高校生を加熱する
張り合いに終始していた勉強会を中断にして、高校生たちは下の階に移動する。挨拶の際にそういわれていた通りに家人たちはすでに外出ずみだった。高校生たちも遅い昼食を始めることにする。
二人の男子学生は借りていた冷蔵庫からカップサラダとパーソナルのフルーティ野菜ジュースを、それと機能性のまるでない鞄から惣菜パンの入った袋を取り出す。この家の娘も冷蔵庫から昨晩の残り物を出すと電子レンジに移し、そして加熱を始める。
二人の男子高校生の目にそれはホルモン鍋豪華縮小版といったふうに見える。皿の深さが明らかに足りていないと、黙ったまま二人ともが思っている。
汁がなみなみと入っていて、あんのじょう女子高生は皿に触ると熱がる。電子レンジに対してのあまりに大きな苛立ちのために、彼女は裸足の足で歩いて家から出て、町から出て、八つ違いの兄の暮らすアパートの一室の窓を叩き割り、そうしてやっと胸から吐き出すことができるすきときらい。
次の高校生は、せめて女友達の昼飯だけでもリビングに移しておこうと考える。五本指の左手で皿を持ち、リビングに向かいかけて、結局キッチンテーブルのところまで引き返してくる。電子レンジに対してのあまりに大きな苛立ちのために、彼は初めて友達に本音をいう。
「お前マジでやめてくんないアレ、あの役って木村佳乃じゃなかったっけってお前おれん前でなんべんゆう気なんだってマジでさ。何なのアレ、お前アレ口グセにする気なん?」
次の高校生は、せめて友達の友だちの昼飯だけでも移しておこうと考える。五本指の右手で皿を持ち、リビングに向かいかけて、結局キッチンテーブルのところまで引き返してくる。電子レンジに対してのあまりに大きな苛立ちのために、彼は初めて友達に本音をいう。
「自分のアドバイスがどれだけ、口に出したその瞬間から、グッタリとした、動き一つしない、意味の死んだ、うんこなのかっていうことにお前は思い至ったりしない。窓の外が暗いとか、目の前にいる人間の表情が暗いとか、そんなものしか頭にはない。俺の中で生きているアドバイスっていうのは一つしかなくて、こいつは姉からもらったものだった。イヤホンをした耳でいるのが、常に、常に正解なんだよってゆう、そのことが最近どんどん、どんどん」




