第10話 オウカとミハル
続きです。これからも多くの方が読んでくださると嬉しいです。
では、10話! どうぞ!
私の名前はオウカ、6歳。アルザード家のメイド、なのです。崖の下で倒れていた所、この家の御当主様の息子、シュディン様にこのアルザード家へと連れ帰って貰いまして、私はメイドとして雇っていただけました。先輩メイドのエリザさんから聞くと、私は獣人の兎種の中でもとっても異質な、『しししゅ』なんて事らしいんですけれども、私は別に気にしてません。そもそも、それがどう凄いかって言う事を、エリザさんから聞いても良く分からないし……。ですから、私はこの家でメイドとして働きながら暮らしています。
その私を助けてくださったシュディン様と言うのですけれども、私からしたら恩人です。ですから、私はとっても大好きなのです。シュディン様はとっても『そうめい』で、『りりしくて』、『カッコいい』お方なのです。本当に素晴らしい方なのです。
……けれども時々、可笑しな事を行っています。部屋の中を走り回ってしまい、危うく床に頭を激突するような事をした時もあります。とは言っても、多分私なんかが想像出来ないような、とっても凄い事を考えているのかと思っているんですけれども……。頭が足りない私は、心配で、心配でしょうがないです。
そして今日、私はミハル様とお会いする事になりました。ミハル様はシュディン様より3歳下の妹様であり、度を越した本好きです。ミハル様はまだ3歳と言うのに、このアルザード家に保管されている大量の書物を全て理解して読んでいる、凄いお方なのです。流石、シュディン様の妹様! 私なんか文字が読めるかどうか怪しいのだってあるのに……。
どうしてそんなミハル様と会う事になったのか。それは今日の朝、エリザ様が
「オウカちゃん♪ あなたもシュディン様のお側は経験してますけれども、他の方のお側も経験した方が良いですよ♪ だから今日は、シュディン様の妹のミハル様のお世話をお願いいたします♪」
「……は、い。分かりました、です」
そしてお会いしたのが、そのミハル様。黒い髪を肩まで伸ばしたおかっぱ頭の3歳の女の子、とっても大きな辞書サイズの本を熱心に読んでいるミハル様。どう見ても、こちらを見ていない。ただ一心に、本だけを読んでいるこのお方と、どうコミュニケーションを取ったら良いのでしょう?
「……え、エリザ様、どうすれば……」
居ない!
エリザ様に聞こうと思って振り返ってみると、もう既にエリザ様の姿は無かった。
「うぅ……難しそうだよー……」
私、結構、臆病だって事、エリザ様は知っておられるのに……。
そう思っていると、ミハル様の顔がくいっと、いきなりこっちに向く。
「あなたが『獅子種』のオウカですか。本で見る限り、まだまだ骨格及び筋肉的に一部発達未満の所が見られますが、それ以上に腕の筋線維が通常より1.4978倍硬く成長している所が見られますし、あなたの今後の伸びしろから考えるとすれば『獅子種』の平均よりも良い成長を遂げる事は言うまでも無く……」
「え、えっと……何語ですか?」
なんだかこの国で使われているツべニア語ではないような……。
「むっ。言語間の誤差があると指摘しますか? ツべニア語でしか話していないはずですが、やはりここは分かりやすい言葉にて話すべきですかね? ここはやはり、『獣人との分かりやすいコミュニケーション』と言う本に記載されていた撫で方によるボディアクションを行って……」
こ、怖いです! こんな3歳児、スッゴク怖いです……。
「まぁ、本を読む方が先ですね」
そう言って、また本に目を落とすミハル様。うぅ……なんだか会話しづらいです。
ミハルは、読書バカです。本を読む事が大好きすぎて、こんな3歳児ではありえないような喋り方になっています。