幻魔達の華 第六章 不思議な彼女の秘密
今回は結花の大学の同級生が四人サブキャラクターとして追加です。
誤字、脱字があったらすみません。
水曜日の朝。
結花が目を覚ますと目の前には雷黄がいた。
相変わらず上半身は肌を出していて温かい体温が結花の顔を包んでいた。
「おはよう、結花。もうすぐ朝御飯を食べる時間だから起きよう?」
「…うん。」
結花が体を起こすと雷黄が結花と軽くキスをした。
「…結花。俺ともキスをしよう?」
天渡は結花の後ろから腕を伸ばしてきた。
天渡も肌を露出しており、温かさを感じた。
天渡も結花にキスをした。
「…二人共、体が温かいね。」
「結花をずっと抱いていたからな。」
「結花、触ってみる?」
雷黄が言い、結花は手を出すと二人はその手を自分の胸から下げて腹になぞらせた。
「…二人共、体つき良いよね?」
「あぁ。なるべく筋力を出すようになっている。」
「俺達は半分鬼で半分幻魔だからな。でも、結花を守る特別な鬼。」
雷黄と天渡が結花の頬に触れて言った。結花は二人を抱きよせた。
「…二人共、好き。」
「…あぁ、俺達も好き。」
「結花、愛しているよ。」
天渡と雷黄が優しく言った。結花が体を離すと結花の体の中に入った。
結花は階段を降りて台所に行くとセキが朝御飯を食べていた。
「おはよう!結花さん!」
「おはよう、セキ。今日はおにぎりと味噌汁なんだ。」
「おはよう、結花。セキさん、御飯と味噌汁が良いって言ったから今日はおにぎりにしたの。水の力を持つからお米の方が良いみたい。」
「食べ物に相性あるとは思ってた。…昨日のリョクもだけど、セキの体調良さそうね。」
なんだかセキの髪に艶がある気がした。
「…やっぱり少しずつ幻魔を家に置いて休ませたりした方が良いかな。…今日はゆっくり休んでね。セキ。」
「はい!」
結花は朝食を食べ終わると出かける準備をした。
「…じゃあ、行って来ます。」
「行ってらっしゃい、結花。」
玄関で母親とセキが結花を見送った。
結花はいつも通りバスに乗った。
「おはよう、結花。」
「おはよう、護。」
結花は護に挨拶をして席に着いた。
「今日は青龍のセキは留守番。お米が好きみたいだから朝御飯におにぎりと味噌汁飲んでいてさ。なんか体調良かった。」
「へぇ?幻魔はごはん食べたら体調良くなるんだ?」
「まあ、お母さん一人で買い物行かせたら大変だから良いかも。」
大学前に行くと結花は席を立った。
「おはよう、お嬢さん。」
「おはようございます。今日は特に怪異はないみたいです。昨日光っていた石、隕石みたいですよ。お仕事ご苦労様です。」
結花が言うとバスの運転手の顔色が変わった。まあ、怪異の隕石がバスの停留場にも落ちているだろう。たぶん往復して戻ったら拾うのだろう。
バスから降りると翼がいたが機嫌が少し悪い。
「おはよう、翼。…機嫌悪くない?」
「おはよう、結花。…電車、途中の踏み切りで止まって動かないから空間移動してきた。」
「災難だったね?まあ、移動手段あって良かったね?」
「…いや、それだけじゃなくてさ。同じ大学の人がいてさ。シェアでタクシーで行きましょうってしつこくて。暗示かけて一緒に来たの。疲れた。」
余程嫌だったのだろう。そんな翼の頭を護は撫でていた。
「じゃあ、行こうか?」
三人は大学の方に行った。
昼御飯の時間、三人でいつも通り御飯を食べた。
「今日は授業が終わって出口出たら結花だけ電車の中だから。電車の中も怪異がいるから気をつけて。電車が止まったら降りて、村があって奥に草原がある。そこに闇の魔人がいるから。地面に潜ってる巨人タイプよ。腕と上半身だけ出せるけど、ゴーストタイプで心臓の空間解放は出来ないから。」
「攻撃してくる時に狙う必要があるかな?厄介ね?」
「何か良い手はあるのかい?翼。」
「リョクさんの浄化の力で闇の魔人を表面に出せる。ただ、広い範囲を浄化するのに幻魔化させる必要がある。今日は四人幻魔化よ。」
「まあ、リョクは昨日元気になったから大丈夫かな?」
「闇の魔人戦は周囲に悪霊を呼ぶの。朱雀のレンさんの結界が必要だから。気をつけてね。」
「気をつけてね、って事はかなり警戒した方が良いって事ね。分かった。」
結花の表情は真剣だった。結花が食器を返却して護の顔を見るとまた機嫌が悪くなっていた。
(五十嵐さんってさ、結花が真剣な顔をしたら拗ねてるよな?)
