幻魔達の華 第八章 怪異との遭遇
お久しぶりです。
最近少し音楽を作っていて更新遅めになりました。
一応喜田さんと松江さんが正式なサブキャラクターになりました。
今回は結花が大学の生徒と派手にやるみたいです。
誤字、脱字があったらすみません。
金曜日の朝、結花が目を覚ますと甘い柑橘類の香りがした。
(今日は雷黄が前かな)
頭の後ろで天渡が体を動かしていたが結花が起きたのを知ってわざとやっている気がした。
「わ…ワタシは…寝テイル…」
結花がわざと片言っぽく言う。
「…結花?起きないともう八時だぞ?」
「嘘っ!」
いつも七時半に支度をする。雷黄に言われて慌てて結花は起きた。
時計はまだ七時十分位だ。
「へへっ!嘘だよ!」
「…っ!もうっ!」
結花が腕をじたばたさせる。
「…こら。結花に体を合わせていたのに邪魔するな」
「私!プーッ!だよっ!」
結花は顔を膨らませて言った。
「結花。可愛いよ」
天渡が体を起こして結花の左の頬に手を当てるとキスをした。
少し唇を咥えてくる気がした。
天渡が唇を離すと結花は少し甘い表情をしたがすぐに顔を少し横に向けた。
「…天渡はズルい。キスが色っぽいんだもん。警戒モードか真剣モードになっちゃう…」
結花の表情はキリッとなっていた。
「結花?見て?キス、美味しかった」
天渡は舌を少し唇の横にペロリと出す。
「~っ!もーっ!天渡色っぽすぎっ!クールだけど大胆過ぎ!」
結花がまた少し怒っていると雷黄が結花の肩に掌を置いた。
「…結花。俺が悪戯したから仲直りのキス、しよう?」
少し真剣な顔で雷黄が言うとキスをしてきた。
結花も嫌ではないので雷黄の体を少し抱いた。
「…さてと、今日まで大学あるから用意しなきゃ…」
結花は階段を降りて台所に行くと光の精霊のコウが何か真剣な顔をしてお皿を見ていた。
「おはよう。…コウはどうかしたの?」
「あっ!結花さん!おはようございます!幸恵さんに味覚について教えてもらってます!」
昨日はコウが食事を食べたがらなかったのでピンと来た。
「…あー。そういえば昨日ご飯食べたがらなかったよね。…お母さん。皆好きな味覚って違うの?」
「初めてコウ君が『味覚について知りたい!』って言われたからいろんなものを用意したんだけど…」
何だか結花の母親は複雑な顔をしていた。
「俺は『コーヒー』が好きです!苦いのが美味しいです!」
コウはブラックコーヒーを嬉しそうに飲んでいた。
「…確か朱雀のレン君は『辛い』のが好きだったかしら?青龍のセキ君が『しょっぱい』。木の精霊のリョク君と月の魔人のセイ君が『甘い』。闇の魔人のコク君は『苦い』。…かな?すっぱいのが好きって子はいなかった気がする」
(俺はすっぱいのが好きかなっ!まあ何でもいけるけどさ!)
