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悪路と制服
「その、よしって一人ごと時々するの、やめてくれるかな?」
今思い出しても刺される言葉。
たった今放たれたように鮮やかな声で、再生可能な言葉。
夕方のこみ合った車内。他校のブレザーのグループのほうを、学ランの胸のへんをおれは押さえながら、ちらちら振り返る。
「オマエの人生のどこらへんがヨシなん、っつってさぁ」
「それはさー。もうほんっと、それはさー」
「やな。うちの学年の女子っつーだけであれなっとるわ俺、リアルにあかんなってきとるし俺」
彼らは三人だけで、楽屋裏でするような話を話しているつもりでいる。
でもおれも深く何度もうなずいていた。




