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第5話 崖の下の彼女

 今日、覗いてみたらお気に入り登録が2件増えていました。ありがとうございます! 続き、頑張ります!

 大地を踏みしめながら、俺は風を背負って走り出していた。頭の中で【一方通行の砂時計】にて時間が進んで行く中、どんどんと速度を上げて行く。進んで行く度に風景が変わりつつ、どんどん風景が変わる速度が速くなっていく。



【0:00! 3分が終了致しました! 3分が終了致しました!】



「3分が経ったか……」



 俺はそう思って、立ち止まる。俺が立っているのは丘のようで、辺りの様子が良く分かる。立ち止まると共に身体を回転させて、周囲の風景を確認する。

 うっそうと生い茂る森、活気溢れる街、どこまでも続いて行く空。後ろを振り返ると、今日飛び出した生家があんなに遠くに見える。



「3分で魔力による肉体強化無しで、この距離だとすると平均時速は約10km/hくらいだろうか?」



 少し俺が求めているのにはまだまだ遅いが、3歳児にしてこのスペックはそこまで悪くは無いんじゃないだろうか? それに俺にはまだ、魔力による肉体強化と言う方法がある。



「さて、どこを目指すかだが、やっぱりここはあの崖の方だな」



 街はまだどこが行き止まりかと言った構造をしているのかを完璧に把握していないし、それに森は木が覆い茂っていて走るのには向かない。だとすれば、やはり走りにとって重要になって来るのは土地勘が無くても走りやすい、あっちの崖だろう。崖ならば、ある程度見通しも良く、走りやすいだろう。しいて言えば、街と違って道の舗装もされていない所と、森と違ってあまり日を遮る場所が無いと言った所が欠点だが、この際贅沢は言ってられまい。走れるだけで十分だ。今日は走るために、俺は外に出たのだから。



「よし、肉体強化!」



 俺はそう言って、肉体全体に魔力による肉体強化を施す。俺としては足にのみ魔力を収束させておきたいのだが、父曰く「一箇所だけを強化し過ぎると、身体が持たない」だそうだ。

 分かりやすい説明を言えば、スポーツカーのタイヤだけ最速になるようチューニングしても、走って居る内に車体が耐え切れないと言った所だ。要するに、身体にもある程度の肉体強化を施しておけと言う事だ。

 もっと訓練を積めば、一瞬だけ一点を肉体強化を施す事によって、効率的かつ爆発的な力を生み出す事が出来るそうだ。走りに応用出来そうなので、いつかは自分の物にしたい所である。今日はそれを極めるために、【裸のランナー】はお預けにしておこう。あれを試すのはもう少し温かくなってからだ。



「さて、【一方通行の砂時計】の出番だ!」



 俺はクラウチングスタートを取り、そのまま【一方通行の砂時計】の準備をして、発動すると共に走り出す。



「や、やばい! こ、この感覚はやばい! 癖になりそうだ!」



 先程とは比べ物にならないくらい身体が軽く、そして身体にかかる速度の感覚が気持ち良い! な、何だ、これ! 魔法って最高じゃないか! こんなにも素晴らしい速度を生み出せるだなんて!



「20、25、30……! す、スゲェ……! どんどんと速度が上がっていくぅぅぅぅぅ! や、やばい! 癖になりそう! 本当に癖になりそうだぁぁぁぁぁぁ!」



 本当にやばいくらい、速度が上がって行く! や、やばい! 風が良い感じに感じられるぅぅぅぅぅ! 風景がどんどんと変わりつつ、速度の感じが気持ち良すぎるぅぅぅぅぅぅぅ!



「い、異世界、最高ぅぅぅぅぅぅぅぅぅ! 魔法、凄ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」



 や、やべぇ! く、癖になりそうだ……。



【0:00! 3分が終了致しました! 3分が終了致しました!】



「お、おぉ。もう3分経ったか……」



 俺は止まってそのまま辺りの様子を窺う。速度が速いと、時間が経つのがやはり速く感じられる。清々しい気分だ。ここは崖の丁度真下くらいだろうか。日もまだ高いし、まだまだ外を走り回れそうである。



「ヤッホー! 楽しい! 最高に楽しい!」



 やばいな。この世界で生まれて、初めて楽しいと思えたかも知れない。



「さて、まずは肉体強化を解除しよう」



 父が言うには、肉体強化をずっと維持するのはあまりお勧め出来ないそうだ。魔力にて身体に纏わせすぎると、身体が魔力に頼りすぎて肉体自体が弱くなってしまうんだそうだ。だから、肉体強化には頼り過ぎない方が良いんだそうだ。

 俺は伸びをして、そのまま屈伸をしてストレッチをする。



 今日はこのまま、身体を肉体強化して走り、強化を解いてストレッチをする。その後、再び身体を肉体強化して走るの繰り返しをする。これをする事によって、身体自体の力と肉体強化の精度を上げて行こう。こうする事によって、どんどんと速度を上げるようになるだろう。



「よし、もっと速く走って行こう!」



 俺がそう思いつつ、ストレッチをして走り出そうとしたけれども、何故か巨大なプレッシャーがのしかかって来る。



「な、何この重圧……。本能的に語りかけてくるような、王者の風格と言う感じか?」



 凄い重圧だ。動けない訳でも無いけれども、どこかこの重圧のせいで動き辛くなっている。



「な、なんて言う面倒臭い事を……! これじゃあ、走るのに集中出来ないじゃないか! どこだ、この俺の走りを妨害する重圧を出している障害物は!」



 俺はそう思いつつ、重圧が強くなる方向に行くと、そこには確かに何かが居た。

 傷だらけの肌、砂埃に塗れたような薄汚れた服。身体つきは小柄で幼く、そしてその頭には亜人である事を示す猫のような動物の耳が生えていた。



「亜人の少女? どうしてこんな所に……」



 その状態から考えるに、崖の上から落ちて、ここいら一帯に居る魔物に襲われないようにするために重圧を出していたと推測される。だが、俺には関係ない。



「この亜人の少女、俺の楽しい、楽しい走りを邪魔しやがってどうしてくれようか?」



「た……た、す、け、て」



 あぁ、助けてやるさ。お前がここに居ると、走りづらくて仕方がない。ここはこの少女を家の倉庫にでも放り込むか、エリザに渡しておくとしよう。俺はそう思い、身体に肉体強化を施してそのまま家へ向かって走り出す。これもまた良い訓練になるのだが、少女の身体の重さが軽いので大したトレーニングにはならなかった。もっと、増やせよな、体重を。

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