(俺も何でもいけるが、苦いのかな。)
雷黄と天渡が心の中で言った。
「…雷黄がすっぱいので、天渡が苦いのかあ。たぶん五十嵐さんも苦いのはいける。市村さんは紅茶飲んでいたからすっぱいのかな。火爪さんが『旨味』かな。肉好きそうだし。」
「…お肉ねぇ…。でも、リョク君とコク君は野菜が好きみたいね。セキ君は魚よ」
「…まあ、コウもいろいろ楽しんでおいでよ。」
「はい!」
結花はトーストを食べながら言った。
結花は朝ご飯を食べ終わると出かける準備をした。
「行ってきまーす!」
「行ってらっしゃい!気をつけてね!」
結花は出かけて行った。
「…幸恵さん。何故『気をつけて』と言ったのですか?」
「…外は危ない事があるから『注意しなさい』って言ったのよ。天渡君や雷黄君がいるけど、結花は車に追突されて怪我した事があるの。…今は生きているけど、死んでしまうからよ。残された人は辛い思いをするから伝えるのよ」
「…昨日、コクとセイに『道具ではない』と言われた意味が分かりました。俺が消滅すると結花さんや幸恵さんが辛い思いをして傷つくのですね?」
「…そうよ。だから、自分にも人にも命を
無駄にしないように言うの。…中には人を傷つける人間もいる。でも、もし結花が傷つけられたら、コウ君はどう感じる?」
「…許せない!…でも、結花さんがむやみに誰かを傷つける人にはなって欲しくないですね?」
「…そうね」
幸恵はコウの頭を撫でながら言った。
結花がバスに乗ると護とOLのお姉さんと川井さんがいた。
「おはよう!中村さん!」
「おはよう。昨日は頑張ったよー」
川井さんが結花に挨拶をした。
「昨日は凄かったみたいね?オーロラが出たってニュースになっていたから。あれでモデルの写真撮ったら良いのが出来ていたから惜しい事をしたわ」
OLのお姉さんが言ってまたピンと来た。
「…モデル?…って事はお姉さん、カメラマン?」
「違う。雑誌の編集者よ。六木彩歌、ファッション雑誌の編集をしているの。良かったら、名刺をどうぞ?」
結花は六木さんから名刺を貰った。それを見て瞬時に(ヤバイ!お父さんのライバル会社じゃん!)と頭に浮かぶ。
結花の父親は服のデザインを考える会社だが、六木さんの会社の人でライバルがいると聞いた事がある。
犬猿の仲!
「あぁ、どうも。何かあったら連絡しますね?…って、今日は私の大学に白虎が現れるみたいだし、危ないからオススメしませんけど…」
「えっ!虎!?」
川井さんが驚いて言った。
「うん、風と土属性。気をつけて戦う」
「あー!陸を走るよね!虎って!」
「…土?地震とか、大丈夫?」
「揺れたりはないと思います。後は極力早く倒すようにはします」
バスの停留所の案内が聞こえだした。
「結花?そろそろ降りようか?」
「うん!じゃあ行ってきます!」
結花は二人に手を振った。
「中村さん、本日も気をつけて」
「はい、行ってきます」
バスの運転手の叔父さんに挨拶をして結花と護は降りた。
「…おはよう。毎日大変ね?特に結花」
駅から翼がやってきた。
「おはよう。翼。…って?…結花?何かあった?」
護が気になって結花を見ると六木の名刺を見せた。
「…六木さん、お父さんのライバル会社よ?」
護がビックリしていると三瀬さんも来た。
「おはよう。…どうかした?」
「おはよう。…バスのOLのお姉さんが名刺くれたんだけど、お父さんのライバル会社よ」
三瀬さんが名刺を見た。
「…っ!これっ!この人!人気のファッション雑誌の編集者じゃないっ!じゃあ中っちのお父さんも!?」
「…ううん。私のお父さんはメンズの雑誌の編集長よ。ただ、六木さんの編集長とライバルなの」
その言葉に護と三瀬さんは驚いたが翼は知っていたようだ。
「結構結花のお父さんって六木さんの雑誌のファッション避けるチョイスしてるでしょ?ギャル系とか軽い雰囲気の明るい服装載せてるけど、結花はカジュアル系でお母さんは深い感じの服装多いでしょ?」
