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白すぎて
早朝の無音団地の駐車場に広げられた雪のじゅうたんの上になら、誰でも、何でも置いていい。
好きなものを好きなだけ、好きなように。
余らなかったこともあの俊敏さも赤黒字化も醜い傷口も均等も帰り路のことも気に病まないでいい時間帯。
好きなものを好きなだけ、並べて置いたっていい。
驚くほど近くでも。
白の上でなら多分、忘れていた息の仕方を思い出す。
白の上ででも多分、瞑想中学校での自分を思い出す。
どうしたって毎日、その頬の絵、その額に漂う弱さを消すみたいに前髪を退かせてやることは要った。
それくらい互いが互いのことを考えてるっていうこと、エラーするほどに指があるっていうこと。
それなのに彼らは、またしても彼らは、そこに自分たち二人だけは並べて置くことができない。どうしても。
白すぎて。




