第14話 ライバルを求めて
スキル、『裸のランナー』。この能力は自分の衣服を脱ぐことによって、速度を上げるスキルである。そしてその衣服とは、自分の価値観によって判断されるみたいである。8歳の時、オウカが俺に良く分からない編んだ糸製品をくれた事があった。その時の俺は知らなかったのだが、それはオウカが編んだマフラーだったらしいのだ。とは言っても、俺はその時はそれをマフラーではなく、ただの糸を編んだだけのガラクタと思っていたが、それはどうやら間違いであったのだが。ともかくとして、最低でも俺がそれを服だと認識出来ないうちは、能力として作用しないみたいである。俺がそれをマフラーだと認識した時、初めて『裸のランナー』として作用した。またこのスキルは、他者の衣服を脱がしても作用するのだが、それには法則性がある。
どうやらこのスキル、他者の衣服の場合、それを着ている者が同性の場合は遅くなり、異性の場合は速くなるみたいだ。どうせならば同性でも早くなって欲しいのだが、どうしてだかそう言った事は出来ないみたいである。
と言う訳で、俺は最速へと近付くためにどうにかしてこのスキルを有効利用出来るかを考えながら、思いきり走っていた。
(前世で言う所の女子学校やらキャバクラがあれば丁度良いんだが。そうすれば、都合が良い時に『裸のランナー』を使って速度をさらに上げる事が出来る。
……とすれば、今一番必要なのはそう言った沢山服を着込んでくれて、なおかつどんなに早くなろうともある程度俺の速度についてこれる奴が居るのが良い)
この『裸のランナー』が自分の衣服を脱ぐ際に作用する能力であったのならば、そんな存在を求めなくても良いのだが、異性の衣服を脱がす際に作用するのであればそのような存在を作らなければならない。
「人を速くするように育てるのは、気味が悪いのだがな」
俺が求めているのは、最速。それに並び立つ存在なんて、出来うる限りは作りたくない。だが、最速を目指す以上はその存在が必要なのは確かである。
「ならば、ライバル。ライバルと考えてみたらどうだろうか?」
ライバルが居るからこそ記録が上がると言うケースは確かな根拠こそなくても、確かに存在する。ならば、最速を目指すために、そのライバルを見つけ、そいつが異性で、最速に至るためにそいつを利用すると考えたら……。
「ライバルが居れば、記録が伸びる。それは聞いた事がある。そいつがさらなる高みへと連れて行くのならば、素晴らしいじゃないか。それが異性ならば、そいつの衣服を脱がして、『裸のランナー』の効果も得られる。
……うん。良いな、ライバル」
俺は速さを手に入れるために、異性のライバルを探す事にした。目標は出来るだけ速い奴が良い。相手が遅かったら、ライバルにならないからな。戦闘力や容姿はどうだって良い。大切なのは、そいつがどれくらい速いかと言う事だけだ。
「さぁ、探し出そう。俺の、まだ見ぬライバルよ」
俺はそう言いながら、魔力をさらに体内で循環させて、さらに最速への道を走り出した。