「そう。六木さんの雑誌は明るさ重視なの。お父さんは結構やんちゃ系や目立つの多いの」
その言葉で護は雷黄の前髪が目立つ事に気がつく。
「それで雷黄の前髪があんなに目立つのか」
「え?関係あるの?」
三瀬さんが不思議がった。
「雷黄さんは結花が生まれた時から宿っていた雷の力から生まれた鬼なの」
「そう言う事ね!…って、凄くない?そこから鬼にしたのって?」
「ブイブイ!って黒澤さんや従妹の双葉が悪鬼と戦うのを手伝ったのもあると思う。」
「…悪鬼?」
「うん。私が旅行に行った所で黒澤さんに逢ったの。今は水の巫女の力を持っているんだけど、パートナーの鬼の子の友達が池の強力な怪異のせいで悪い鬼にされていたから鬼の子二人と黒澤さんと私、後は翼や私が怪我した時に助けてくれた月詠先生達と一緒に戦ったの」
「…凄くない?…怖くなかった?」
「今思えば、怖かったかな?初めは黒澤さんと二瀬さん…、二人共従兄弟で要さんと透さんと四人だったけど、どうにかして現実世界に戻らないとなって思っていたから。どうにかしないとなって思った」
結花はちょっと笑いながら言う。
「…私は九尾の狐の力と属性の石がかなりあるけど、結花は光の輝く石一個だけで周りの鬼の力を使って戦っていたのよ。ホント、むちゃくちゃよ」
翼が言うので三瀬さんは何となく護の力を意識してバリアを張ろうとした。
「…薄い膜が出来た。五十嵐さんは土属性ね。でも、引き出すのはちょっと難しいね?」
「へぇ?まだ慣れてないのもあるけどこれから出来るようになるよ」
護が言うと少し三瀬さんは嬉しそうにした。
大学の教室に行くと貴田さんと松江さんが土居さんにヒーリングして貰っていた。
「おはよう。…って、土居さんに癒して貰ってたの?」
「…きついんだよ、これがまた…」
結花が貴田さんに言う。土居さんはちょっと難しい顔をしていた。
「…結構厄介ね?大分邪気が薄れたのが分かるけど…」
「…すごいですね。私達も貴田さんと松江さんの邪気が見えるんです」
志波さんが言った。
「…天渡。邪気祓える?」
結花が言うと天渡が人間の姿で出た。掌を向けると邪気を吸い取り舌をペロリと出した。
「…もしかして、食べた?」
「美味かった」
小林さんが少しドン引きする中、天渡が嬉しそうに言う。
「…俺は食べないぞ」
護は同じように見られたくないので言った。
「…中村、帰ったらダメ?」
「ダメ!だって!貴田さんと松江さんは怪異の写真撮るんでしょ!今日はここだよ!出るの!」
その言葉で翼と護以外は驚いた。
「…待って。…ここ!?」
「うん。今日は四方からガンガン怪異来た後に白虎が来るみたい。属性は風と土」
焦る土居さんに結花が言う。
「…昨日のはダメなのに今日はいいのかよ…」
「…だって、ポルターガイストと本物のクリーチャー、どっちの方が目立つか分かるでしょ?あっ、私の幻魔はうまい事ごまかしてね!先生がそろそろ来るから続きはまた昼御飯の時にね?」
教室の中がざわつく。まあ、当たり前だ。
昼御飯の時間になると貴田さんと松江さんも机を繋げていたが周りも写真科や映像科の学生がいた。
「…中村、今日の怪異ってどんなタイプ何だよ?」
貴田さんが言った。
結花が球体を出すと何体か怪異が映し出された。
「…全部で四種類の怪異みたい。一反木綿みたいなのがいるけど、なんか違うね?体がベージュみたいな色で緑の球体が浮いてる。弱点は球体みたい。
もう一体は鵺っぽいのがいる。顔は猿で体は狸で尻尾が蛇ね。大きくないし、毒もないけど速いみたい。
後は虫鳥ね。大きな虫の羽根の鳥みたい。足は一本。この足の爪が危ないみたい。
最後が体が銀色の魔獣ね、前向きに角が三本あって目が緑色」
「やっべぇなっ!完全にUMAレベルじゃん!…写真や映像撮れって危なくねぇか?」
「…ここに幻魔が6人おりましてね。護衛は大丈夫よ」
結花が幻魔の石を出して見せた。
「な…中村。幻魔って何なんだ?」
貴田さんが言うが凄いものなのは分かっていた。
