幻魔達の華 第七章 怪しい霧の中
お久しぶりです。
忙しくて年が明けました。
いろいろ投稿が長くなるといろんな話がよぎりました。
誤字、脱字があったらすみません。
木曜日の朝、いつも通り結花は目を覚ます。
目の前には甘い香りの天渡の体があった。
「おはよう、結花。…って、俺の体の匂いが好きなのか?」
「…おはよう。いや、天渡の体の匂いだなーって。なんか天渡がいるんだなって感じるからさ。…まあ、雷黄もだけどさ。」
結花はゆっくり体を起こすと後ろでは結花を見ると腕を広げる雷黄がいた。
「おいで、結花。」
「…んっ。雷黄もちょっと普通の男の子の匂いと違うんだよね。勇吹はちょっと鉄っぽくて、護はプラスチックっぽいんだよね。今日の雷黄は金木犀っぽい。いつも違う感じだけど、『…あっ、雷黄の香り』って思う。」
「結花は俺の匂い、好き?」
「…うん。」
「…へへっ!」
雷黄は結花から好きと言われて嬉しそうにしていた。
「…そろそろ朝ご飯食べに行かないと」
「分かった。また後でな?」
雷黄と天渡は結花の頭を撫でると結花の体の中に入った。
結花が階段を降りて洗面所で顔を洗って台所に行くとコクとセイが先に朝御飯のパンとカレーを食べていた。
『おはようございます!結花さん!』
「おはよう。セイはスプーンの使い方、少しは良くなった?コクはまだ分からない事があると思うから、気を付けてね。」
「はい!」
コクとセイは朝御飯も食べた影響か元気だった。
結花が朝御飯を食べていると昨日の土居さんの母親の件を思い出して母親の顔を見た。
「…?どうかしたの?」
「いや、昨日市村さんが土居さんのお母さんの腰痛治しに行ったから。お母さんは大丈夫かなって見てた。」
「私は大丈夫よ?リョクさんやセキさんが癒しの波動出してくれたから?」
母親の言葉に結花は驚いた。
「…何それ?何か悪い所があったの?」
「まあ、冷え症があったりはしたけど。ちょっと疲労があったけど、『邪気を食べたい』って言われてね。ビックリしたわ。負の力を吸収するのよ。幻魔は。」
「…っ!それで皆元気なの!?」
結花が驚いているとコクとセイは口を開いた。
「結花さんのお父さんも邪気が溜まっていたから食べました。」
「あまり邪気がなかった。きっとリョクやセキが食べたかも。でも、お母さんのカレーも美味しいです。」
「まあ、嬉しい。お昼御飯は楽しみにしていてね。」
三人の会話を聞くと結花はプッと笑う。
「…お父さんが元気だといろいろ仕事を押し付けられそうね?ご馳走様でした。」
結花は朝食を食べ終わると食器を流し台に持って行き、出かける準備をした。
「行ってきまーす!」
「行ってらっしゃい。気を付けてね。」
結花の母親とコクとセイが玄関で結花を見送った。
(…幻魔が増えたから家の中が明るくなった気がする)
(まあ、まだ人間社会が分からない幻魔もいるけどな)
(そのうち慣れるだろ)
結花が思っていると天渡と雷黄が言った。
バスが来て乗ると川井さんと目が合う。近くにはOLのお姉さんもいた。
「おはよう、中村さん」
「おはよう、川井さん。今日から学校?」
「そう!休みたかった!」
「まあ、勉強遅れたら急ピッチで教えだすから良し悪しよ。…護、おはよう。」
「おはよう、結花」
結花は護に挨拶すると横に座った。
「今日は何かあるの?」
OLのお姉さんが結花に聞いた。
「今日は南側のデパート周辺で濃霧かなぁ。あんまり良くないものだと思うけど、広い範囲ではないと思う。」
結花が言うとOLのお姉さんの表情が曇る。
「…それって南町二丁目?」
「私は南町一丁目。」
OLのお姉さんと川井さんが言った。
「…え?二人はあそこから?」
