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第3話 裸のランナー

 1歳となった誕生日。俺はようやく、他人の手によって運ばれると言う行為から解放された。別に……まだまだ他人の手によって運ばれると言う事が無くなったと言う事では無いんだけれども、それでも全部では無くなったと言う事から言えばこれは凄い進歩だと俺は思う。俺にもようやく自分だけの時間と言う物が持てたのだ。



 それから早くも2年。ようやく身体を動かして、自分の身体も存分に扱えるようになった。どうやらスピードにかまけてたせいで、時間が速く進んでいってたようだ。

 最も、外にはあまり出させてはくれないから、俺としては不安が募るばかりなんだが。だから、俺は自身のスキルと言う物を見直していた。



 あの良く分からない神様がくれたスキルは、2つ。そのうちの1つは俺にぴったりなスキルだった! あまりの嬉しさに、ベッドの中で飛び跳ねたくらいである! その後、エリザには凄い心配されたんだけれども。

 と言う訳で、まずは片方のスキルから使ってみる事にする。



「……スキル、『一方通行の砂時計ノーライフ・スリータイム』」



 すると、俺の頭の中に文字が浮かび上がる。



『3;00』



 そしてその数字がどんどん減って行く。この『一方通行の砂時計』と言うスキルは、3分間を計測するスキル。一度発動すると途中で止める事も出来ないし、それに3分間が終わればチャイムが鳴るだけ。ただ、3分と言う時を性格に刻む、それだけしか無いスキル、それがこの『一方通行の砂時計』と言うスキルらしい。

 まぁ、3分の間の中でどれだけ出来るかと言う成長を見る上での基準や、平均的な速度の計算と言う意味では役立つスキルだろう。本音を言えば、時間を計測したり、3分以外の時間も計測したいんだけれども。選べなかったんだから、仕方ないと言えば仕方ないんだけれども。



「まぁ、こっちは良い。お目当ては――――――――こっちだ」



 俺はそう言って、自身の服を脱ぎ捨てた(・・・・・)



「うっ、うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」



 感じる! 感じるぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! 俺の身体に、速度が、速度がみなぎってぇぇぇぇぇぇぇ、たぎってぇぇぇぇぇぇぇぇ、来るぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!



 スキル、『裸のランナーキャストオフ・アクセル』。内容によると、服を脱げば脱ぐほど、速度が速くなると言うスキルらしい。



 スピードが! スピードが、俺の中にぃぃぃぃぃぃ!



「あはははは! あはははははははは! 感じるぅぅぅぅぅ、感じるぞぉぉぉぉぉぉぉ、俺の、スピードをぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」



「シュディン坊ちゃま!? は、裸でお部屋の中を走られて、どうされたんですか!?」



 エリザが酷く慌てた様子で、俺を掴むがそんなのは関係無い! 俺が、自室で裸になって走り回っている事に、どこに問題があると言うのだ? 16の夏休みに、原付免許を使って琵○湖の周りを何周もしたり、同じ夏休みに○路湖を何周も走り回したりするよりかは遥かに普通だと思うが。あれは普通に良かった。何せ、湖から吹く風が何とも爽快なスピード感を演出して、それはもう素晴らしいのなんのって……。

 それに比べたら、裸で走り回っている方が遥かに普通に思えるんだけれども?



「と、とにかくお着替えを……お着替えをお願い致します! 万が一にも、私以外の者に見つかったらどうなるか……」



「……あぁ、分かったよ」



 僕はそう言って、仕方なく服を着たのだった。それを見て、エリザはウフフ……と困った顔から、笑みを浮かべた顔へと変える。



「ありがとうございます、シュディン坊ちゃま♪ 御一人で何を考えているのかは、使用人の私には想像つきませんが、くれぐれも奥様をご心配なさいませんように♪

 では、もう少ししたら、お食事が整いますので、お迎えにあがりますね♪ ウフフ、坊ちゃまは言葉を巧みにお使いで、凄いですね♪」



「あ、あぁ……」



 そう。この頃、僕はまだ3歳。



 果たして、エリザの眼には裸で自室の中を思う存分走り回り、なおかつ3歳児にして凄く流ちょうに言葉を発する、自らが仕える家の三男坊をどう言う感じに扱っていたのか。

 良く分からないが、あまり気にしない方が良いのだろう。



 そして、俺はこの時思った。エリザには勝てない、と言う事を。



 ともあれ、勝つ必要はない。俺が目指すは最速! スピード! 速さだけ! 強さなんかに興味は無ーい!



 まぁ、エリオット父様が教えてくれる剣術はさらなる速さを出すための体力作りと言う意味では良いし、ミナルミ母様の魔術訓練もこの前、覚えた魔力による肉体活性術と言うのもとても速くなる! あぁ、父様と母様に恵まれて、俺は幸せだ!



 そして、俺はその3日後、初めて家の外に出る事を許されるのであった。

 剣術も、魔術も、主人公にとっては速くなるための行為でしかありません。

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