「…草と火の精霊、水と雷の青龍、火と風の朱雀、土と光の玄武、月と闇の魔神、闇と草の魔神、がここにいる。昨日の光と氷の精霊はちょっとお休み中よ。昨日私の幻魔が倒して私の幻魔にした。…詳しく言うと、人間の命を奪おうとする魔女が幻魔を使って悪さしてるから退治してるの。貴田さんや松江さんが襲われた原因は魔女のせいよ」
周りがざわついたが、二人は以前の地震を思い出す。
「…以前、地震があったな?玄武って土だろ?」
「そういう事。まあ怪我人は私達が治して、火災も抑えたけどね」
松江さんや結花が言うと志波さんが当時の事を思い出す。
「…まあまあ揺れたけど、不思議と被害はあまりなかった気がします」
「…で、どう分担するんだ!」
貴田さんは少し幻魔を見たくてワクワクしていた。
「…小林さん、三瀬さん、松江さんで木の精霊リョク、青龍セキ、月の魔神セイ。土居さん、志波さん、貴田さんで朱雀レン、玄武ガン、闇の魔神コクね。後は、雷黄、雷の石を皆に渡してくれる?」
結花が言うと雷黄が現れる。
雷黄は黄色の石を出した。
「雷の石だ。幻魔がいる間は使える。ちなみに貴田さんも松江さんも攻撃の術だ」
雷黄が六人に石を渡した。
「…後の人は術が使えないから石は渡せないけど、貴田さんや松江さんが頑張るでしょ。相手は怪異だから気をつけてね。後は幻魔を意識したら幻魔の属性が使えるから」
「分かった!派手に魔法使ってやるよ!」
貴田さんはもうはしゃいでいた。
「南側の入り口は市村さん達にお願いする。東側は小林さん達、西側は土居さん達、北側は私が光と雷の鬼を連れて行く。まあお互いの場所に光鬼の力で空間繋げるからそんなに苦戦はしないかな。白虎は強いから気をつけて」
「オッケー!任せろ!」
松江さんも楽しそうにしていた。
こうして長く感じる午後の授業を終えた。
「…さてと、移動しよっか?」
結花は教室を出ると手持ちの幻魔を全部出した。
「…昨日と一緒で小林さんはリョク、三瀬さんはセイ、土居さんはレン、志波さんはガン。貴田さんはコク、松江さんはセイね」
コクとセイはそれぞれ闇と月のオーラを見せた。
「…俺達が普通の人間のように思っただろ?怪異が出たらしっかり闇の力をふるってやるからな!」
コクは少し邪悪な笑顔を見せた。
「…おっ、おう」
貴田さんは少し怯えていた。
「…松江さんか。お手柔らかに、よろしくな」
「あぁ!」
セイは松江さんに普通に接していた。
まあ金色の目で驚いてないから貴田さんより松江さんの方が相性は良さそうだった。
「…後は私達に付いてくる皆はテーブル席毎にいた人達かな?私達の前に出たら危ないから下がるようにね?」
『はーい!』
「さてと、昼ご飯の時の説明通り、東側は小林さん達、西側は土居さん達、南側は翼達、北は私。ある程度時間が立ったら北側のグラウンドに白虎が現れるの。私が空メール送るからその時は皆加勢して来てね」
「分かった!分かった!」
貴田さんが言うと天渡が空間を開いて見せた。
「皆から見て左側が西側だ、右が東側、奥が北側で手前にあるのが南側だ。移動してくれ」
「貴田さんと松江さんは良い動画撮れるように頑張ってねー」
全員が移動すると背後に三つ空間が出来た。
「皆、分かる?真ん中が北側ね?私の所は真ん中が南側の空間だけど」
「…すげぇな?本当に繋がってるのかよ?」
「…ちょっとワクワクして来たな!」
松江さんと貴田さんが言う中で勇吹が少し機嫌悪そうにした。
「…結花、良いのかよ?皆にバラして?」
「だって、知らないと皆大騒ぎして怪我するんだから?ほぼ全員に連絡伝わってるから逆に騒ぎにならないの」
「結花らしいよね?」
翼は苦笑いして勇吹の肩を叩いた。
勇吹は結花が注目されるのが嫌らしい。
「…勇吹。一応、怪異はパワー系多いから気をつけてね?」
「そう簡単にやられねぇよ」
西側では遠くから空中の敵の群れが見えた。
「…多くない?大丈夫?」
「…小林さん、上より先に下が来るぞ!すげぇ!何が起こるか分かるぞ!例の速い鵺っぽいやつ!」
