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第9話 ニト先生の観察眼講座

「当主様が大切にすべきなのは、次世代の優秀な遺伝子を後世に残す事。10年に1人の逸材も死んでしまえば、それで終わりです。それよりかは、新しく100年に1人の逸材を生みだす方がよっぽど有意義です。それに後世へと続く広い視野を見る事も大切だと思われます。よって、シュディン君には許嫁を選んでいただきます」



 と、ニトはそう語った。どうも後世への血を残す行為の大切さと、未来を見る行為の大切さについて語りたかったんだなと思われるが、僕には正直関係無い。

 10年に1人の、俺以上の速度を有する子供が生まれたとしても、俺としては全く持って嬉しくは無い。確かに未来に向けての広い視野については、常に速く、速くと速度を追及している俺にとっては、良い話のように思える。けれども、だとしても、だ。後世に遺伝子を残すと言う事はどうにも俺は附に落ちない。俺が速度を追求するのは、あくまでも俺自身の考えであり、他の誰かに託すつもりはない。最も、キングベル兄さんとハーヴェスト兄さんは、俺と違って剣と魔法を後世に託してでも強くしたいと考えている、変人だけれども。



「まぁ、許嫁に関しましてはシュディン君の両親からは頼まれていない、私個人のちょっとした願望のような物ですよ。

 ……さて、では授業を致しましょう」



「……ちょっと待て。俺は速度さえあれば、観察眼は要らない」



 俺は腹筋運動をしながらそう答える。最速を出すためには、腰も鍛えておかなければならない。前世でそれを痛感した俺は、こうやって腰を鍛えているのですけれども。観察眼を鍛えている時間などない。

 ニトはそれを聞くと、頭を抱える。



「はぁ……。まぁ、6歳児にはまだ少し速かった(・・・・)ですかね」



「あぁ……? 速かっただと?」



 その言葉に俺は、怒りを覚える。速かった? つまり、今の俺には遅かったと言う意味か?



(つまり、俺は遅い。そう言いたいのか?)



 そんな事はあり得ない。俺はどんなことだって最速を目指している。その俺がこんな所で、遅いと言われるなんて最悪である。



「……良いぜ、ニト先生。遅いと言われるのは、癪でしかない。だから、先生の授業を受けよう。勿論、最速で」



「君の扱い方が、先生には見えて来ましたよ。まぁ、じゃあ、生徒の言葉に応じて、やらせていただきましょうかね。

 まず最初に、観察眼を鍛えるために、トランプをやらせていただきましょう」



 ……トランプ? どうしてこの異世界なんかに、前世のトランプがあるんだ? しかし、それは確かにトランプである。



 ニトはトランプを取りだし、俺に差し出して来る。



「これは君のお兄さんの1人である、ハーヴェスト君が作成した53枚に及ぶこのトランプと言う物だよ。このトランプには、実は特殊な仕掛けがしてあって、裏に小さく印が彫ってある」



 「見てごらん」と言われてトランプを渡される俺。確かに本当に、本当に小さく印があるけれども、良く注視しないと見えないくらい小さな印が付けられている。



「返していただけれませんか?」



 とニトはそう言うので、俺はそのトランプをニトへと返す。



「この53枚のトランプを相手と対面しつつ、数秒で見極めてください。ちなみに今の最高速度は、君のお兄さんのキングベルさんの2か月だよ?」



 2か月か……。それが最速だと言うのならば、俺は1か月! 1か月でやりきって見せる! 俺はそう決意の意思を示すのであった。

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