(結花はやる時はやるって事なんだがな。どうも苦手らしい。不思議だな。市村さんは結構クール系だけどな?)
結花は護が食器を返却するのを確認すると顔を膨らませて「プーッ!」と言った。
護は驚いていたが、翼はプッと笑う。
「…中村さん、どうしたの?いきなり。」
小林さんが結花に言う。
近くで食べていた小林さんと土居さんと三瀬さんが結花を見ていた。
「…この前もだけどさぁ?私が真剣な顔をしたら五十嵐さん、機嫌悪くするの。だから悪ふざけしたくなった。」
「…え?何それ?」
「…もしかしてさ。中村さんの真面目な姿が嫌なんじゃない?」
小林さんはよく理解していなかったが、三瀬さんが言った。
「…えー。…変?」
「…ギャップ萌えの反対みたいな感じじゃない?クールで知的な人がいきなり自分のオタク知識熱く語りだしたら嫌みたいな?」
土居さんが言うがまだ結花には出来ていなかった。
「…うーん。…市村先生、答えはどうなのよ?」
結花が言うと護が慌てて翼を見た。
「五十嵐さん、ゆるふわな中村さんが好きなのよ。中村さんの真面目な姿は怖そうな女性に見えるみたい。」
「まぁ!市村さんもクール系なのに私は怖いざますか!?」
結花はふざけて言ったが、護はしょんぼりしていた。
「…うん。ちょっと怖い。…嫌い。」
ちょっと。怒られたワンコみたいになってない?
「…中村さん、五十嵐さんにフラれた?」
「いや、五十嵐さんは市村さんとつきあってるし、私は彼氏いるから。」
それを言うと翼は顔を赤くして、小林さん達は結花の顔を見た。
「中村さん、彼氏いるの?」
「い、いるよ!だから、五十嵐さんにフラれても気にしないから。」
それを聞くと護の口がへの字になった。
「…難しいよね。友達と恋人の境界線って。…護、今度は友達として嫌ってないのにって拗ねたでしょ?」
「…俺もプーッてなるよ。」
「プーッだっ!」
翼が言うと護は本気で拗ねているのに結花はまだ悪ふざけモードだ。
「…中村さん。10月の学園祭は彼氏来るの?」
「え?大丈夫だと思う。ついでに従妹とその友達も呼んじゃおうかな?」
三瀬さんに結花が言った。
「…結花、そこそこの数になるんじゃない?45人以上?」
「多い!そんなに呼ぶの!」
「え?いいんじゃない?丁度高校三年生の子多いから。」
翼が言った数に土居さんは驚いたが結花は気にしていなかった。
結花は少し考えた後に何か悪い顔をしていた。
「…あー。なんとなく分かる。結花、最近の皆既日食とか写真撮ってたから今日も企んでるでしょ?でも、きさらぎはぼやける写真ばかりになるから深入りしない方がいいわよ。」
「え?そうなの?残念!」
結花は残念そうに言った。
「…さて、俺達も食器戻そうか?」
「そうね。」
護と翼が食器を返却しに行った。
「…ねぇ?中村さん。…きさらぎ?って何?」
小林さんが結花に聞いた。
「え?異世界。今日私は迷い込むんだって。授業終わって出口出たら即きさらぎ行きの電車の中だって。まあ、普通の人なら信じないよね?」
「…もし、信じたら?」
土居さんが結花に聞いた。
「…そうね。非現実が良いものだけなら悪くないけど、悪いものだったら?たぶん、生き残れないかな。まあ、女の子だからとかじゃなくて、男の子でも無理よ。」
結花が笑って言った。
「…結花?行こうか?」
翼が結花に言った。
「…中村さんは、異世界のきさらぎに行って、助かる自信はあるの?」
三瀬さんが翼が近づく前に聞いた。
「…あるよ?私、一人だけど一人じゃないの。きっと信じないよ。…ん?普通じゃないと思ったら信じるしかないんだよね?私、助っ人が何人かいるから。」
結花はそう言うと食堂を出た。
「…変な会話。…ってミッチー、珍しいね。中村さんに食いつくように聞いて。」