松江さんが右側にカメラを向けると獣が現れた。
月の魔神セイが拳を向けて波動を出すと空中に塵が広がった。
「…十分良い動画が撮れただろ?ギリギリまで引き寄せるからな?」
「あぁっ!その調子で頼む!」
東側は山があったが、貴田さんが警戒していた。
「…土居さん、志波さん。敵が影から移動しているから気をつけて」
「…微妙に生き物の体温がこっちに来る感じがする」
「…私は地面の振動が分かる」
土居さんと志波さんが言った。
「…マジかよ?俺は影の動きを感じる。これは左右真ん中一気に来るぞ」
貴田さんが構えていると左側から布の怪異が、右側から獣が、真ん中の影から虫の羽根をした鳥が出た。
三人がカメラを向けているとレンの炎の羽根、ガンの光の波動、コクの闇の槍が怪異を倒していく。
「これで良かったか?土居さん?」
「…うん。ちょっとびっくりしたけど」
「私も。ガンさん、また怪異が出たらお願いします」
「あぁ、任せてくれ」
「幻魔の力、役に立つだろ?敵は倒すからそっちは頼むぜ!」
コクがニイッと笑って言う。
「あぁっ!任せとけ!」
喜田さんは嬉しそうに言った。
「…うーん。小林さんや土居さんは良いとして、こっちは私が目立つんだよね」
翼は九尾の尻尾を出して言った。
「皆、私の尻尾、大きいから普段は出せないから。ここだけにしてね?」
『はーい!』
後ろにいる学生は言った。
「…護、良いのかよ?鬼の姿がバレて?」
「まあ、こっそり大事にするなと暗示を翼がかけたから大丈夫だよ」
「…ならいいや」
勇吹は適当に空の怪異を焼き払った。
「…皆、上手くやってるな?」
「まあ、力あるからね。数匹残して倒すのは余裕でしょ?」
天渡に言いながら結花は空と陸の敵を倒していった。
そして、結花は分かるようにアイフォンを出して上に上げて後ろを見た。
「…皆、白虎、来るよ」
結花のメールの音を聞く前には小林さんや土居さんや翼は敵を全滅させていた。
「…来る!中村の所に!」
松江さんが言い、小林さんと三瀬さんの表情が変わった。
「なんか、凄いのが猛スピードで来てないか!」
「あぁっ!白虎だ!貴田!行くぞっ!」
「…さてと、中村さんの所に白虎が来るから。今から結界張りに行く」
全員が結花の元に行くと翼や天渡は結界を張った。
激しい風の刃が飛んできてそれを防いでいた。
「…なかなかやるな?人間がまとまっておるから始末してやろうと思ったが?」
白虎は黒色のオーラを出していた。
「そう簡単にさせるかよっ!」
貴田さんが黒色の波動を放つが風でかき消された。
「クククッ!我が力の前でこんな術が効くものか!」
白虎が言うと不意に巨大な黒色の拳が白虎を
真上に吹き飛ばした。
貴田さんが驚いていると腕が六本になったコクが貴田さんの顔を見ていた。
「…貴田。お前を白虎が攻撃しようとしたから殴った。別にいいよな?」
「…あっ、あぁ。」
貴田さんはつい幻魔になったコクを撮していた。
(…白虎の映像撮るよりコイツの方が良いじゃねえか)
「…グッ!に…人間ごときがっ!」
白虎の目に入った松江さんの方に白虎は瞬間移動して行った。
土居さんと志波さんがやられたと思い思わずカメラを落としかけるのをレンとガンは拾った。
「…おっと!」
「危なかったな。うまく拾った」
レンとガンが土居さんと志波さんに渡した。
二人も幻魔化していたが優しい表情をしていた。
「…今、俺の主人は『松江さん』だ。…傷つけさせんぞ?」
体から毛皮を出したセイが巨大な手の爪で白虎を攻撃したので白虎は距離を離した。
「…大丈夫か?松江さん?」
「…あぁ、助けてくれるのは分かったから」
腰を抜かしそうになる松江さんをセイは抱き抱えた。
「…撮せるか?そろそろ終わりそうだ」
セイが松江さんに言った。
「…ク…ッ!何故、邪魔をする」
「…皆、聞いて。この白虎は悪い魔女に人を殺して魂を奪うように言われてるの。魔女の命を延ばす為に。それで多くの人の命を奪った。私の周りの人を守りたいから、許さない」
