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 おれと彼女は学校で一番静かな場所、来客用玄関で話をしていた。どちらもまるで感情というもののない表情をしてた。

 おれの彼女は、損害賠償についての話題に移った途端、口のなかに手を突っ込んだ。

 喉から長い廊下を彼女は取り出してきて、そしておれに背を向けた。そして駆け出した。

 おれもあとを追う。そうするのが当然だからだ。

 話し合いから逃げる彼女、そうやって走る彼女はどんどん変型していく。彼女のきゃしゃな腕だと思われていたものは、おれのことを裏切るためにある水よう日だ。彼女のあの口癖、「何だか大それたことをいっちゃった」もよく見てみりゃ怪しげな梯子だ。

 鮮やかな色をくれる歌をポケットから落としながら、彼女は走る。

 そして、いいいい訳洗剤で洗った制服の匂いをさせながら。

 とても追っていかれないところまで、それらが彼女を運ぶ。屋根より高い。

 おれは彼女のセットしたバナナの皮でスピンした。彼女が見てくれればいいが、と思ったが、彼女がさらにおれの知らない機能を使いこなし速度を上げる火炎放射みたいな音がうるさくて、おれは彼女を見失う前から何も見ないでいた自分を知る。

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