「そう。私はデパートの西側」
「私は東側のマンション」
川井さんとお姉さんが言うと護は笑顔で口を開いた。
「…妖怪はむやみに建物の中に入らないから大丈夫ですよ?」
「…それならいいわ。うちに猫飼ってるから心配になった」
「私はお母さんが心配だったから。」
お姉さんと川井さんに言うと大学前に着いたので結花と護は降りた。
バスを降りると翼がいた。が、やはり機嫌が悪そうだった。
「おはよう、翼。…何か機嫌悪くない?」
「…うん。…って言うか、護。」
それを言うと護が慌てだす。
結花の中の天渡が結花に語りだす。
(結花。光の妖怪は透明なゴーストタイプもいるんだ)
「ちょっ!建物の中に入るじゃん!」
「…っ!だって!また結花がこきつかわれそうで嫌だったんだよ!」
「…まあ、いいわ。結花、今回はちょっと特殊だから。まあ大学に行ったら小林さん達と一緒に話すから」
そう言って翼は歩きだした。
「…まあ、護の気持ちは分かるけど。翼が怒るって事は言った方が良かったんじゃない?」
「…だって…」
護は拗ねた子供みたいになっていた。
「…たぶん川井さんに言った方が良かった?お父さんかお母さんが家にいるんじゃない?」
「…お母さんは分かるけど、お父さん?」
護が言うと翼が振り返った。
「…川井さんのお父さん、今日はお休みよ。休みが三週間に少しずつずれるみたい」
「当たったね。まあいいや、信じない可能性もありそうだし、知った所で倒せないから。出掛けたりはしたかも」
結花はよく分からない踊りもどきを踊り、護は落ち込んでいた。
「…朝から元気ね?中村さん。五十嵐さんは落ち込んでいるけど」
結花が振り返ると三瀬さんがいた。
「あっ、三瀬さん、おはよう。朝バスで高校生にあったんだけどさ、護が『妖怪は建物に入らないよ』って言ったけど、入るんだって?」
「えー?やばくない?」
「…だって、あの子嫌い」
護が正直に言って結花と三瀬さんは噴き出す。
「ブッ!そんなに悪い子なの?」
「人使いが荒い!かな?」
「あー。なら五十嵐さんの気持ちは分かる。私は苦手」
「うー。」
「もー。元気だしなよ」
結花が護の背中を擦りながら言う。
「…。鬼っぽい感じがしないね?五十嵐さん」
「まあ、変身するけど人間だから。私の天渡と雷黄は違うけど。…市村さんも出会った鬼は試練与えて属性の石くれるだけで違ったけど」
「…聞いていい?市村さんは何が違ったの?」
「…翼だけ、前世で器が亡くなった原因が闇の九火の狐だったの。倒して神通力手に入れて空間移動とか出来る。私は特殊。幻魔を倒したら自分の幻魔に出来るの。翼の闇の九火送ったり、後二人前世で亡くなった原因の一つが魔女の存在。…他に二人、って言うか複雑なんだけど翼を含めて三人、そっくりの人が亡くなる夢を見ているの。魂は別。例えば翼なら前世で椿さん。姿は翼だけど魂は違うの。同じ感じで隣の県が現在は雫さん、過去が菫さん。私の従妹が双葉、過去が葉月さん」
「…中村さんは?」
「無い。だから謎!だけど幻魔を仲間に出来るの。…頬に米粒つけたり、ステーキ素手で取りかけたりするけどさ」
結花の石を入れる袋が光出す。取り出すと赤色の石が光る。
「…お前だぁ!って、ばれてるよ」
結花が言うと慌てて光を失う。
「プッ!…赤だから…朱雀さん?」
「せいかーい!…そうそう、幻魔って邪気を食べるんだって?」
結花が赤色の石を出すと三瀬さんは少し身が軽くなる気がした。
「…すごい。たぶん効果あったかも」
「…不思議だよね。幻魔が人間の邪気食べるって。普通は邪気を撒いて体調悪くしたりするんだ。妖怪もそんなタイプがいる」
護が三瀬さんに説明をした。…ちょっとは機嫌良くなった?
