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「えーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
「うっそでしょーーー?!?!私にあの坂道を毎日自転車で登れってゆーのっ?!どー考えても無理でしょ?!」
ママから知らされた驚愕の事実に、2階に用意された自分の部屋に一目散でかけ登り。
これから私の天敵になるであろう坂道に目をやると、今まさに、坂道の一番下から自転車で登ってこようとしているチャレンジャーが1人。
視力1.5の私ですら目を細め見ないといけない程に、坂道を登ってこようとしている人物は小さく見えて。
「やっぱり無理だーー!」
坂道の長さに匹敵するくらいの長いため息を吐く私。
「ん?」
少しづつ少しづつ近づいてくる人物は、どうやら若い男性で、その装いは明日から私が通う学校の制服っぽく。
私より体力がありそうなあの男子ですら、左右に大きく身体を揺らしながら明らかにキツそうに自転車を漕いでいて。
あれはダメなやつだ。
私なら死んじゃうな。
「ママ!ママ!ママ!ママーー!!お願いだから、車で送り迎えしてよー!一生のお願い!」
階段下で引っ越し業者の人達に混じり荷ほどきを始めているママに、階段の手すりから身を乗り出しながら大声で呼び掛ける。
「何言ってるのー!蒼依はまだ若いんだから、あのくらいの坂なんてヘッチャラよ!」
我が母親ながら、なんちゅー無責任な発言。
さっき車で坂道を登ってきていた時には、「やっぱり、この坂道は車でしか無理だわ~。歩いて登るなんて、考えただけでも疲れちゃうわね!」って言っていたのは何処のどいつか。
「いくらなんでも若さだけじゃ解決出来なくない?!どーすんの?!足が競輪選手みたく太くなっちゃったらさー?!」
引っ越し業者さんにクスッと笑われようが、今の私には関係ない。
自分の生命に関わる危機に、なりふり構わず必死に懇願。
「大袈裟ね~。たかだか坂道一本くらいでそんな太くなんないわよ。ほら、もー!口ばっかり無駄に動かしてないで、早く自分の荷物を取りに来なさいよー!明日には学校始まるんだからねー!」
嫌だ嫌だと騒いで言ても、結局、堅物頑固ママは取りあってくれず。
もう一度部屋へと戻り、再び、坂道を立ちこぎで登ってきている男子に目をやり。
「明日は我が身だ」
落胆のため息を吐く。
まだ荷物が何一つ入ってない部屋を見渡して、更にもう一つ追加のため息だ。




