第13話 12歳の俺
あれから6年の月日が流れた。ニト先生の5年間に及ぶ授業によって俺は観察眼を会得した。それによってどの道が一番通りやすいのか、どの道だと最速の速度が出せるか。そう言った最速への道がさらに近付いたから俺としては嬉しい限りである。もっともニト先生としては、
『君は家督問題とは別の事にご執心のようだね。とは言っても、教えてる私としては家督にもっと興味を持って欲しかったんだけどね。
……まぁ、これから君の人生に君なりの幸せが訪れる事を願っているよ』
と言っていた。どうやらニト先生は両親に僕に家督を譲らせるために頑張っていたようだったが、俺としてはそんな事を思っていない。出来る限り、最速への道を頑張る!
けれども、俺は父と母の隠居に対して、次の当主なぞに選ばれてしまった。けれども、俺は最速にしか興味が無いから、観察眼を利用して適当に仕事を割り振っている。
そのために、妹のミハルに人造的な人型魔物を作って貰った。ミハルが読みまくった書物の1つに、主の言う事をきちんと守ってやってくれる自立人形、所謂ゴーレムの存在があった。ミハルはそれを数体作って、それの報酬の代わりに多くの書物を買ってやった。
まぁ、ゴーレムのおかげで俺の最速にまた1つ近付いた。
他にも多くの亜人を雇いいれた。勿論、俺の最速の道のためである。亜人は本当に良い奴らだ。何せ、亜人達はそれぞれ得意分野があるから。
犬族は義務に忠実なので体仕事とかの体力を使う仕事につかせて、猫族は俊敏性が高いので子供達の運動教育係につかせた。兎族は高い警戒心を持っているため重要な物の警備をつかせた。鳥族や魚族に対しては、運輸の件で仕事をさせておいた。他にも書類事と言った事は、印鑑とかの当主の許可が必要な事以外はメイドのエリザなどに任せて置いた。
(……と言うか、あいつらはうざい)
犬族は一々報告するたびに頭を撫でたりするのを強請ったり、猫族はいつの間にか布団の中に入ったりしていた。兎族はこそこそ伺いつつ、こっちをずーっと見ていたりして、うざったらしい。鳥族はいちいち肩とかに乗って見ていたり、魚族は海などの水辺に連れて行こうたりして面倒である。
……特に一番面倒なのは、オウカ。何故か出会う先、出会う先に現れて買い物などを一緒に行こうとしてくる。力が強すぎて反抗出来ずに、ずるずると……。
「……けど今日は、走りまくってやる!」
今日は亜人や仕事など、そう言った事を放棄して、ぶっちぎって、そのまま走って行こう。
「……よし! 走るぞ、俺!」
俺はそう言いつつ、多少身体をほぐしつつ、そのままクラウチングスタートの体を取る。
「行くぞ、全ては最速のために!」
俺はそう言って、走り出した。