着ていきたい
男子学生のあたまはかつて同じクラスにいた友人の言葉、着ようと思えば何だって着れるんだから、という言葉を、今朝がたになり思い出すことに成功する。
けれども、少年は、自分のあたまの中から、そのような輝かしい言葉が転がり落ちてくるのを目の当たりにしたことで、そこまでの嬉しさを感じることはない。
隣のクラスにいる女の子と、終わりになった直後、初めての人と終わりになった直後の男子として登校することについて、十分な自覚のある、この高校生は、着ていく。
彼はまず、にざかな、それからもちろん非望と不自然でないくらいの上の空を着ていく。それからイエローカードとシンプルなプランを着ていくし、ちょっとした説得力も着ていくし、進化論も着ていくし、風の子も着ていくし、味噌ラーメン派も着ていくし、たくさんのチャンスも着ていくし、恋の煙も着ていくし、どや顔も着ていくし、美しい問いも着ていくし、深海冷蔵庫も着ていくし、パフォーマンス部門入賞者顔も着ていくし、その一方で、スリーピングバッグを着ていくし、それなりの円環を着ていくし、最果タヒを着ていくし、イキルサイノウを着ていくし、近づくどころか視界に入れることすら避けてしまう柵を着ていくし、プラスとマイナスのしくみを着ていくし、ロバの耳を着ていくし、それから寂しくて眠れない夜を始めとした、Aimerのファースト収録曲のタイトルすべてを男子高校生は着ていく。
まだ彼の周りの人間が知らない類いのユレ、ラベルを。それから男子高校生の患ってしまっている手軽さを、今朝も。昨晩手をつけることのできなかった、冬のしょうが焼き。雲のむこう、約束の場所。強欲な壺、どうにかなる日々を。
それから彼はフォーチュン・クッキーを着ていく、仕方がないと男子高校生が思うことで焼き上がる、それがフォーチュン・クッキーだ。