結花は掌に雷の力を集めると放った。
白虎は塵になりながら白色の光を出す。
「…白虎、クウ。私の幻魔になりなさい」
結花が言うと空色の石が掌に入った。
「…ふうっ、終わった。皆、上手く良い写真や動画撮れた?」
結花が言うと見学していた学生は良さそうだが、貴田さん、土居さん、志波さんの表情は良くない。
「…ちょっと、カメラ、ビックリして離しちゃった」
「私もです。松江さんが怪我をしたと思って手が緩みました」
土居さんと志波さんは少し悔しそうにしていた。
「後で編集したら良いよ。…貴田は…。ブハッ!白虎撮ってないだろ!」
松江さんが笑い出す。
結花が近づくとコクが横から見ると自分を指差した。
周りの大学生もじろじろ見ていた。
「…途中からコクばっかりじゃん?」
「だって、コク、腕が六本でカッコ良かったから…」
「まあまあ!結花さん!許して上げてくれよ!」
コクが機嫌良さそうに言った。
「今日はもう終わりね?」
「…待って?明日は?」
小林さんと三瀬さんが言った。結花は球体を出すと雪が降る町が写されていた。だが、道路には大きな氷の結晶が出来ている。
「…中村さん。これ、北側の地震があったエリアの北西ですよ」
「…氷の精霊ね。空に月が見えてない?氷と月、それと明後日は麒麟、雷と…水」
志波さんと結花が言った。
「…皆、明日北西に住んでいる人は寒くなるから気をつけてね?結花、後でお父さんと六木さんに連絡しておいてね。ファッションビルなら冬服あるはず」
「…なあなあ!俺達も行っていいか!」
「貴田、靴は滑らないのにしろよ?身動き取れないお前の姿が見えるぞ?」
貴田さんはまた来るつもりらしい。松江さんは許可をもらえる事が分かっているから貴田さんに注意していた。
「…私はお母さんが心配だから、ちょっとパスかな。まだ少し腰が悪いから」
「私は妹が入院しているから明日、明後日はお休みする」
土居さんと三瀬さんが言った。
「いいよ。無理しないで。…一応怪異は今日程じゃないと思う。ただ、月だと惑わす怪異がいるから気をつけてね。後は四人に怪異の映像は頼もうかな?じゃあ解散!」
バラバラと学生が帰る中、結花はこっそり球体を出した。
「…中村、厄介だな?人間に擬態してる怪異がいるんだろ?」
松江さんが言って小林さん達が驚く。
「雪女とか!?」
「…ううん。まだ癖が悪い怪異。
『口裂け』口が裂けてる怪異で氷の刃を飛ばすの。これとか『雹蝙蝠』氷の塊を落とす怪異。『氷鎌』氷の鎌の手を持つ人型怪異。大体三種類」
「…人型。戸締まりしなきゃ」
土居さんは真剣な顔をしていた。
「…人型ならビルとかに侵入されたらマズイな…」
「…まあ、そこは中村さんの幻魔の怪異でフォロー出来るから!頼りにしてるぜ!」
心配する勇吹だが、松江さんの言葉に少し驚いた。
結花は貴田さんや松江さんの連絡先を交換すると天渡に自宅前の空間を繋げてもらった。
「今日は手伝ってもらったから!ワープトンネル使っちゃおうか!ただ、いつもやると負担になるから特別ね!」
「へへっ!悪いな!じゃあ!また明日!」
「俺も。おつかれー」
貴田さんや松江さんは空間移動で帰って行った。
「…喜田。お前、初めビビっていたのにコクさん気に入っただろ?」
「お前だってセイさんに持ち上げられていただろ?」
「まあ、なんかいろいろ心の中で話しかけられていたからさ?」
「…お前もかよ?コクさんもいろいろ話していたからな」
二人は少し話ながら家路に向かっていた。
「…土居さんも三瀬さんも家の仕事が明日あるみたいね。休める時はちゃんと休んでね?」
「…翼が言うって事は大変そうね?結花さん、皆と頑張るから!」
翼と結花が土居さんと三瀬さんに言う。
「うん、今日も家まで空間繋げてくれてありがとう」
「またねー!」
四人を見送ると結花は幻魔を石に戻して天渡と雷黄を連れて六人で大学の前に移動した。
