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教室の一番うしろ。
窓際の……あの男かっ!!
皆が私に注目している中、一人だけ未だに顔を机に伏せて、カタカタと肩を揺らしているあ奴を疑わずして、一体誰を犯人と言うべきか。
「あっちゃん!笑いすぎだろ?!」
「そーだぞ!そんな笑っちゃ、道瀬さんがかわいそーだべ」
今にもキレそうな私に反し、"あっちゃん"とやらの笑い声のお蔭か、ざわつきが戻り出した教室は何だか和やかムード。
私のさっきまでの張り詰めた緊張感もどこへやら。
「いつまでツボってんだよ!いくらなんでもしつけーぞ」
そうだ!そうだ!
しつこい男は嫌われるぞ!
緊張感はなくなったが、この場で肝心な挨拶もまだ出来ぬまま、いつまでも間抜けな様でつったっている私の身にもなって欲しい。
「悪りぃ!もー大丈夫だから」
やっとこさ、笑い声の主が顔を上げ、"あっちゃん"と呼ばれていた人物とバッチリ目があったその瞬間。
「ぇ…」
思わず発してしまった声を、私は誰にも気付かれまいとすぐに飲み込むけれど、激しく動き出した胸の鼓動は自分でもどうする事も出来なくて。
その後は、気が動転しすぎてあまり記憶がない。
あんなに頑張って練習した挨拶も、結局は名前と軽く言葉を添えただけ。
そのまま、用意された廊下側の一番後ろの席に案内され、いつの間にか時間だけが過ぎていき。
一時間目が終るとすぐに、好奇心からか私の机を女の子達が取り囲む。
「私は優香、よろしくね!で、この子は茜っていうんだよ。」
「ねぇ、ねぇ。東京のどの辺りに住んでたの?」
「生まれも育ちも渋谷だよ」
「えーー!!やばーい!!大都会じゃん!!じゃあじゃあ、センター街とかパルコとかしょっちゅう行ってたの??」
「うん。普通に学校帰りに行ってたよ」
優越感に浸るわけじゃないが、皆んなの私に向けるキラキラとした羨望の眼差しに照れ笑い。
「せっかく都会に住んでたのに何でこんな田舎に来ちゃったの?」
皆んなそれが疑問らしく同時にウンウンと頷く。
「パパの仕事の転勤先がこっちで」
「そっかぁー、それなら仕方ないよね〜。1人で残るわけにもいかないしね〜。でも、東京っていいよね~、憧れちゃうな~!東京の人から聞いたら、うちらの話してる言葉って訛って聞こえちゃうのかな~」
「道瀬さんは誕生日はいつ?血液型は??好きなアーティストとかいたりするの??あっ!鞄に着けてるそのキャラクター可愛いよね~!私も持ってるんだよー!」
都会も田舎も、JKは何一つ変わらない。
女子特有のまとまりのない楽しい会話が私の頭上を飛び交い、なんらかんらで一先ず出だしは順調そうだ。
教室の1番後ろの席の端から端。
直線上から送られてくるアイツの視線が気になるけれど、アイツの事は無視しよう。
もう、私の中にアイツはいない。
そんな事より今は、新しい環境に馴染むことが最優先だ!と、最初の挨拶での失態を挽回すべく、ここぞとばかりに私は友達作りに励むのだった。




