第8話 ホームティーチャー
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「さぁ、シュディン様♪ 本日から家庭教師さんがやって来ますよ♪」
と、エリザがそう言って、ニコヤカな顔で立っていた。今日から俺には家庭教師が付くらしい。キングベル兄さんやハーヴェスト兄さんがこの家に居ない以上、このアルザード家を継がせるために俺、三男のシュディン・アルザードに家庭教師を付けるみたいである。父や母としては今のうちに俺に、家督を継がせる人物として育てるためにと言う事で家庭教師を呼んだみたいだが。
(くっ……! 要らない事を!)
俺としては全くくだらない事だと言わざるを得ない。
「シュディン様~♪ そう落ち込まないでくださいな♪ 何も、沢山の家庭教師を付けてシュディン様をがんじがらめにする気はございません♪」
「……そうなのか?」
家庭教師と言えば、イメージとしてそれぞれ科目別の家庭教師がやって来て時間と言う時間を束縛する物だと思っていた。具体的には前世で見たテレビ談、だけれども。
「はい♪ エリオット様とミナルミ様の考え方は、適材適所なのですよ♪ ご当主であるエリオット様も完全に全ての作業が出来る訳ではございません♪ 重要なのは、誰がどの仕事に向いているかと言う事を見極める力でございます♪ ですから、シュディン様の家庭教師は、観察眼を極めるための家庭教師ですよ♪」
「なるほど……」
要は観察眼とかの話か。それならば、『適度に良い人材を見つけてその人材に頑張って貰えば良い』と言う事か。それは良い事だ。この家に多い獣人には腕力が強いのとか、跳躍力が強いのとか色々と多いし、適度に良い人材を見極められるし、そいつに仕事をやらせれば十分だな。
……ハッ! 観察眼を養うと言う事は、それと同時に的確な道を見極めて、最速の道を見極める手助けとなるかも知れない! おおっ、なんとも素晴らしい事か!?
「それならば、家庭教師を貰っても大丈夫かな?」
「では、すぐにでもお連れしますね♪ 少々、お待ちくださいな♪」
そう言って、エリザは部屋を出て行って、俺はその観察眼を養うための家庭教師とやらを待っていた。
フフフ……。父親と母親としては、俺に家督を継がせたいみたいだけれども、そうは行かない。観察眼を見極めるだけ見極めた後、最高の速度を手に入れてみせるとしよう。
☆
それから数分後。エリザに連れられるようにして、1人の家庭教師が入って来た。
「こんにちは、シュディン・アルザード君。私はニト。観察眼を鍛えるために君を教育しに来た、家庭教師です」
藍色の髪をポニーテール状にしたいかにも機能性を重視した髪型。瞳は血のように赤く、着ている服は男性でも女性でもいけるようなコートのような服装。中肉中背で、大人な雰囲気を漂わせた男性。
ポニーテールは珍しいが、髪の長い男性と言うのはさして珍しくは無い。その時の俺はそのような印象を、家庭教師と名乗ったニトから受けた。
「さて、シュディン君には観察眼を鍛えて貰いましょう。目指すは一目でその人がどこに秀でているかと言う事を分かると言う所まで、鍛え上げていただきます」
「よ、よろしくお願いします……」
「では、まず最終目標を語っておきます。こう言うのは、予め目標を決めておく方が後々頑張れますから」
なるほど……。確かにただやみくもに走っているよりかは、ゴールを目指して走っている時の方が走りにも、そして速度を求めるのにも良いからな。
「さて、最終的な目標ですが、許嫁を選んで貰います」
「えっ……?」
「聞こえませんでしたか? あなたが将来結婚して、子供を作り、なおかつあなたを支えて、この家を支える人材。そう、許嫁を選んでいただきます」
許嫁って……こっちから選ぶのがこの世界の文化、だったのか?