「やっぱり名前つけたから?…さてと、小林さん達の前で今日の説明するって翼が言っていたかな?なんかいつもと違うみたい」
「いつもはどんな感じなの?」
「…幻魔が奥にいる。分かった!幻魔が常に移動してるんだ!」
結花達が大学の教室に着くと翼の周りに小林さん、土居さん、志波さんがいた。
「…結花は三瀬さんに聞かれて分かったみたいね。今日は南町にドーム型に光の精霊が怪異の場を作るの。この中で常に精霊と怪異が発生するの」
「…その中にゴーストタイプがいるのね?」
結花が難しい顔をして言った。
「ゴーストタイプはルミナス。」
「…ルミナスは発光って意味ですよね?ウィルオウィスプみたいなものですか?」
志波さんが言うと翼は教室の電球を指差した。
「…まさか、発光って電球?」
「そうよ、土居さん。もし濃霧で暗くなったら電気をつけるでしょ?電球の光に擬態して生命力を吸う怪異よ」
「最悪じゃん。他は何?」
「透明な人型タイプのインビジブルとゴーストタイプのオボノヤスね。インビジブルは透明な人型タイプの怪異よ。ただし、霧があるから動きが分かるし、気配も感じる。厄介なのはオボノヤスね。これも透明な怪異で人間に霧を吹き掛けて脳を麻痺させるの。結界を張ったら分かるから見かけたら必ず倒して。コイツを野放しにしたら人を車の前に飛び出させて死人が出るから」
「これは…大変だわ。…市村さん達で大丈夫?」
「一応鬼の主が手助けに来てくれるみたいだから。ただ、敵も広い範囲に出るから。結花は光の精霊を集中して狙って。光の精霊を濃霧のドームの外に出したら濃霧が消えるからそれまでが肝心ね」
「なら、濃霧発生前に即幻魔化しようかな」
結花が言うと先生が来るので皆が席に座るが、こちらを見る二人の男性に目が合う。
結花はわざと手を振ると外方を向いた。
(あの二人、やらかす気でしょ?)
(貴田隆成と松江克也、二人は南町一丁目に住んでいるみたいだぞ)
雷黄が結花に反応して話す。
(フン、わざと怪異に手を出すなら助けんぞ)
(まあ、厄介な事をするなら翼が注意するか、暗示かけるでしょ?まあ私なら…)
(痛い目に合わせる、か?まあ、死なない程度にな?)
結花が天渡と心の中で会話して少し笑う。
「…結花、悪い事考えてる?」
「…うん。まあ、護でも悪い事考えると思う内容よ。蜂の巣をつつく人がいるから」
結花が言うと護の表情が険しくなった。
「んー!授業受けますかね」
結花は護の背中をポンポンと叩いた。
一通り授業を受けて昼になり食堂で皆で昼御飯を食べた。
「…今日は分かりにくい怪異ばかり出るのね?」
三瀬さんが言うと翼が結花の方を見た。
(一応、妖怪は俺達も出せるけどな。市村さん、予知で知ったな?)
「…マジ?天渡、ルミナス出せるの?」
結花の発言で三瀬さん達がこちらを見た。
「…結花?出すの?」
「…あの奥、人いないじゃん?…やっちゃうよ?」
三瀬さん達が動画を向けると電球が点滅して怪しい光が出るのが分かる。
「…地味。でも、怪異でヤバいよって言われたら分かるかも。…じゃあ、インビジブル、土居さんのコップ動かして」
結花が言うと土居さんのコップが浮かび出す。
「…ヤバいわ。これは…。土居さんにコップ渡して、手に指を当てて。」
土居さんが片手を出すとコップが渡された。
「…これは、女性かも?爪が長い」
「正解です!…じゃあ、オボノヤス」
結花が言うとか微かに緑色の透明な妖怪が現れた。
「…微かに分かるけど、濃霧だと分からないかも」
「ねー!」
結花が言うと足元に何かを感じた。見ると雷獣がいた。
「あっ、懐かしい。私の雷の試練の時に見た雷獣ね」
翼が言った。
「わー!ケモい!…これはもしかして他の幻魔を使えば妖怪や怪異を使える?今は木、水火、土、月、闇、光、雷よ」
「八個。多いですね」
結花は唐揚げを一個雷獣に渡すとムシャムシャと食べた。