小林さんが三瀬さんに言った。
「…前に、こっちで雪降ったの覚えてる?八月末の暑い時期に。」
「あったね。私も引っ掛かってた。あれも『非現実』でしょ。…中村さん、何か知ってるんじゃない?」
三瀬さんと土居さんが顔を合わせて言った。
小林さんがふと何かを思い出してアイフォンを出した。
「こばやん。どうかしたの?」
「…中村さん。確か旅行行った事あったでしょ?…あの時期、確か隣の県で雪降った異常気象、なかった?」
「…その後、また隣の県で雪降ったよね?…この前は地震、皆既日食…。」
「…これって『非現実』。何か中村さんと関わっているんじゃない?」
三人は顔を合わせた。
三人は昼御飯を食べ終わるといつもと違い、結花達の後ろに座った。
普通に午後の授業を終わらせると翼は振り向いて小林さん達を見た。
「…小林さん達も気になると思うから、今日の説明をするわ。今から後ろの出口を中村さんが通ったら消えるの。小林さん達はアイフォンの動画撮影するつもりだけど、まあSNSに結花の顔出しでやらないなら私は止めないから」
「えー。許しちゃうの?…結花はいいのか?」
「それならオッケー!興味あったから!」
翼の話に誠はあんまりよく思っていなかったが結花は逆に良いらしい。
「…質問。何で中村さんが消えるの?」
直球で小林さんが翼に聞いた。
「大体、怪異が中村さんの周りで起こっているって三人は推測していたけど、本当はこっちであった怪異は私、隣の県の怪異は中村さんが出逢った子、その後の怪異は中村さんの従妹の子の周囲で起きたの。今回は中村さん自身。まあ中村さんが悪いわけじゃなくて、中村さんの周りで怪異を引き起こす悪い魔女がいるの。…それに中村さんと私で抑えているの。今回は中村さんだけがきさらぎに飛ばす術が起こってる。」
「…むちゃくちゃじゃない。…で、中村さんは大丈夫なの?…っていうか、中村さんは何するの?」
三瀬さんが結花に聞いた。
「私?妖怪やっつけたりとか。悪い事をしている聖獣や精霊や魔人がいるの。魔人は今回で終わりかな。やっつけた後に私の幻魔っていう使い魔にするの。元々私は光と雷の鬼がいて、一緒にいろんな妖怪とか魔女の使い魔倒してる。えっとね、今日は青龍のセキはお母さんと一緒で木の精霊のリョク、朱雀のレン、玄武のガン、月の魔人のセイはここに幻魔の石があって、力を借りてる。後は光鬼の天渡と雷鬼の雷黄の力かな。」
「私も一応石を持っているけど、攻撃の術って苦手なの。まあ例えば木の力でバリア張ったりとか。こんな感じよ。」
翼は緑色の石でバリアを張ると小林さん達もだが、周りの数人も空気が変わるのを感じた。
「…確かに。…いや、よく分からないかもしれないけど。…で、中村さんが消えるって事で。」
三人はスマートフォンやアイフォンを出した。
「…一応、説明する。中村さんは今からきさらぎに行くから消えるけど、時間の概念がないから。向こうから戻って来たらこっちは時間が進んでないから。戻って来る時は大学の外のはず。後で合流ね。」
「はーい。じゃあ、行くね。」
結花は立ち上がって出口の方に向かった。周りの人も気にして見ていた。
丁度出口に志波さんが立っていた。
「あっ、志波さん。一緒に行こうか?」
志波さんは黙って頷くと目を合わせて結花と出口に向かって歩いた。
結花の横顔は出口に合わせて消えていった。
「…!いっ!…いません。」
志波さんが腕を伸ばして動かすと結花がいない事が分かった。
思わず三瀬さんはスマートフォンを落としてしまう。
周りの人も驚いて立ち止まっていた。
「…まあ、大学の入り口に中村さんがいるから、行く?」
翼が言うと小林の達は頷いた。
ガタンッガタンッ!ガタンッガタンッ!
