第一曲目
朝。
香ばしい匂いと共に聞こえてきたのは・・・。
「何で起こさなかったんだよ!!」
一つ下の幼馴染の声。
これは、自分で言うのもなんだが美少女の青春物語。
ちょっとずれてる美少女達のアイドル生活のお話である。
*
さて、話を元に戻そうか。
この状況を説明してやろう。
俺・・・あ、俺は小野 亞輝。
中3で、これでもれっきとした女だ。
で、俺はいつものように一つ下の相田 唯我と相田 優雅という双子(一卵性のはずなのに全く似ていない。)の迎えに来たのだ。
すると、今日は唯我が寝坊したらしく、唯我の叫び声と香ばしい朝飯の匂いがしてきたのだ。
「お早う御座います、亞輝ちゃん。ご飯出来てますよ。」
俺が呆然としていると、唯我たちの母親で著名な小説家である相田 優那さんに声をかけられた。
「優那さん、有難う御座います。で、今日は何があったんですか?」
「見ての通り、優雅が唯我を起こすの忘れていたんですよ。で、さっき起こし忘れていたことに気がついて部屋に行ってみれば、案の定、爆睡していたってわけです。」
「なるほど。」
通りで唯我が優雅に怒鳴りながら髪を結んでいるわけだ。
まぁ、優雅は優雅で名前の通り、優雅に朝飯食ってるけどさ。
って、今の文章、なんか早口言葉みてぇ。
「ったく・・・なんでウチがこんな目に・・・。」
「お前が自力で起きねーのもわりぃだろーが。」
「あ、亞輝。来てたのか。つか、ンなこと言ったって起きれねーし。」
俺と唯我がそんな会話をしながら席に着くと、優那さんが一言言った。
「全く・・・唯我も優雅もお互いに謝りなさい。確かに、唯我が自分で起きれないのも悪いですけど、起こしてくれ、と頼まれて起こさなかった優雅も悪いでしょう?」
「・・・・姉さん、すみませんでした。私も、悪かったと思います。」
「あ・・・いや、わりぃ。つい、カッとなっちまって・・・。」
「流石、優那さん。鶴の一声で万事解決。」
俺はそう言うと、いただきます。と朝飯を食べ始めた。
別に家で朝飯を食わなかったわけではない。
普通のトーストに目玉焼きにココアという朝飯を食べてきたのだが、ぶっちゃけそれだけじゃあ足りない。
俺は普通の女子の食べる量なんぞはるかに凌駕している。
成長期の男子並みに食べる。
それで太らないんだから問題はないだろうと思う。
というわけで俺は相田家でも朝飯を食べるわけだ。
ちなみに、相田家の今日の朝食はまさかのベリータルトだった。
「にしても、朝からタルトだなんて・・・・。」
優雅が複雑そうな顔をしながらそう言った。
まぁ、普通はないだろうな。
朝からタルト・・・いや、俺は大のスイーツ好きだから問題はないのだが。
「別にいいんじゃね?うまけりゃ、ウチはそれでいいや。」
「むぅ・・・姉さんや亞輝さんは良くても私は良くないんですよ。汁物をください!私は朝はこんなにガッツリ食べたらお昼が入りません!」
「お前は食わなさすぎだろ。」
「姉さんたちがガッツリ過ぎるんですっ!私はふつ・・・いや、普通より少しばかし食べないですけどぅ・・・。」
優雅は少し不服そうな顔をしたが、諦めてもそもそと食べ始めた。
にしても、こんなに食べないのに何で倒れたりしないんだろうか。
こう見えて優雅の体育の成績は結構上だったりする。
シャトルランや40回、握力は25ほど。
だが、足の速さは8秒台前半。
羨ましいぜ・・・。
まぁ、そう言う俺は自分で言うのもなんだが文武両道だぜ?
「あー、先週の模擬テスト何位かなー。」
「うぜぇー。」
「亞輝さんのそういうとこ、嫌いです。自分に溺れる者はその先には進めないんですから。」
「えー。全国模擬で上位の人間に言うセリフじゃないねーだろ?」
そう言いながら三つ目のタルトに手を伸ばしてみる。
ぶっちゃけ、優那さんの料理の上手さはヤバいと思う。
何を作らせても美味しい。いやはや・・・完璧だ。
しかし、優那さん。学生時代は料理が苦手だったらしく、旦那さんである青河さんに料理を振る舞いたくて俺の母さんである澪を実験台にしていたらしい。
愛の力ってすげぇ。
しかも、優那さんは美人だし、性格も穏やかで女性の鏡と言うべきだと思う。頭もそれなりに良いし。
そう言う意味ではこの二人はしっかりその血を受け継いでると思う。
唯我は成績は平均的だけど、顔は良いし、料理もうまい。ただ、どちらかと言うと、青河さん・・・父親側の血を濃く引いているのか運動神経が抜群だ。
優雅は母親似なので顔も似ているし、性格も穏やか。成績は基本は校内で上位の方。料理も出来る。そして、本に興味があるらしく、母親の本の挿絵を書いたり、自分で小説を作ったりしている。
ちなみにだが、青河さんは元高校球児(甲子園出場経験あり)の警官である。