表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/26

第11話 オウカとミハル(2)

 こんにちは! 作者のアッキです!

 続きです! 今回はミハル視点からどうぞ!

 私、ミハル・アルザードはアルザード家に生まれた長女と言う(・・・)事に(・・)なっている(・・・・・)。しかし、それが間違っている事を私は知っていた。ここの家の家系図を読み解くと、私には三人の兄と1人の(・・・)姉が(・・)居た事になっています。父親で領主のエリオット、母親のミナルミはどうも子供達に恵まれなかったみたいである。この場合の『恵まれなかった』とは子宝と言う意味では無くて、性格的な意味での恵まれなかったと言う事である。

 私よりも16も年上である第一子で長男のキングベルは剣術を極めていて、その2年後に生まれた第二子のハーヴェストは魔術を極めている。剣だけしか頭にしかないキングベルと、魔術しか興味が無いハーヴェスト。そう言う意味で本当にそれだけしか求めていないような、そんなような奴だった。それから10年以上の時を得て、三男のシュディン、それから3年後に私が生まれたみたいである。



 けれども、ハーヴェストとシュディンの間には、第三子の姉が居たと言う記述があった。私はありとあらゆる書物を読み漁るような、そんな書物バカの上で見つける事が出来たような物で、意図的に隠されていたような節があった。

 まるで伝えたくないような、思い出しくないような、そんな隠し方であったが、私にはどうだって良かった。そんな歴史的な背景には興味が無い。私の興味はただ1つ、本だけだ。



 本。本とは素晴らしい物である。

 どこにも出かけなくても読むだけでそこに行った気分になったり、それを行った気分になる事が出来る。会った事もない人物の言葉を、知る事が出来る。世界にあまねく法則を、理解する事が出来る。本とは素晴らしい。素晴らしい物だ。



 故に私はそんな本を読んでいる時間を至福の時としており、それを邪魔されるのが一番腹立つのである。今、私のそんな至福の時を邪魔しているメイド。名前をオウカと言うらしく、シュディンが拾って来たメイドだそうだ。なんでもあの『獅子種』の獣人の娘と言う事で驚きである。



 獣人には『銀狼種』、『獅子種』、『神兎種』、『荒鷹種』、そして『海王種』と実に5種類に渡る、一説には神と称されるべき獣人が居るには居るらしいが、そのうちの1種類でも会う事が出来ればそれは幸運の象徴とされ、話す事が出来れば長寿の証明、友達にでもなった日にはその友達にもなった者さえも神のように扱われる文化があるらしい。そんな友達になっただけで神に扱われるのだとしたら、そんな『獅子種』をメイドとして持って来た兄の立場は一体どのような立場になるのだろうと興味がある。とは言っても、あくまでもほんの僅か、本だけにほんの僅かしか興味が無いけれども。



「うぅ……シュディン様……」



 話を戻そう。あまりにも退屈すぎて本を読みつつ、空想をしてしまっていた。今、がたがた震えながら私を片手で持ち上げつつ、シュディンを見ているこの女こそ、今話題にあげていたオウカである。そんなオウカの瞳は、明らかな困惑の色に染まっていた。



(まぁ、無理はないけれども……)



 今、私達はシュディンの様子を窓越しに見ている。何故、こんな状況になっているかは私にも分からない。本をほんの数百ページほど読んでいる間に、このような場所に移動していたのだ。恐らくはあまりにも反応が無かった私に興味を持たせるため、兄の所に持って行けば解決するかも知れないと言う単純的発想の元、行動した結果だと推察されるが。



(しかし、状況が悪かったな。今、その兄とやらはどうも観察眼の修行中のようだ)



 私はこっそりと窓から覗きこむ。そこには52枚のカードを置いて、目でじっくりと見ながらカードを見る我が兄、シュディンの姿があった。どうして観察眼の修行だと分かるのだと言うと、似たような観察眼の修行方法をこの前本で読んだからだ。恐らくは観察眼を磨いて、兄を当主にでもしたいのだろうが……。まぁ、多分本人は迷惑がっているだろうが、そんな事はどうでも良い。彼自身の問題だし、妹だからと言って私に迷惑がかかる訳でも無いし。



「うぅ……。その紙はそんなに怖い物なのですか?」



 ……どうもこのオウカ的には、あのカードが余程怖い物に見えているらしい。まぁ、彼女が尊敬している兄が、目の形相を変えて見ている物が普通の物だとは思わないのだと思う。



 そんな事をしているうちに、兄はカードを仕舞い、そして運動を始めた。



「ホッ……。良かったです。危なくは無かったんですね。……あっ、み、ミハル様! あの方があなたの兄であるシュディン様でございますです~」



 心からホッとしたような表情をした後、自分が何をすべきなのか思い出した彼女が私にそう紹介して来る。まぁ、言われなくても分かっていますよ。



「えぇ。あの方が私の兄のシュディンですよね」



「……。え、えっと、兄さんとか、兄様とか付けた方が……」



 そう言うオウカに、私はあくまでもそれっぽい言葉を並び立てる。



「個人的な趣味、及び主義は人によって様々。私の一存で付けてしまった場合、シュディンが悲しむ可能性を考慮した結果、相手の趣味、思考、主義を知った上で、一番良い選択肢を選ぶ事が重要だと思われる」



「な、なるほど……」



 一応、納得したと思わせたいようだが、3歳下の私ですら分かる。絶対、納得していない。

 まぁ、私からしたら、面倒なのでとりあえず呼び捨てにしているだけの話であって……。



「うむ、これが良いな」



 そう思って居る内に、ヒョイっと、本当に軽くヒョイっと私の持っていた本がシュディンによって取られる。



 取られる……?



「わたしのほんが……? とられた……?」



 まだ2145ページしか読んでいない全45678ページに及ぶ大傑作、『勇者なオレと魔王なアイツ《完全版》』が取られてしまった?



「ゆるさない……」



 兄が何だ。家族がどうした。

 私にとって、読みかけの本を奪う事は極刑に値する。



「……ん? こいつは誰だ?」



 私は何も分かっていないこのバカ兄と、たった今、戦う事を決意するのであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