プロローグ
僕は、世界でたった一人の妹の為に存在しているのだと、心の底から思う。
「どうしたの?ルー。」
リーが僕を見ている。不思議な顔をして。綺麗だと、そう思った。
僕の妹、リーティア・オルソンは、家族の贔屓目を抜きにしても美しく、そして可愛らしい女の子だった。
僕たちは捨て子だった。両親の顔など全く覚えてはいないが、それは僕とリーティアが8歳と6歳のときだった。
泣きじゃくるリーの手を引いて辿りついたのが、このオルソンの家だった。
オルソン家の人々は、家督であるモルテニア・オルソン卿を筆頭に、誰もが優しかった。屋敷の門の前で二人、途方に暮れているのを奥方であるサーシャ・オルソン様が見つけてくださらなければ、僕たちはきっとどこかで死んでいたことだろう。
オルソン卿は僕たちを見て、すぐにこの屋敷に住むよう言ってくれた。そして驚くことに、僕たち二人を養子にと望んでくれた。
リーはオルソンの養女となり、唯一の令嬢となった。美しいリーティア嬢は、すぐに皆に受け入れられた。
そして僕は、彼女を守る執事になった。
最後までオルソン卿は僕も養子にと言ってくれたが、僕はそれを頑なに拒んだ。リーを守りたい。ただ、その一心だった。
「…ルー?」
心配そうに見つめる妹に、僕は精いっぱい優しく微笑んだ。
「何でもありません、お嬢様。」
もう癖になりつつあるそれに、リーは拗ねたように文句を言った。
「もう!お嬢様って呼ぶの止めてよ、ルー!」
ごめんごめんと頭を撫でれば、リーは花のように笑って言った。
「大好きよ、ルー。」
全く…。君の笑顔にどれだけの男共が恋をするか知ってるのかい?
そんなことを思いながらも、僕も笑顔で応える。
「僕もだよ、リー。」
初めまして。拙い文章ではありますが、楽しんでいただけたでしょうか?
まぁ、物語はまだ始まったばかり…いえ、まだ始まってさえもいないのでしょうね。