だちの家に初めて遊びに来た日。

「もしもし?」

 なのに、な。

「聞こえてますかー川野さーん?」

 聞いてるけど無理。今なんか色々と無理。

 ねぇ梁井、お姉さんがいるんだけど今。


「はい? 何いってんのあんた」

 まじに。ほんとに僕の上にお姉さんが。ガチャって、部屋入ってきて無言で。なんか怖くて顔とか見れてないけど。でも学生服だった。え、この人お母さん? あの、梁井さんのお母さんですか?

「何いってんの。お姉ちゃんで合ってるよ」


 あ、うん。

 じゃあよかった。

「うわー話進まねー。ってか、分かってるんだって私は。乗っかられてるのも、部屋の気まずい感じも、あんたがうつ伏せになって心臓バクバクさせてるだけで、なんにも選択肢が浮かんでない感じも。私が部屋に戻るまでずっと同じ体勢で待つつもりだった? 残念っ戻りませーん!」

 え罠? これが罠? スギ薬局でパンかいいってくるーつって出てった時からなんかアルかと思ったら、こーゆう?


 いやそうじゃないよどこだよ今。

「電話ボックスにいますけど」

 常識だがや、みたいな声音でゆわないで。

「お姉ちゃんがダメなんだ。私が電話ボックスからかけてる図ってゆうのが、最重要ポイント、みたいな。ちょっと分かりぢりーよね」

 分かりぢりー。

「姉妹コミュニケーションです。巻き込んでごめんね」

 分っかんねー。てか、もぉそろ重たくなってきた…。

「あや、それはちょっと」

 ぐぇ。

「お姉ちゃん出てった?」

 何だこれ。

「初日だし。まぁ、こんなところかなー」

 何だそれ。








 おもっ…くなーい。

「川野くんよ、上半身の状況はどーよ」

 押されて横になって跨がられている。微妙に首を両手で押されている。

「うはは。んじゃどしよっか今日は。何の話する?」


 ん?

「ん?」

 えなんすか。

「何よ、どうしたの」


 いや、お姉さんに空の袋見せられて。さっき急にカサカサって上で聞こえて。

 あ、メロンパン? メロンパン喰うってコトっすか。僕の上で。はいはい。

「もー、お姉ちゃんまたよるごはんの前にパン食べてんの?」








 謎といえば女友達のこの部屋全てが謎だということができる。でも、そこに実際にいて不思議に思うことがあった。妹のほうからの着信のタイミングが謎すぎる。いつも、まるきり監視されているかのようなタイミングなんだ。乗っかりお姉さんが入室し、ぐいと押されるのとほぼ同時。それか、お姉さんのほうが合わせているのか。単純に、なかよし姉妹ということなのか。








「おっ、やっと出た。何してたの」

 なんもしてねーよ。され続けてはいますが。ってか、これって何しとけば正解にたどり着けるんだ。

「黙って乗っかられとけばいいの」

 えぇ…そんなんは、だってさぁ、なんかムッツリ? じゃない? 乗っかられちゃってんのにさぁ、無言の反応とかさぁ。

「最低」

 うそ今けっこう紳士じゃなかった僕?


「私あんたのそーゆう想像力働いてる感じ出してくんの嫌いなんだよね。無神経のくせに、とか思っちゃう」

 聞き捨てならないなあ。

「じゃあ紳士ぶって、今すぐ紳士ぶって」

 盗撮してるんだやっぱ…。

「撮ってないってば。なん回いわせるのこれ」

 分かりマシタ。そう、えーどうしよ。えー、ヨーグルトがここにあるじゃんね。

「お姉ちゃん、ヨーグルト食べてるの」

 違くて。ヨーグルトがここにあるってゆうアレしてるアレで。

「あはいはい」


 ヨーグルトってもうヨーグルトじゃん、超。

 見たらそれでもう全開なんが伝わるじゃんヨーグルトって? けど、人って違うよなー、人違いとかってゆう時あるけどあれが僕は理解できない。そんなん当たり前にするし。

「当たり前ではなくない?」


 紳士って何だろう。

「一生なれなそうだった。少なくとも今日のあんたは」

 ありがとゴザイマス。

「お礼ゆうとこか、ここ」

















「大雪警報がでてる日なのに」

「でてんね」

「ヨーグルトにしかおれ、飽きずにいれんのかな? おれ、飽きないかな」

「待って、ちょっ仲根っちぃっ! あー行っちゃったよ気づくん二秒多かった」

「ろーかクソ寒ィもん。みんな歩くの速ぇのがちょっとうける」

「花言葉ってこわくね」

「こわくねぇよ何いってんの?」

「大雪警報が出てる日なのにヨーグルトがなんて?」

「えぇええっ? 花言葉…」

「つかさぁ、うちのいもーとがやばい最近。昨日おかんとケンカしとって。いもーと、なんでビオのまずいのをわざーざ買ってくんだよくそババーとかなってさ。俺もう小六のことってだいぶ分かってねーわーとかって考えちゃったんだけど。お前にとっての美味しいビオってなんなんって話じゃんだって」

「ビオって意外とたべるヒマないんだよな。つづかねぇってあれ」

「お前、うまくいってねーとかいい出すか?」

「ない、ないなまじで超」

「あそう」

「聞けし。だからもぉおれ思ったのはあれなんだって、ここにヨーグルトあんじゃん」

「ねぇよ」

「ここにヨーグルトがあるってゆうアレで。で、もうそれって超ヨーグルトじゃん? 見りゃ分かるんじゃんヨーグルトは。んでも人間って、てんから違うじゃん。何入ってんだか分かりゃせんっつーか。人違いとかってゆうトキあっけど、あれおれは正しくねぇと思うわ。そんなんなんの当たり前だもん」

「まーでもみんなクチではゆわないだけだから。さめてくもんだから」

「さめ…ていーかな」

「いんじゃね。もぉチャイムなるし」

「てきとーだよねお前って」

「やーだってオレ的にほんっとない、友情と? 恋愛と? ハザマデ? ゆれる? 的な? うわもう。口に出してみっとホントねーわコレ」

「あ、もーやめてケモノ系男子しゃべんないで? お前がそっち系の話し出すとこっちはすごいムナシイことになる」

「まぁでもアレだから、オレはお前に飽きないけどな」

「すごい今きもいトコでチャイムなっちゃったんだけど。お前すげーな」

















「もーだから正解なんてないから」

 なんかもうこのまま這っていこうかな。

「何それ」


 おかしーもんだってこんなん。

 わざーざ梁井が出てかなくてもいいかもしれないのに。


「ちがくて。ちょっと待ってだから、這っていこうかなって今」

 ん? ああ、気持ち的にはだからこまんま、お姉さんにつぶされてるテイだけど梁井のとこまで行ったろっかってゆう。イメ…トレ?


「私けっこううちから距離ある場所にいるよ、ってゆうか場所とか知ってる?」

 知るわけない。だって電話ボックスでしょ?

「今私感動しちゃったんですけど…」

 え?

「あー涙でてきた」

 え。

「あっ別に正解とかじゃ全然ないんだけど」

 もう何が何だか。

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