恋愛映画を出た僕と彼女は
僕の彼女は夏の長い階段を無言のまま降りて、そして駅のホームを渡る秋の風にほうっと息をついた。
ホームにある優しいベンチは一つ、座ってるのは他校の男子学生二人組。僕と彼女は無言のままでいることにし、二人組のしつっこい視線を浴びる。
僕たちはかなり汗かきのふたりだったけど、それももうお終い。
彼女と僕は、それぞれのやり方で、それぞれの藍色を拭った。
僕は手首で少し、それから肩のところの白シャツを引っぱりつつ顔を寄せそれでも拭った。
見ると、彼女は先に切符を食べていた。
しらない高校の女の子たちがホームに姿を現し、僕たちの背後を通り過ぎていった。僕の目には、女の子たちはすごく仲が良さそうに見えた。
片方の女の子の指定鞄の底に、弁当用の、昼食時に出し忘れた韓国のりがある。それを開けると、女の子たちは韓国のりを分け合って食べた。
見ると、彼女は先に顔を両手で覆っていた。
僕の彼女だったひとのスカートは、もう僕の前では揺れない。
僕の彼女だったひとの臍は、もう電車に乗って行ってしまった。
僕の彼女だったひとの謝る声は、もう電車に乗って行ってしまった。
するとホームに立つ僕は雪に変わるしかなくなる。
桃色の花びらで出来てるおもいでの改札口。二人の出てきた改札をふたりで、とあの時は思ってた。
僕一人でそいつを食べきって、ただの黒。
誰だって、いつだって、こんな僕だってはきこなしてきた。黒。




