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「ねぇ、ママ。今通りすぎた道の横に小屋みたいなのがあったじゃん。野菜が沢山置いてあったんだけど、あれって何?」
「あれは、あそこで野菜を売ってるのよ。好きな野菜を選んでお金を置いていってもらうシステムなの。蒼依、野菜の無人販売所も知らないの?テレビで見た事くらいあるでしょ」
「そりゃ私だって、お店の中に入ってるデザートの無人販売は見た事あるけど、あんな野晒しなのは見た事ないし。本当に誰もいないの??あんなのお金も野菜も捕られ放題じゃん??無用心くない??」
「それだけお互い信頼してるって事なのよ。都会とは違って人の絆が深いんでしょうね」
「ふーん。''絆''ね~。私はそんなのより、ネカフェくらいあって欲しかったけどな。てゆうかさ、ありえなくない??ゲームセンターもないんだよ?!ここの若者はどこに癒しを見出してる訳?!」
なぜ私が一人で、こんなにブチブチブチブチ文句を言っているのか。
突然ですが!
私。
ただ今、引っ越し真っ最中!
なのです!
急遽決まったパパの仕事の転勤。
車では通えない距離の転勤先に、パパは1人でこっちに単身赴任するつもりだったらしいのだけど。
東京にいつ戻ってこれるか確約のない転勤に、ママが「私達もついて行く!」と言い出して。
その勝手な決断に巻き込まれ、赤ちゃんから今までの思い出が全て詰まった、17年間住んでいた都会を離れ……
「さっ、蒼依!着いたわよ!今日からこの家が私達のマイホームよ。どう?どう?いい感じでしょ〜?こんな理想の物件に出会えたなんてラッキーだったわ〜♪」
「いや…。確かに家はいい感じなんだけどさ…」
ド田舎とまでは言わないけれど、都会暮らしに慣れきってしまった私からしてみれば、多少の不便さを感じてしまいそうなくらいの田舎に車で3時間かけて引っ越しをしてきたのが20分前。
まだ、養ってもらってる身分だし?
仕事の都合だから、それも仕方がない。
友人達との別れはもちろん寂しかったが、そんな事で駄々をこねるような歳でもないし。
今の時代、携帯電話があれば、どこでだって誰とだって繋がってられる。
パパとママが私に内緒で勝手に決めていた、海が近くにある一軒家の家も、私の部屋からでも綺麗な海が一望出来て申し分もないくらい。
だけどね?
ただ1つ。
ただ1つだけ、愚痴を言わせて頂けるのならば。
今、私の視界の先に広がる青くキラキラと輝いている海と、その綺麗な海から一直線にのびた坂道の頂上にある私の家を繋ぐ道は恐ろしいほど長く急な坂道で。
3分前に聞いたママの話しでは、学校に行くにもコンビニ一つ行くでさえも、その坂道を通るしかないらしく。