「…今日は。って言うか金土日は勇吹はアルバイト忙しいんでしょ?あんまり熱入れすぎないようにね?今日はありがとう」
「…おぅ。じゃあ、また明日な?」
勇吹はそのまま姿を隠して走って行った。
「…結花が勇吹の事を心配するの、珍しいね?」
「えー?へへっ?」
結花は笑ってごまかしていた。
「…じゃあ、私は帰るから、また明日ね?」
「うん。また明日ねー!」
翼も少し機嫌良さそうに帰った。
「…今日は…バスで帰るの?」
「そう。今からバスのおじさん来るから。たまには天渡と雷黄と四人で。明日の事を教えるの」
結花は機嫌良さそうに言った。
「…なんで結花や翼は機嫌が良いの?」
「…結花が火爪さんから『ずっと友達だ』って言われていたからそれを返して言ったんだ」
雷黄が護に言った。
「…護も大切な友達だから。…って、私の口から言った方が良いでしょ?」
「…うん」
護は少し照れながら言った。
バスが来ると運転手の叔父さんが結花達を見て手を振る。
結花達が乗ると前の方が空いているので移動した。
「お嬢さん、珍しいね?帰りに乗るなんて」
「明日はちょっと大雪が降るみたい。15時から30分。雪の精霊ね。道路の凍結は朱雀に溶かさせて通れるようにするけど、人間に化けた怪異が出るから退治します。たぶんバスに避難する人が出ると思うのでお願いしますね」
「あっ、怪我人が出ないように俺達が手配しますから」
結花と雷黄がバスの叔父さんに言う。
「…ふーっ、そうか。じゃあ、よろしくね」
結花は自宅前のバス停で護に別れの挨拶をして降りると三人で帰り道を歩いた。
結花が車に轢かれた所はまだ傷が残っていた。
「…あの時は天渡の石がなかったけど、結花が車に轢かれたのは俺も知っている。冥界に魂が行って階段を降りていくのが」
「…あの時は私一人だけだった。ダメだと思っていても降りていくの」
「…結花は俺と雷黄が守るよ」
天渡と雷黄が結花を抱きしめた。
家に着くと久しぶりに玄関の鍵を開けた。
「…ただいま」
「お帰りなさい。あら?天渡さんと雷黄さんも一緒なの?」
「はい、今日は結花がバスで帰ったので一緒に帰りました」
天渡が母親に説明した。
「…お風呂沸いてる?私は入ってくるから、天渡と雷黄はお母さんに明日の話を説明してくれる?明日はお父さんの会社の周辺に氷の精霊が出るみたい。市村さんの時より寒くなりそう、後は怪異が人型が多いみたい。だから味方の怪異何人か作る!」
「…そんな事出来るの?」
「あっ!俺達が説明します!結花はお風呂入って来て!」
「オッケー!ヨロピク!」
結花はお風呂に浸かりに行った。
結花は浴槽の湯に浸かりながら過去の勇吹の記録を辿った。
勇吹や護が翼の恋人になったので旅行に行った時の勇吹が映る。
アルバイトの後に以前四人で撮影した写真を見て勇吹は複雑な気持ちになっていた。
「…結花とは恋人は無理だけど大切。~って!無理かあっ!今じゃないよなぁっ!」
どうしたらいいか分からず頭を掻いていた。
「…もう少し、優しくしてあげないとなぁっ。勇吹に。護だって同じかな…」
結花は腕を伸ばしながら言った。
結花がお風呂から上がって台所に行くと空の味噌汁の茶碗が天渡と雷黄の前に置かれていた。
「結花、先にお母さんからおにぎりと味噌汁と頂いたよ」
「俺はポークステーキ!美味しかったよ!」
雷黄とコウが嬉しそうに言った。
「今日は白虎のクウ。ビャクだとなんだかそのまますぎって思ったんだよね?」
結花はクウを幻魔の石から出した。
頭に寅の耳を持つ白い髪の男が出てきてゆっくり頭を下げた。
「…我が主よ…」
「あっ!待って!あるじ禁止!結花さん!幸恵さんでお願い!」
「はい、今日は結花さん達の命を狙ってすみませんでした」
「…人をむやみに殺したら捕まるからダメですよ?」
幸恵がクウに言うと首を縦にコクコクと動かした。
やはり大きなワンコみたいだった。
「…ご飯冷めちゃうから一緒に食べようか?」
結花がクウの椅子に座らせた。
「コウ、フォークの使い方をクウに教えてあげて?」
