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第1話 プロローグ

 ―――――――スピード! スピード! スピード!



 俺、館林瞬(たてばやししゅん)は速度を愛している! スピード・ラブ! 数字の後ろに速度の単位が付いていればどんなに難解の計算式だろうと、暗算出来る。スピードを高めるためならば、どんなに苦しい体力トレーニングも進んでやる。自身が速い速度、スピードを出すためならば、どんな行為だろうともやろうとする。人からはスピード狂とも呼び声の高い俺であるけれども、俺がどうしてそこまで速度(スピード)に対して好きかと言わせて貰えるならば、わたくしの父親の影響が大きい。



 俺の父親は所謂、レーサーだった。スポーツカーを猛スピードで飛ばして、どれだけの速さを出せるかと言う事に拘っている、ある意味筋金入りのレーサーだった。まだ小学生にも入らない頃合いからスポーツカーなどに乗せていた。まぁ、俺の父親は口下手で愛情表現を出すのが苦手なタイプの人間だったので、彼なりの愛情表現と言う事なのだろう。そしてその時に感じたスピードと言う物を俺は忘れる事が出来ない。



 ―――――――まるで風になったとさえ、感じるあの感覚。子供ながらにあの感覚は、一種の幸福感があった。そして速さを感じると言う事に、俺は喜びを感じていた。

 その後、風を感じる事が好きになったかと思って風を感じてみたんだが、どうにもこうにも俺はそれに対して気持ち良さや心地良さと言う物を感じなかった。そして今度は走って風を感じた所、心地良く感じたので、俺はやっぱり速度が大好きなんだなと再認識した。けれども、俺はすぐに息切れを起こしてしまってしまった。それからだ。速度を出すために色々な事を試すようになったのは。



 日本では免許が取れないので、海外の父親の持っている別荘の私有地の道路にて車や馬の扱い方を学んで速度を感じ、さらに速度を感じるためにと体力を上げてもっと速度を出せるように頑張った。全てはスピードのため。俺にとって、スピード以外は何も興味が無かったから。学校の勉強は速度が関係して来る数学や物理と言った物は特に重点的に学んでいたけれども、他はさっぱりなので両親に怒られてあろう事か自転車を禁止する『自転車禁止法』まで出されてしまった。

 日常では速度を感じるのに一番良い自転車を取られてしまったら、足でしか速度を感じられなくなってしまう。別に足でも普通の自転車よりかは速度が出るが、自転車の方がスピードを感じられる。自転車を禁止されるのは嫌だったので、翌月からは他のもそれなりに勉強するようにしたんだが。



 それよりも最近の俺がはまっているのは、MMO。バーチャルリアリティー型の体感型ゲームだ。これはまるで本当にゲームの中で自分が動かせるから好きだ。ちなみに俺は速度に極振り(所謂、スピードだけにポイントをふった状態)にして楽しんでいたが。まぁ、自分の身体で感じられない分、いささか実感が心許ないけれども、ある程度の趣味としてはとても心地良かった。



 そんなスピード狂の俺、館林瞬は17の夏に―――――――――――死んだ。

 死んだ理由としてはそんな大した理由ではない。子供をかばって死んだとか、そのように人に自慢できるほど大層な理由で死んだ訳ではない。苦悩の末に自殺したと言うような、そのような精神的につらい理由でもない。



 そして今、死んだはずの俺は真っ白い空間に居た。真っ白な、目の前に居る人物だけがこの世界にぽつりと居るような空間。目の前の人物は口を開いて、俺に語りかける。



「そうだよね。そないに大層な理由でもないよんね。ただのスピードの出し過ぎによるハンドルミス、それが君の死亡した理由だった、よね?」



 と、俺の死んだ理由を、くだらない理由を当てやがったそいつはくすくすと笑いをこらえるようにしていた。

 そう、スピードの出し過ぎ。スピードを求めて、速度を求めた結果、確かに一瞬、最高潮の喜びと感動が俺の胸に響いたと思ったら、次の瞬間にはハンドル操作を誤って事故死。そんなくだらない理由で俺は死んだのである。



「そうそう。かなりくだらないよね。まぁ、スピード狂にお似合いの結末、と言えるでしょうかね」



 なんなんだよ、こいつは。目の前に居る人物はけらけらと笑いながら、俺のくだらない結末を笑い立てる。それに俺が腹が立つ。



「……まぁ、君は運が良い。実は私は神で、しかもさっき、君の前に転生をさせまくった所だ。君のように頭の螺子がイカれた連中を、この世界とは異なる世界、異世界へとね。君もそれに混ぜさせてあげよう」



 えっ……? い、異世界? それって、最近巷で有名な、あの異世界転生……!?



「おぉ。言葉は知っていたか。まぁ、神様のミスとかじゃないし、これはちょっとした私の悪戯だし、気にする事はない。

 ……そうそう。こういう場合、能力を与えるとかなんとかした方が良いんだよね」



 そう言うと、彼は呪文のような言葉を並び立てる。



【正確に相手の足の小指を攻撃出来るスキル。

 視力10以上を手に入れる事が出来るスキル(ただし、酔う事もあり)。

 言葉のみだが、相手を気絶させる事が出来るスキル。

 神様といつでもおしゃべりできるスキル(でも行動が全部神様に見られる)。

 キスした相手の能力を使えるスキル(次に口に何かが触れるまで)。

 モンスターをマシーンに出来るスキル。

 コンビニ袋の袋詰がとても上手い(早い)スキル。

 伝説の武器をジャグリングできるスキル。

 モンスターをナンパできるスキル。

 手の指、第一関節だけを曲げる事ができるスキル。

 脳内で『ググれる』スキル。

 合掌して仏顔をすると後光を背負うスキル。

 じゃんけんが必ずあいこになるスキル。

 体をあり得ない角度で曲げたりできるスキル(ただし痛みは伴う)。

 攻撃力が10倍になるスキル(ただし、全裸状態の時だけ)。

 見た女性の胸のカップ数を瞬時に判別出来るスキル】



 これは、神様とやらが並び立てていたスキルの中でもごく一部だ。どうやらこの神様、持っているスキルとやらがありえないくらい、ネタばかり過ぎる。



「……とまぁ、今言った中にも面白いスキルはいっぱいあるけれども、君にあげるスキルは2つ。そして―――――――」



 ―――――――それは転生してからのお楽しみだよ。



「……はい?」



 と、間抜けそうな声を出した途端、俺の視界はブラックアウトした。

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