志波さんもプチトマトを雷獣に差し出すと食べた。
「獣系はハッキリ分かるね。」
「まあね。…ここだけの話だけど、私達以外は雷獣の姿を分からなくしてるから。ほら、近くに貴田さんと松江さんがいるでしょ?二人共南町に住んでいるから怪異を撮影する気じゃないかな?」
「…透明な妖怪を?結構無謀ですね?」
志波さんが言う中で翼が球体を出した。
「…うっ!苦しい!」
中では苦しむ二人が映る。
「…あーあ。」
「まあ、早めに助けるけど知らないわよ?わざと家中の電気つけるみたい。明日ぐったりするから。」
「…それは。まあ男の子は試したくなるのかな?ただ、これだけ負担かかるなら私はやらないかな。」
小林さんと翼が言った。
「…さてと。片付けて行こっか?」
結花が言うと六人は食器を片付けた。
それから午後の授業を終わらせて結花達は大学を出た。
またいつものように勇吹がいた。
「勇吹。ヤッホー!」
「あっ。結花、翼、護。お疲れ様」
「じゃあ、行こうか?…小林さん達も来るんでしょ?小林さんのお姉さんが文具店で、志波さんのお母さんがスーパーマーケットで働いていて気になるんでしょ?」
翼が小林さん達に言う。
「…やっぱり、ばれてたか。市村さんには。…いいの?行って?」
「一応、デパートは善鬼の長が結界張るから建物の周辺は大丈夫よ。…まあ、かなり広範囲に結界を張るからデパートの上で待機するみたいだけどね。…それに私の空間移動の力を使えば行き帰り楽でしょ?」
翼が小林さんと志波さんを見て言った。
「…お願いします。」
「じゃあ、決まりね。…丁度貴田君と松江君が来たし、少し脅かしてあげようか?」
志波さんに翼が言うと空間を開いてデパートの二階と繋げた。
「…おい。あいつら、バスに乗るのかな?」
松江さんが言って美術大学の横に行く結花達の後ろを追いかけると結花達はデパートの二階に立っている姿があった。
「…二人とも、女性の後ろを追いかけたら嫌われるわよ?」
翼が言って苦笑いしながら手を振ると結花達も手を振る。
「おい!カメラ!カメラ!」
貴田さんが慌てて言うが空間はあっと言う間に閉じられた。
「…っ!何だよっ!あれ!全員消えたぞ!」
「…っ!わかんねぇよっ!くそっ!使えない電話だな!カメラ開くの遅いんだよっ!」
松江さんが空間があった場所を腕を振って確認し、貴田さんが頭を掻きながら悔しそうに言った。
その頃、翼達は空間を閉じたがマジックミラーのように翼達の方から見えていた。
その姿を三瀬さんはちゃっかり動画で撮影していた。
「むっっちゃくちゃ悔しそうにしてるんだけど!?貴田さん!?頭掻きすぎでしょ?ハゲるよ?」
結花が笑いながら言った。
「…良かったの?市村さん。二人ともに空間移動を見せて。」
「いいのよ。あの二人は単純だから。暫く慌てさせてもいい。私、妖怪みたいなものだから悪戯が好きなの」
土居さんに翼は少し笑って言った。
「さてと、まだ時間ある?私、ちょっと天津さん達の惣菜やおはぎ買いに行って来たい」
「まだ30分は大丈夫。あんまり大勢でスーパーの中回るのも悪いからここで待ってる」
翼が言うと結花は天渡と雷黄を出して一階に行った。
七人で二階の休憩所に行くと髪が緑色の中年男性がいた。
片腕には謎の南国の花のような絵が描かれていた。
「…失礼かもしれないけど、すごい目立つ人ね
?」
土居さんが言うと護は少し戸惑った表情をした。
「…知っている人かも。緑色なら木の鬼だ。」
それを聞くと土居さん達は驚いた。
「…ここは自然が少ないから苦手だな。」
木鬼は少し不機嫌だった。
「お久しぶりです。…他の鬼だとダメだったんですか?雷鬼でも良さそうな気がしましたけど?」
「…まず、雷鬼は雷雲を呼ぶからな。水鬼は女性が好きだから却下だ。風鬼はイタズラ好き。氷鬼は暑さが苦手。火鬼や土鬼は人間嫌いときた。月鬼は病院だ。…闇鬼がいたら良かったんだがな。」
