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そんな私が、自転車を駐輪場へ置いて目指した先は職員室だ。
「確か、、、柴山先生だったよな~」
そろ〜と職員室のドアを開け忙しそうにしている先生逹めがけ、「すいませ〜ん。柴山先生いらっしゃいますか〜」と、申し訳ない程度に声をかけると、眼鏡をかけた若い先生が返事を返してくれ。
「おはよう。転校生の道瀬さんだね?」
「はい。よろしくお願いします」
担任の先生に挨拶をすませると、そのまま新しいクラスへ直行だ。
「……」
「……」
「……」
「やっば……、吐きそ」
さすがに、初めて会った担任の先生に向かってのタメ口な訳ではなかったけれど、興奮と緊張が入り雑じりすぎた故にポロッと出た私の独り言は見事に先生に拾われて。
「アハハ!大丈夫?な、訳ないよね~!緊張するなってゆー方が無理だよね。僕も何回か転校した事があるから良く分かるよ。でもまぁ、うちのクラスは皆仲良しだからきっと大丈夫。道瀬さんも、すぐに馴染めると思うよ。何かあったら気軽に相談してくれていいからね」
ありがたい御言葉も、今の私の耳には話し半分すらも入ってきていない。
「道瀬さん。この教室だからね」
「あ、はい」
とうとう着いてしまった、教室の前。
先生が先に教室に入り、私はその後へと続き。
これが、転校生の宿命か!
分かってはいたが辛すぎる。
ついさっきまで、教室の外からでも分かるくらいにざわついていた活気ある教室が、私が入った瞬間一気に静まりかえり。
皆の視線が一斉に私に集中し、グサグサと身体に突き刺さる。
そんな中、飄々と話し始める先生の横に立ち、私は平常心なんて保てずに。
口から心臓が飛び出しそうだなんて、昔の人はうまく言ったもんだな、なんて考えれてるあたりまだまだ余裕は残っているのか。
「今日からこのクラスの一員となる道瀬香奈さんです。皆、仲良くしてやってくれな!それじゃ、道瀬さんの方から一言挨拶をお願いしていい?」
「あっ、はい。……あの、きょっ、東京っ、、」
前言撤回。
今の私には、余裕の一欠片も残っていなかったようだ。
昨日、深夜までおよんだ挨拶の練習。
あんなに沢山練習したのに。
この挨拶で、私の第一印象が決まるのに。
最悪だ…
初っぱなから噛んでしまった。
私の計画では、クラスメイトに第一印象を植えつけるこの挨拶で、スマートかつエレガントな自分を演出し、誰が付けたか、前の学校でのおっちょこちょいで少しばかり男勝りなイメージを払拭していこうと思ったのにっ。
昨日の努力は全てが水の泡、とまでは言い過ぎだけど、噛んだ失敗を立て直せないまま私の挨拶はここでストップ。
「プッ!クククッ!」
どこの誰だか知らないけれど、笑いたければ笑うがいいさ。
一斉一代の大事な挨拶で躓いたのは私の方で、笑われても仕方がない。
でもさ。
それにしてもさ。
「ククッ。……クククッ!……ブッ!」
いくらなんでも、そりゃ笑いすぎでしょ?!!
「ブハッ!」
笑いを堪えた結果、思いっきり吹き出してしまったのであろう下品な笑い声は、さっき校門の前でも聞こえたあの笑い方。
気のせいじゃなかったんだ!
クソー!!
さっきも、きっと私の事を笑ってたんだ!
初対面の私に対して、何の恨みがあるのだろうか。
沸々と込み上げてくる怒りを抑えながらも、狭い教室での犯人探し。
それはすぐに見つかった。




