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第十二話

 

 アリオズ殿下を苦手だ。と認識した舞踏会から、今日で3日が経った。僕はいつものように、執事服で仕事をしている。舞踏会でのことは、出来ればなかったことにしたい。


「ルー。」

「うわっ!…っと、リー。どうしたの?」

 いきなり後ろから声をかけられたかと思ったら、そこにいたのはリーティアだった。リーの表情は硬く、けれど強い意志を感じた。僕はリーの手を取り、そっと聞いた。

「リー、どうしたの?」

「…ルー。」

 言いにくいのだろうか。リーは話すことを躊躇しているように見えた。

「…大丈夫。僕は、ちゃんと聞くよ。」

 表情は硬かったが、リーが笑んだ気がした。そして、その重い口を開く。

「あのね、ルー。私、アリオズ殿下の別荘へ行こうと思うの。」

「は?」

 別荘へ、行く?

「な、んで。」

「見極めによ。」

「え、何を?」

「私たちの未来を。」

 リー、それよくわからない。


 モルテニア様とサーシャ様にどういうことかを聞くと、お二人もまた未来がどうのと言っていた。未来、の意味はわからないがリーティアが別荘へ行くことは、お二人も了承済みのようだった。



「…むかつく。」

「ルー様、お顔が怖いですわぁ。」

「ニナ、君は楽しそうだね。」

 今にわかりますわぁ。と心底楽しそうな声をして、ニナは別荘へ行く準備を始めた。何があったにせよ、リーはアリオズ殿下の別荘へ行く。これは決定。そして、それに僕がついて行くことは、絶対だ。



「やぁ、来たね。ようこそ、僕の別荘へ。」

「ご招待ありがとうございますわ。」

 リーの挨拶で、僕たちは中へと案内される。

 張り切り過ぎのニナのおかげで、普通よりも早く出発した僕たちは、大きな湖のほとりに佇む綺麗な屋敷に来ている。別荘なのか、これは。

「リーティア嬢には、こちらの部屋を用意させてもらった。ルーテシア嬢と、ニナ嬢はその両端をそれぞれ使ってくれ。」

 あてがわれた部屋は、リーの部屋はもちろんのこと僕やニナの部屋までかなり豪華なものだった。

「…あの。」

 リーが恐々と声を出す。

「なんだい?」

「用意していただいたのに、申し訳ないとは思うのですが…その、三人で一部屋ではいけませんでしょうか。」

「確かにベッドは三人くらい悠々と寝れるし、困らないとは思うけどそれでいいの?」

 アリオズ殿下の言葉に、リーはゆっくりとしっかり頷く。僕としても、それはかなり安心できるのでありがたい。

「…わかった。この部屋を君たち三人で使ってくれ。」



 三人で使うことになった、元リーの部屋。ニナは、調理場を見てみたいのだと言って出て行ってしまったので、今はリーと僕の二人。荷物を片づけながら、それならばとリーに尋ねる。

「どうして三人で、って言ったの?」

「それは…。」

 そのリーの言葉の続きは、ある乱入者によってかき消される。

「ルーテシア!!!!」

 扉を壊すような勢いで乱入してきたのは、その乱入姿も美しいユリアス殿下。しかし、乙女の部屋に無断で入ってくるとは何事か。

「こらこら、女性の私室に勝手入ってはいけないよ?ユリアス。」

 そう言う貴方もですけどね、アリオズ殿下。

「…何しに来たんですか。」

 アリオズ殿下の別荘なのだから、アリオズ殿下がいるのは当たり前のことだろう。しかし、何故貴方が居るのだ。睨んだ先の彼は、輝くほどの笑顔で言った。

「お前に、会いに来たんだ。」

「…何故。」

「会いたいから。」

 これについても、何故。と言いたいのだが、恐らくこの押し問答が延々続くのだろうと予測して、はぁ。とため息をつくに止めた。

「いやぁ、ユリアスは僕が呼んだんだよ。」

「え?」

 なんで。アリオズ殿下はあの胡散臭い笑顔で、何故かリーに近づく。そして事もあろうにその肩を抱くと、

「リーティア嬢と二人きりになりたかったんだ。」

 などと恐ろしいことを口にした。困惑する僕を尻目に、アリオズ殿下はリーを連れて出て言ってしまった。去り際に、

「頑張ってね。」

 と言い残して。

 リーが危ない。傍に行かなきゃ。だというのに…。

「腕を、離してください。」

「嫌。」

 なんなのでしょう。来て早々にリーと引き離され、挙句このユリアス殿下と二人きり…?



 今回、僕の中でアリオズ殿下は苦手な人から嫌いな奴に格上げしました。


 アリオズ君、侮りがたし。

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