その言葉に勇吹と護が少し驚いた。
「…闇鬼?やっぱりいたのか?もしかして、冥界?」
「…違う。…聞きたいか?」
「…聞きたいです。」
三瀬さんが思わず言った。
丁度結花が帰ってきた。
「ただいまー!…って!木鬼さんだよねっ!好きなのは水!」
結花が天然水を木鬼に差し出した。
「すまないな。…じゃあ、話すか。」
10人が木鬼の回りに座った。
「…俺は知らなかったんだが、昔強い力を持った闇の鬼と今の氷鬼とは別の氷の鬼が天津様の元に力を貸しに来た。…本気を出せば瞳を黒くする鬼。だが、決して邪な心にならなかった。」
「…私の天渡や雷黄みたいに幻魔の力を持っていた?」
「…わからぬ。が、悪鬼とは違うのだ。そして、お前達に逢う半年前に知ったのだ。二人は本来は我々善鬼と逢わない存在だ。」
「…逢わない?逢ってるのに?」
小林さんが不思議そうに言った。
「…私が大体分かるから、教える。闇鬼ともう一人の氷鬼は未来が変わったのよ。本来は天津さんに逢わず過去に二人の主人の男の子を殺されたショックで鬼の石になって現在に甦る世界があったの。」
それを聞くと結花が理解した。
「…もしかして!翼達みたいに器だけ一緒で魂が違う男の子が過去を変えたのね!」
結花が言うと翼が頷いた。
「…そんな事が可能なんですか?」
志波さんが聞いた。
「その少年は妖怪から集めた10個の属性の石で過去を変えた。…だが、それは闇鬼と氷鬼との思い出が失う事だ。ショックで悲しむ少年の姿を天津様が闇鬼と氷鬼に見せて、二人は少年を守る鬼になった。」
「…その男の子は西側の遠くの県に住んでいるみたい。…流石に余程じゃないと来ないと思うけど。」
「…まあ、仕方ないな。天津様が全てを見せてしまったからな。…本当に守るべき人間が今の時代にいた。そして、鬼を守る人間がな。」
木鬼が言うと窓辺に何かもやが空から降るのが見えた。
「…来たわね。丁度ここが中心ね。私達は南町一丁目を回る。天津さんがこの上にいて、一丁目に氷鬼、風鬼、二丁目に水鬼、雷鬼、土鬼、火鬼がいるから」
「オッケー!あっ!鬼の皆の惣菜や和菓子買ったから木鬼さんに渡しておく!終わったらまた戻るから小林さん達はここで待ってて!」
「分かった。気をつけてね。」
結花が言うと結花達は白い光、翼達は赤い光に包まれて消えた。
「…本当、中村さんと市村さんって凄いよね?」
「…少し緊張するけど、落ち着いてる。」
土居さんが言うと木鬼が窓に向かって勢いよく指を向けた。
「…ヒィアアアアアッ」
微かに女性の声が聞こえた。
「…うむ。天津様が結界を張っているが、外は危険だな?」
「…もういるんですか?恐らくインビジブルですよね?」
志波さんが言い、四人は外を見た。
遠くではいくつか光が見える。
「…近くの赤い光と橙色の光は火鬼と土鬼だ。遠くの青色の光と水色の光と黄色の光と桃色の光が水、氷、雷、風で…。あぁ、市村さんはむちゃくちゃしてるな?巨大な狐のオーラを出している。」
その頃、家で無理矢理電気をつけた貴田さんと松江さんは両親が仕事でいない喜多さんの家でグッタリしていた。
「…もうっ。何で電球の怪異に無理するのよ。…死ぬわよ?」
「…いや、助けて、市村さん。」
貴田さんがそう言って震えながら携帯を翼に向けた。
「…あれ?映らない?」
「だって、私の映像モザイク無しでネットに載せる気でしょ?流石に映らないようにするわよ?」
翼はそう言って赤色の目で尻尾を振りながら言った。
「…まったく、そんな悪ふざけ出来るなら大丈夫だな?」
護は鬼の姿で目を赤くしていた。
「…五十嵐も妖怪かよ。」
「鬼だよ。だから、機嫌が悪いと目が赤くなるんだ。」
そこに更に機嫌の悪い勇吹が現れた。
「おい。俺達をこれ以上怒らせたらぶっ飛ばすぞ」
「おー。怖い、怖い。でも、市村さんはそんな酷い事しないよね?」