「はーい!」
コウはクウの横に来た。
「…さてと、明日の事はお母さん、聞いた?」
「明日はお父さんの会社の近くに雪の精霊が現れるのね。お父さんに言っておくから」
「後、明日はクウをお願いね?」
結花はクウの写真を撮った。
ポークステーキをワイルドに噛みつくクウの写真が撮れた。
「結花、皆にその写真送る?後六木さんにメール送っておくか?」
「お願いね」
「…六木さん?」
「バスの中で一緒になる人がいるから、まあ念の為ね。お父さんのライバル会社だから極秘で」
「あぁ、そういう事ね。新目さんの会社の人ね」
結花と幸恵の話にコウは興味を持っていた。
「…結花のお父さんと新目さんは昔幸恵さんにプロポーズしたライバル同士なんだ」
「…結花、雷黄さんに話したの?」
「話してないけど、雷黄は私が生まれた時から一緒だったから。私のオーラから生まれた鬼だから」
「幸恵さんが妊娠している時もベタベタしてきて嫌だったんだよ」
「それは…迷惑ですね?」
コウが言うとクウもコクコクと頭を動かす。ポークステーキがお気に入りのようだった。
「雑誌の服は落ち着いた感じなのにね?」
「結花のお父さんは逆だったみたいだ」
「まあ、やんちゃな所があるけどね?」
結花は食べ終わるとコウを幻魔の石に戻した。
「ごちそうさま。クウ、明日はお母さんにいろいろ教えてもらってね?」
「ゴ、ゴチソウサマ?はい」
「ふふ、美味しくいただきましたって意味よ、ごちそうさまっていうの」
結花が部屋に戻ろうとすると父親が帰って来た。
「ただいまー」
「おかえりなさい、お父さん。…明日さぁ?お父さんの会社の周りに氷の精霊が出るの。道路とか氷の結晶とか出来るから」
「ははっ!今9月で暑いからいいじゃないか!」
「…会社の中も気温0度近くになるの。分かる?」
「…やばいな?どうにかなるか?」
「すぐに倒せないから。会社の倉庫に上着あるはずだから用意させて、鍵は濱海さんが持ってる」
「…分かった」
結花は父親に伝えると二階に上がって行った。
台所を見ると幸恵に獣の耳を持ったクウに目がいった。
「クールガーイ!」
そういうと幸恵は賢一を指差す。
「クールマーン!先にお風呂に入るでしょ?」
「あぁ。今日は?」
「白虎のクウさんよ」
「そうか。よろしくな!」
そういうと賢一は風呂場に向かった。
クウは驚いていた。
「…クールガイはカッコいい青年でクールマンはカッコいい男性よ。結花のお父さんの賢一。男性雑誌の担当だからあなたたちをモデルに狙ってるのよ」
「…そうなんですか?モデルってなんだろう?」
「後で教えてあげる」
幸恵はクウに言った。
「…私さあ、お父さんと幻魔の皆がどんな感じか気になっていたけど、こういう事ね?」
「完全にハンティングの目だな。皆身長が高いからな」
結花と天渡が言った。
「…結花は俺や天渡はモデルに出したくないだろ?」
「当たり!…大体、今日の喜田さん見た?途中から幻魔化したコクの映像中心になってたんだよ?」
(…まあ、悪くなかったけどな?)
コクが石の中から言った。
「他の幻魔達も結花のお父さんの雑誌を見せてもらったりしているみたいだ」
「あー。それでいろんなネックレスしてるのね?」
天渡が結花に言った。ただ、結花と一緒の時はしていなかった。
「…結花と抱きあう時はネックレスが邪魔になるからな?」
「…うん」
結花は雷黄に抱きつき、後ろから天渡が抱いた。
結花のアイフォンにはクウのご飯を食べる写真や六木さんからの返事のメールが来ていたが、いつも通り結花は寝落ちしてしまっていた。
「…今日はたくさん学生がいたから疲れたんだろうな?」
「…いろいろ火爪さんや五十嵐さんの事も気にしていたからな?」
結花が眠っている間に皆がいろんな気持ちでその日の思い出の写真を見ながら夜を過ごしていた。
今回は新たに六木さんの上司が新目さんになりました。
またイメージソングは作りたい所。
次回は来月になりそうです。
来月もよろしくお願いします。