【ホラー】家族【ショートショート】
友人にまつわる短い話。実体験に基づいておりますがフィクションです。notベースドオン。インスパイアドバイ。
昔、Aという友人が居た。Aには変な癖があった。
Aはいつも家族の写真をサイフに入れて持ち歩いていて、会話の合間にそれを見せてくる。
初対面の時、いきなり「これが母親で、これが父親。これが弟」と言ってチェキを見せられた。
写真の後ろ側にはメモ紙がセロハンテープで貼り付けてあって、メモには撮影日と被写体の生年月日が書いてあった。
数か月ごとに撮り直しているらしかった。
「洋画観ててさ。むこうの人って何かにつけて家族の写真を飾ったり、持ち歩いたりするじゃんか。なんか、あれ、いいなあと思って、真似してんの。それに、まあこんな事は縁起が悪いからよくないんだけど、なんかあった時とかにさ、直近の写真があったら役に立つかもしれないじゃん?」
「別に、スマホで撮って保存しておけばいいんじゃないの?」
「それもいいと思うんだけど、こう、質量があると、『在るなあ』って感じがして、よくない?」
「電子書籍もいいけど、紙の本もいいよね、みたいな?」
「そんなかんじ!」
「なんか解んないけど、Aは家族想いなんだね」
「アハハ!照れるじゃんか!そんなんじゃないよ!」
★★★
ある日Aが「新しく撮ったの見て」と言って写真を取り出した時、メモ紙が剥がれて落ちた。
何の気なしに拾うと、メモ紙の裏面に数字が書いてあった。
実は前にもこの数字を見たことがあった。
メモ紙を留めるテープはいつも上下に貼られていた。チェキを縦にベコっとすると、メモ紙とチェキの間に隙間ができる。それでメモの裏面がチラっと見える事が時々あったのだ。
「これってなんの数字?」
実は前から少し気になっていたので、意を決して、何気ない素振りでAに尋ねると、Aはいつもと何も変わらない笑顔で答えた。
「死んでほしい順番」
ちなみに全部の写真の、全部のメモの裏面には、数字の「1」が書いてあった。
★★★
風呂上りにテレビを点けると、一家惨殺のニュースが流れていた。
被害者3人の顔が画面に映っているのを見て、そういえば「なんかあった時に役に立つかも」と言っていたのを思い出した。
よく撮れていた。
「大人になったら欲しい物」3トップの1つがポラロイドカメラでした^^
読んでくださってありがとうございます。