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バイト先で恋愛感情を初めて知ったとかありふれてる、でも悪くない気持ちなのな
川面、という名札をつけた大学生の先輩のことを、オレと同じ高校生バイトのその女の子は、カワツラと読むのかカワヅラなのか、未だにはっきりと分かってないらしく、何かがあってその先輩を呼ばないといけなくなった時には、濁点のつくところを、見えるような見えないような、微妙な発音の仕方をすることで問題をクリアしているのだった。
オレにはその時の様子が滅茶苦茶可愛く見えていた。
オレは手に箸を持って構えていて、そしていつも、その子の口から出てくるそれ、半透明濁点に向かって飛びかかる。




