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二階建ての一棟4部屋しかない小さなアパート
築20年経つ
外壁は最近塗り替えられ、一見は新しくも見える
二階へ続く階段を上がり、手前が私の部屋
隣の部屋はしばらく空き部屋だった
先月の下旬頃、誰かが引っ越してきたようだ
引っ越してきた気配はあるものの、あまり部屋にはいないようだ
夜中にたまに物音が聞こえる程度
女の独り暮らし
隣の部屋がしばらく空き部屋だったことに気味が悪いと思ったこともある
だが、顔も知らない住人も気味が悪い
祐樹に話をしてみたら
゛幽霊なんじゃねぇの゛
そう笑い飛ばされた
帰宅すると祐樹からメールが入っている
〈今日、仕事終わったら部屋にいっていい?〉
私も祐樹に会いたかった
夕飯を用意して祐樹が来るのを待つ
独り暮らしも5年経つと、料理の腕も自然と上がる
インターホンが鳴った
ドアを開けると、スーツ姿の祐樹が立っている
「酒買ってきた」
祐樹が手に持つスーパーの袋の中には缶ビールと缶酎ハイが見える
「今日、配達で魚沼のほうまで行ったら昼間でもまだ雪降ってて参ったよ」
「もう春だってのにね、いつまでも嫌ね」
食事をしながら祐樹がふと言い出した
「俺たち、付き合って7年経つだろ。そろそろ考えないとな」
「何を?」
「結婚だよ」
「‥‥‥」
思わず箸を止めた
なんの前触れもなくでた゛結婚″の二文字
「‥‥結婚?」
「結婚‥‥‥しようよ」
″これってプロポーズ?″
頭の中を整理させる
「ちょ、ちょっと待って。そういうのってさ、今こういう場で言うもの?例えばレストランとか海とか景色が綺麗に見える山とかさ」
「‥‥ごめん、俺そういうの疎いから‥‥ダメ?」
「ダメ?とかよくわかんないけど‥‥‥‥いいよ」
「いいの?」
「‥‥」
祐樹は私の顔を真っ直ぐ見る
私はうなずいた
祐樹が嬉しそうに微笑む
私も微笑んだ