貴田さんと松江さんはヘラヘラして言った。
「うん?明日そのグッタリした状態で大学来なさいね?命令だから?」
翼は笑って言った。
「…え?いや、休むよ?」
「無理無理。休みたくても『大丈夫!』って言って来たくなるの。私が命令するから。」
それを聞くと貴田さんと松江さんは顔を合わせた。
「…お前らな?翼を怒らせたら怖いんだぞ?」
「まあ、自業自得だな。翼は悪さをする人は許さないからな。大掛さんに屈しなかった事、忘れたのか?」
貴田さんと松江さんが後悔をしていたが遅かった。
「…ちなみに、暗示かけたのは私だけど考えたのは中村さんだから。中村さんも怒らせたらやられるから。中村さんの鬼がルミナス使えるから訳も分からずやられる。」
そう言うと翼達はまた怪異退治に行った。
結花はその様子を天渡から見せて貰った。
「…結花さん達を困らせるなんて悪い人間ですね?」
リョク、レイ、セキ、ガンが呆れて言った。
「こういうの!良くないでーす!」
結花は手を上げて言った。
結花は四人を幻魔にしていた。
リョクは体から蔦を出す姿、セイは鱗の肌が見える姿、セキは体から紫色のオーラを出していた。
「…さてと、ジョークはおしまい。皆、光の精霊、倒すよ!」
結花の前には光の精霊がいた。
光で出来た人型の影は首を傾げると腕を伸ばした。
セキの目が大きく開くと血管が浮かんで衝撃波が出た。
それに続いて雷黄、リョク、セイ、ガンも表情が真剣になった。
「…結花、命令してくれ。この空間を壊して光の精霊を倒せと。」
天渡が言った。
「命令する!この空間を壊して力を弱めた精霊を倒しなさい!」
それを聞くと天渡の背中から巨大な目が開いた。
遠くから見ていた小林さん達は衝撃波がやって来るのが見えた。
「…ちょっと!何あれ!」
思わず四人は腕で目を隠した。
それは周りの人も驚いていた。
暫くして子供の声が聞こえた。
「…お母さん、外が綺麗だよ?」
小林さんが腕をあげると外はオーロラのような虹色の光のカーテンのようにいくつもあった。
「…ヤバい。怪異よりこっちの方が良いじゃん?」
四人はその光景を動画で撮ると遠くで白色、黄色、緑色、青色、赤色、橙色の光が空を登っていった。
幻魔達が光の精霊に拳を振っていた。
「…ロロロロロロッ…」
光の精霊は微かに声をあげていた。
ボロボロになりながら結花に目を向けると手を向けて光線を放った。
だが、結花も両手を向けた。
「大人しく散りなさい!」
光の速度で結花に向かう光線だったが、結花が両手から虹色のリングを出して触れると光線の色は虹色に輝いていた。
光の精霊に虹色の光が当たると体が動かずに拘束されて虹色の光を浴びて体を破裂させた。
「ウォオオオオオッ!」
幻魔達は敵を倒した興奮で雄叫びをあげた。
そして、地上に降りると結花に甘えるように抱きついていた。
(もうっ。大きなワンコじゃん。)
結花は苦笑いしながら幻魔達の頭を撫でた。
結花が上空を見ると白色に光るものがあった。
「光の精霊、コウ!光の石になりなさい!」
結花が言うと真っ白な石が手元に来た。
「んーっ!終わった!…天渡、今日もこの後皆とちょっと寄り道して良い?」
「いいぞ?リョク、セキ、レン、ガンを連れて行きたいんだろ?良いか?お前達?」
「結花さんと一緒なら行きますよ」
ガンが結花に言い、他の三人も頷いた。
「なら、スーパーに戻るか」
天渡が空間を開いてスーパーに戻ると翼達は先に戻っていた。
「…終わったのか?」
「光の精霊、コウ。…って、木鬼さんの石や天津さんの石と違うよね?」
「…我らの鬼の石は弱いからな。天津様もここまで強くない。」
結花と木鬼が言う。すると小林さん達は緑色の石を出した。
「…四人共!嘘っ!木鬼さんから貰ったの!?」
「資格があるからって貰っちゃった。皆が行ってる間に使い方は大体分かった。私は物理攻撃型、ミッチーが防御、土居っちが回復で志波っちが魔法攻撃型」
