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第6.5話 亜人とメイド

 主人公の事を、エリザ視点で書いてみました。

 この世界、フーレ・ツべニアは人間と亜人の2種類が住んでおり、人間と亜人の区別はシンプルです。人間以外の獣の血も混ざってたら亜人、純粋な人間の血ならば人間と言う事ですが、亜人にも幾つかの組み分けがあります。



 主人や義務に忠実で、警戒心の強い犬族。

 自由気ままで、俊敏さを兼ね備えた猫族。

 高い跳躍力と共に、高い警戒心を持つ兎族。

 その翼で大空を飛ぶ、空を制覇した鳥族。

 その鱗と鰓で水を泳ぐ、海を制覇した魚族。



 一言、亜人と言ってもこの5種類に分類される。人間よりも高い身体能力を持つ亜人ではあるが、人間よりも平均して魔力が少ないと言う事と、人間の高い技術力によって、亜人の大半は人間の所有物のように扱われ、残った亜人達は自らで村を作ったり、見つからないように隠れて暮らしていたとされています。とは言っても、亜人である私達は明日食う食事に困っている者が大半でした。



 人間の多くは亜人を忌み嫌う亜人排他的主義が多く、亜人である私達の事を体の良い奴隷や人間のなりそこないとして嫌っていました。しかしこのトラノロス村の領主であるアルザード家は、そんな中でも亜人の事を受け入れると言う形で亜人である私達を雇ってくださいました。私、犬族のエリザもそんなアルザード家のご当主様に拾って雇っていただいた者の1人です。



 当主であるエリオット・アルザード様と奥方のミナルミ・アルザード様は多くの亜人達に職を提供していただき、明日の食もどうなるかと野垂れ死にそうだった私達にこのような温かい寝床と食事をいただき、一同心から感謝を申し上げたいくらいです。



 しかし、そんな優しいお二方も子供には恵まれませんでした。長男であるキングベル様、次男であるハーヴェスト様の御二方は揃って問題児だったからです。キングベル様は剣以外何も見えていない剣術バカ、ハーヴェスト様は魔術以外覚えようともしない魔術バカと、こう言ってはなんですがあまり良い方とは言えず、御二方は困っていらっしゃいました。そんな中、生まれたのがシュディン坊ちゃまです。



 シュディン坊ちゃまは剣も振るう事も無ければ、魔術にのめりこんだりもしない、エリオット様やミナルミ様の言葉を良く聞いてそれを学ぼうとするとても良い方でございます。少々、外に行きたがりたかったり、外を走り回りたいと言うような傾向も見られますが、子供と言う事を考えればごくごく自然な感情でございましょう。少なくとも先の御二方に比べれば、至極真面だと思われます。私はシュディン坊ちゃまのお世話をする傍ら、いつも癒されています。



 そんなシュディンお坊ちゃまが生まれて、早3年。お坊ちゃまが外に出る機会が訪れました。外は大変危険な場所で、もし万が一に何かあったらどうしようかと思い、使用人一同シュディンお坊ちゃまの後を追いたかったのですが、



「……シュディンの好きにさせて欲しい。あの子は前の2人と違って、子供らしい一面があるから、そこを大事にしたい」



 そう言うミナルミ様の御言葉によって、私達は追いかけるのを止めましたがとても心配で、心配で、仕事にろくに集中出来ませんでした。

 その日の昼、私達は驚きを隠せなかった。



 シュディンお坊ちゃまが、覇王の覇気を纏わせた亜人の少女をお連れになって帰って来たからだ。



『――――――――――!』



 覇王の覇気とはそれぞれの亜人の頂点を統べる種族の血を引く物の証。

 犬族、銀狼(ぎんろう)種。

 猫族、獅子(しし)種。

 兎族、神兎(しんと)種。

 鳥族、荒鷹(あらだか)種。

 魚族、海王(かいおう)種。



 世が世ならば、この世界を治めていた亜人達の頂点の血筋を引く娘だが、そんな少女をここに僅か3歳と言う年子で、しかも何も束縛などを使わずに連れて来たと言う事は私達にとって驚きでしか無かった。そしてシュディン坊ちゃまを見る彼女の眼は、「この者に奉仕したい……」と言う従属心に溢れていた。亜人には自分の主と認めた人物にご奉仕したいと言う精神があり、私も御当主様と奥方様にはそのような気持ちを向けてはいるが、



(……まさか覇王の血筋の少女に、そんな事を思わせるだなんて……。流石、シュディン坊ちゃま!)


 

 もう坊ちゃまとは呼べません。シュディン様とお呼びするべきかのお方から、この少女の事を頼んだと言う彼の意図を読み取った私は、その少女を貰い受ける。



 軽く、所々服がぼろぼろだったり、汚れていたりしていましたが、確かに覇王の覇気と生命を宿している。



「あなたはシュディン様にお仕えしたいと思いますか?」



 いつものはっちゃけた明るい雰囲気ではなく、私は真剣な口調でそう聞き、彼女はそれに対して力強く頷いた。



「分かりましたぁ♪ じゃあ、これからびしばし鍛えて行きますから、覚悟しておいてくださいね!」



「(コクコク)」



 さて、まずは彼女の服を着替えさせませんと。それから食事を取らせないといけませんね。まだ子供ですし、栄養のある物が良いでしょう。その後、シュディン様の横に立っても恥ずかしくないメイドに鍛え上げませんと。



 これがシュディン様の拾ってきた猫族獅子種の少女、オウカちゃんがうちに来た最初の出来事でした。

 どんどんシュディンの評価が上がってる……。ただのスピード狂なのに。

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