第21話 ヒバリの仕事ぶり
――――――――ヒバリは天才である。
この前俺と共にアルザード家にやて来た彼女は今、俺の目の前で机に頬ずりして、満面の笑みのままこっちを見ていた。俺はそんな彼女の机に大量の書類を置く。
「これを頼んで良いか?」
「えぇ。スピーディーに終わらせましょう」
そう言って書類を見て行った彼女は、さらさらと物凄い勢いで書いて行く。見ているこっちが惚れ惚れしそうなくらいの速さだ。うちには多くの使用人が居るのだが、その中でも彼女が一番こう言った事務作業は速い。うちに来たのは一番遅いのにも関わらずだ。
「……終わりましたよ?」
「終わったか。いつもながら、速いな。俺は嬉しいぞ」
俺はそう言いながら、書類を見る。書類には『混合農業』とか、『パート制』とかそう言った本来この世界にはあるはずがない知識を書いて行くヒバリ。アルザード家の本で得た知識だと言っていたが、もしかしてその者は俺と同じ転生者と言う事だろうか? 俺よりも前の時代に転生した者が書いた書物。
(青い奴だな。本を書くだけで終えるだなんて)
まぁ、そんな速さに興味がない奴なんてどうでも良い事だ。忘れて置こう。それよりも問題なのは、ヒバリだ。こいつ、書類とか頼まれた事はすぐにやってくれる事に関しては何も不満が無いのだが、終わったらずっとこっちを見て何かをぶつぶつと呟いている。
「(今の所、夜の事を求められないのは不満しかないけれどもそれは彼がまだ12歳だからよ。きっと後3年経って、成人となればすぐさま私の事を求めるに違いないわ。そうよ、きっとそうに違いないわ。フフフ……。待ってなさい。あなたの一番はこのヒバリがいただくわ……。フフフ……)」
小さくて良く聞こえないのだが、「速い方が良い」とか良く聞こえるし、良い話なのだろう。今度、聞いておこうか。
「(結婚は早い方が良いわよね。子供を作るのだって早い方が良いに決まってるわ。フフフ……)」
「……!?」
今、『はやい』と言う言葉が2回も聞こえた。やっぱり良い話なのだろう。今度、聞いておこうかなー。
「―――――――主様」
と、そんな事を考えていると扉を開けてオウカが入って来る。その顔はとても不機嫌そうである。何故か、ヒバリが来てからオウカは大変不機嫌そうだ。とは言っても、仕事には影響も少ないし、ただ単にこうして所々オウカの所にやって来てじっと見つめて来るだけなのだけれども。
「この猫女……」
「パッと出の兎が……」
なんだか、2人の間に火花があったような気がするのだが、俺には多分関係無い、女同士のいざこざみたいな感じなのだろう。俺はそんな事に巻き込まれている時間は一切取るつもりも、巻き込まれる筋合いもないので、俺は2人の争いを見つつ、出来る事ならば2人が意識しあいつつ作業が速く終わらないかを願うばかりであった。