「え?皆タイプ違う?私たぶん物理魔法両型」
「私は三瀬さんに近いかな?紫織さんが回復だから大学に土居さんがいるなら助かるわね。」
「…あっ、聞きました。病院に月鬼さんがいて、奥さんが回復型って。」
土居が言うと木鬼が服装を整えた。
「…さて、俺は一仕事終えたから帰らせて貰う。またな。」
「木鬼さん、お疲れ様。って言いたいけど、私達一階まで行くから途中まで一緒にね。」
結花が小林さん達をチラっと見ると勇吹がニイッと笑う。
「もう寄るお店に予約して来たから大丈夫だぞ?ハンバーグとパフェの店だろ?」
「…バレた?私、あそこのパフェ狙っていたから。」
全員で一階に行くと途中で木鬼と別れてハンバーグとパフェのお店に行く。
丁度幻魔が四人いるので小林さんはリョク、三瀬さんはセキ、土居さんはレン、志波さんはガンとペアで座った。
メニューは結花、天渡、雷黄は相変わらずパフェを頼んで他の11人はハンバーグとミニパフェを頼んでいた。
「…そういえば、中村さんはオーロラ、撮影しましたか?」
志波さんが聞いた。
「…え?何?それ?」
「結花は見えなかったから知らないのよ。光の精霊を倒したらこっち側はオーロラが低い位置で濃いのがいくつもあったの。」
翼がスマートフォンに撮影したオーロラを見せた。
小林さん達の分も幻魔達が見ていた。
「うっわー!皆むちゃくちゃ綺麗なオーロラ撮れてるじゃん!あっ!まさか!ネットも出回ってる!?」
「そうみたいだ。ほら?」
雷黄が指で空中に四角を書くと画面が映っていろんな写真が表示された。
それを見て林田さんは驚いた。
「雷黄ってそんな事も出来るのか?」
「あぁ。だから貴田と松江が悪い事企んでいるのがすぐ分かった。」
そこに料理が運ばれてきた。
「…ガン。一口はダメ、十字に切って食べなさいよ?」
「…は、はぁい。」
「あっ、私がします。」
志波さんがガンのハンバーグを切ってあげていた。
「…相性、良さそうね。結花、もしもの時用でしょ?」
「そうそう、四人は木の石を貰ったなら私の幻魔と交流したら使えるから。地震の時みたいになったら、手分けして対応出来たらいいなって思ったから」
それを聞くと小林さん達は幻魔と目を合わせて少し顔を赤くした。
それから皆が食べ終わると幻魔達が腕を差し出すので小林さん達は幻魔達と少しの間に腕を重ねて歩いて人が少ない場所で土居さんの使う駅と三瀬さんの家の近くに空間を開いた。
「じゃあ、また明日ね!」
「また明日。」
結花や幻魔達が小林さん達に手を振って言った。
「…結花、あれは四人共幻魔達に惚れてるぞ?」
「…良いんじゃない?だから木鬼さんは木の石を渡したんじゃないかな。…四人はどうなの?今は私と一緒だけど、小林さん達を守ったり、一緒になるの。」
結花がリョク達を見た。
「今は結花さんを守る。…けど、あの人を守っても良い」
リョクが言うと他の三人も頷いた。
「…まだ、人間社会で覚える事があるけど、有りじゃない?四人と仲良くなってきたから良いと思ってる」
結花は少し考えるような顔をしながら笑っていた。
「…今日は勇吹も、護も、翼もありがとう。また明日ね?」
幻魔達は石に戻ると結花と天渡と雷黄は結花の家に帰った。
「…結花は幻魔を自分を守るだけで終わらせたくないみたい。結花とリョクさん達は恋人じゃなくて主人と使い魔だから、いつか人間と結ばれるなら手離すつもり」
「…何だか、複雑だね。結花だからって感じだ」
「結花も大変だな」
護と勇吹が翼の顔を見ると少し難しそうにしていたので二人は翼の背中を撫でた。
翼も二人の腕を掴んだ。
「…ごめん、今日はちょっと二人と少しの間、家で過ごしたい」
「いいよ。甘えたい気分かな?」
「…そう」
「じゃあ、行こうか?」
翼は護と勇吹を連れて家に向かった。
「ただいま」
「お帰りなさい!結花さん!」
