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昨日の晩から朝にかけて降った雪は既にやんでいる
院内の食堂から見る長岡の街並み
東の空に見える山々は、雪化粧が濃くなった
少し遅い昼食をとる私の前には小夜子が座る
いつもと変わらぬ光景
「佐々木課長って、離婚したっていう噂聞いたけど本当かな?」
私の隣に座る30歳になったばかりの先輩、美香子が突然口にした
私は飲んでいたコーヒーを思わず吹き出しそうになった
小夜子を見ると平然とした顔で弁当を食べている
「その話、私も聞いたわよ、どうやら本当みたい。整形外科の小川看護師長が、佐々木課長の奥さんと遠い親戚なんですって。この前カルテを届けに行ったら看護師たちがその話していたのよ」
美香子の前に座る、医療事務のパートとして働きに来ている吉本さんが目を輝かせて言っている
「やっぱり本当なんだ、私、佐々木課長ってタイプなんだよね。大人の男って感じで色っぽいじゃない、あなた達もそう思わない」
美香子は私と小夜子にニヤけた笑顔で言ってくる
「えぇ‥‥‥まぁ、確かに素敵だけど―」
「佐々木課長の離婚の原因って私なんですよ」
小夜子はあっさりと口にした
一瞬、静まりかえる
「えっ!小夜子さん―」
私はとっさに小夜子の言葉を制止しようとした
「皆さんには後日改めてご報告をしようと思っていたをですが、私と佐々木課長、結婚することになったんです」
美香子と吉本さんは、まるで鳩が豆でっぽうを食らったように、口をあけて唖然としている
「小夜子さん‥」
小夜子は、また平然として弁当を食べる
その後、変な空気に包まれたまま、4人は食事の続きをとった