私の生まれた時
私が生まれたのはおばあちゃんの家の庭に咲く桃の花が満開に咲いた春の朝。あんまり桃の花が美しかったので、私の名前は家族全員文句なしで桃に決まった。
桃のお母さんとお父さんは高校時代吹奏楽部で中の良かった同級生。父は英語の先生になりたくて、国立大学の英語科へ。母は、化粧品会社でアルバイト。大学の夏休みに実家へ帰った父は、母と付き合うようになり、その夏休みに母は私を妊娠した。父は、どうしてもなりたかった英語教諭の道をあきらめて、大学を中退して
母と私を養うために、タクシーの運転手になった。
時々、高校時代の両親の写真をみると、二人ともキラキラした瞳で笑っている。
でも、私の知ってる両親はいつも喧嘩ばかり。父は、仕事から帰ると決まって私に言った。
”大学ぐらい、絶対出ろよな。”
母は、いつもその話で不機嫌になる。
”大学を卒業していたら、今頃博士だったかしら?私みたいなのと付き合ったのが、運の尽きね。”
私は、自分が生まれたことが父の夢を壊したようで、物ごころついたときから辛かった。
だから、両親が笑顔になるようにわざと無邪気にふるまったり、天真爛漫を装っていた。
でも、本当はいつも悲しかった。
私が生まれたとき両親は喜びの気持ちが少しでもあったのだろうか。
困惑と、将来の不安を私はもたらしてしまったのかしら。。。。
桃も、中学生になって、愛について、漠然と憧れるようになった。
私は、愛の中で生まれたのかしら。