セイとコクが元気良く出てきたが、結花が少し元気がない気がした。
「…どうかしましたか?」
「…ん、ちょっといろいろ考えすぎちゃっただけ。お風呂入ってくる」
結花はお風呂に入って着替えると台所に行った。
「結花、お帰りなさい。今日はキノコの炊き込みご飯と白身魚のムニエルよ。幻魔の分も用意してるから」
「美味しかった!」
セイとコクが嬉しそうに言った。
結花はコウを出すと長い黒色の長髪に目が橙色の若い男性が現れた。
ただ、髪の裏側が橙色でビックリしていた。
「お呼びでしょうか?ご主人様」
「ご飯だから呼んだけど、ご主人様じゃなくて結花さんがいいけどさっ!」
結花の様子がおかしいので母親が心配した。
「…どうしたの?」
「いや!光と氷の精霊なのに髪の裏側が橙色だからさ!」
「…これは太陽の光が宿っているからですよ。氷の力は上乗せする位だから強くないです」
「あれだけ濃い濃霧だったからさ。…ご飯食べようか?」
結花は椅子に座って一口炊き込みご飯を食べた。
コウはスプーンを用意されていたが、どうしたらいいか分かっていなかった。
「…俺は人間の食べ物を食べなくても大丈夫なのですが…」
そう言うコウにコクとセイが近づく。
「これは結花さんのお母さんがお前の為に用意したんだぞ」
「お前はもう『道具』ではないんだ。人間と共に過ごしていろんな事を共感したりする。結花さんと一緒に『ご飯』を食べて、どう感じたか話したりするのだ」
「…わかりました。頂きます」
コウはスプーンで炊き込みご飯を一口食べた。
美味しかったのか少し笑っていた。
「嬉しかったら、笑って良いんだぞ?」
「…美味しかったです。」
コクに言われるとコウは嬉しそうにした。
「…美味しいね。コウ?もう自由に感情出して良いからね?」
「はい。」
ご飯を食べ終わるとふと明日の事を確認していない事に気がつく。
結花が球体を出して見ると結花が驚いていた。
「…結花?明日は?どうかしたの?」
「…明日、大学みたい。相手は…虎。白虎ね。風と土。明日はコウをお願いしようかな?」
結花は白色の石を母親に渡した。
「…分かった。気をつけなさいね」
「はーい。ごちそうさまでした。」
結花は部屋に戻っていった。
部屋に戻ると天渡と雷黄が現れた。
「お疲れ様、結花。今日は膝の上に頭を置きたい気分だろ?」
「…そう。ちょっとね、いつもより体を楽にしたい気分」
結花は天渡の膝に頭を置いた。天渡の掌を頬に当てたりした。
甘えるけど、控えめな気分だった。
天渡や雷黄は良いが、いつかは幻魔と別れる必要があると感じていた。
「…あの四人ならリョク達を渡しても良さそうだ。ただ、ちょっと寂しくなるって思っているんだろ?」
「…うん。でも、いけるなってタイミングが必要だと思う。黒澤さんが闇鬼さんを手離したのが良く分かった。寂しいけどさ、幸せにはなって欲しいな。」
結花は雷黄の膝に頭を置いた。同じように頬を触れて貰いながらやがて天渡や雷黄とキスをした。
「結花は今複雑な気持ちになっている。でも、まだ答えを出す必要はないからな?」
「…うん。ただ、今日は素直にベッタリ甘えたい気分じゃない。…雷黄は…甘えたかったらごめんね。って天渡も一緒だよね?」
「俺は大丈夫。結花がちょっと苦しいの、分かるよ」
「俺も。まあ、甘えたい時は甘えたいがな?」
あぁ、二人は分かってくれていると感じた。
「…ありがとう。私、皆が好き」
今日は気持ちがビターだ。
私らしくない。でも、そんな時もあるよね?
前書きでもありましたが、長く間が空くと幻魔の幸せの為に手離したりする場面が出るかと思いました。
今回の光の精霊コウはまだ出会ったばかりで自分は道具で感情を出す事を許されない等が浮かびました。
人ではないからと理不尽を押し付けられそうですね。
残酷と思いながら、そんな事をする人間がいるのが現在社会の問題点ですね。