電車の音が響いた。
結花は翼の言う通りに電車の中にいた。
天渡や雷黄は結花の中から現れた。
「とりあえず、逃げれないように異空間に閉じ込められているな。」
「翼の言う通りね。私達だけね。」
「…後で皆大学の前に来るのか?」
「まあ、良い。俺達が結花の恋人だと教えてやろう。」
天渡は笑みを浮かべて言った。
電車の中には影で出来た人型のものが結花を睨んだ。
天渡や雷黄も睨むと結花を守りながら衝撃波を出した。
「…オォオオオオッ。」
声を出しながら影は消えていった。
「フンッ!結花に敵意を向けるからだ!」
「…注意がいるな。俺達がいても結花を狙うらしい。」
「…厄介ね。」
結花はアイフォンを出して写真を撮るとよく分からない歪んだ写真が残った。
「…なんとか電車ってわかる程度。…プロパティの時間はバグってる。全部0。でも、上に表示される。」
結花は自分の写真を撮ろうとすると天渡が止めた。
「結花、この場で自分を写すと悪影響が出る。」
「…ごめん。気をつける。」
天渡は真剣な顔で言った後に笑顔を見せて結花を抱きしめた。
「ピーッ!ガガガッ!ピーッ!」
ノイズが電車内に入ると電車はスピードを緩めた。
「…着いたみたいだ。」
電車が止まって三人は降りた。
そこには平仮名できさらぎと駅名があるが一文字ずつ左右逆になっていた。
「…いいよ。結花。写真撮っても。」
結花が写真を撮ると三人は駅の出口に向かう。
「結花、レンを出せるようにしてくれ。外に出たら空から行こう」
天渡に言われて結花は赤色の石を用意した。
駅の出口はぼろぼろで改札口が無くそのまま出られた。
駅の出口も写真を撮って進むと空は真っ赤になっていた。
「…真っ赤ね。…って、住民ってあれ?」
結花はすぐにレンを出した。
朱雀の姿になったレンに結花を抱いた天渡と雷黄がレンの肩に左右乗って飛んだ。
結花はおそらく「村人」と呼ばれるものを写真に撮った。
頭からは人っぽいが頭は真っ黒で目玉がいくつかあった。
手には小型の斧を持っていた。
よく見たら他にも「村人」が包丁や槍など凶器を持っていた。
「…これは。抵抗するわ。村人皆凶器を持っているサイコパスじゃん。レンがいて良かった。」
「ピィイイイッ!」
レンが鳴き声を上げると何やら黒い鳥が飛んできた。
目玉が飛び出たカラスのようだった。
「…レン。あれって友達?」
「ち…違います!敵です!」
「…敵がさっきの鳴き声でやってきたらしい」
雷黄が軽く雷撃を放つとカラスは墜落した。
「…これでいいか。痺れさせた。」
「レン。お前は少し大人しくしていろ。」
「は…はい。」
レンは少し落ち込んでいた。
相変わらずヘタレっぽい。
結花は緑色の石を用意した。
「奥に草原が見えてきたね。ただ、空に黒いもやがあちこちあるからあれが悪霊かな?レン、そろそろ結界張って。」
レンの周りに炎の結界が張られると草原の広場から大きな腕が出てきた。
人差し指を真上に向けると黒いものが集まっていく。
「天渡、空間解放して魔人の攻撃の向きを変えて。雷黄は私と腕を攻撃して。」
「分かった。」
闇の魔人は指を朱雀の方に向けるとレーザーを放った。
天渡は空間を開けてレーザーを真上に放出させて、結花は闇の魔人の手首を光のリングで締め付けて、雷黄は雷を掌に溜めて放った。
闇の魔人の手はぼろぼろに崩れていった。
「リョク!出て!…皆、幻魔化するから!」
天渡はまた身体中に目玉を出した姿に、雷黄は体を青白くした姿になった。
レンは体から紫色の炎を出す朱雀の姿に、
リョクは髪や体の一部や目が赤色になった。
「…レンやリョクの幻魔化って前に戦った時と違うんだ。…とりあえず、腕が…何本あるんだろ?二本かと思ったけど、魔人ならいくつかあるでしょ?リョク、浄化の力で闇の魔人を表面に出して。」
リョクが両手に出すと闇の魔人の体が見えてきた。
腕は六本ある。一本手首をぼろぼろにしたが、修復していた。
顔は紺色か濃い紫色の鬼の用な顔をしていた。
闇の魔人は手の指を五本こちらに向けると爪を伸ばしてきた。
また天渡が空間解放で闇の魔人の爪を伸ばした掌に繋げて突き刺すように誘導した。
天渡の力が強くなったのか、結花達の方も闇の魔人の掌が見えた。
結花は迷わず光の光線を放ち、雷黄も雷を放った。
「これでまた闇の魔人の掌を潰したけど、たぶんまた修復するから意味ないんだろうね。リョクと天渡で草原の表面の草に力を送って闇の魔人の上半身を切り取ろうか?私も雷黄と援護するから。」
「分かった。リョク、俺の力を送るから草原の表面に浄化の力を出せ。全部する必要はない。闇の魔人の上半身の周りだけだ。」
「あぁ!」
リョクが草原に出た闇の魔人の上半身を天渡の力と合わさった草の力で切りつけた。
「オォオオオオッ!」
闇の魔人の体は地面から切り離されようとしていた。
「雷黄、力を送るから雷の力を刀に乗せて刃を放って。魔人の体を切り離すよ。」
「良し!行くぞ!」
雷黄が刀を横に振ると雷の刃が飛んで闇の魔人を切り離した。
「…心臓、ないんだっけ。体を地面から離しただけじゃ倒せないかな。」
闇の魔人は体を切り離されると空中を飛び出した。
結花は思わず写真を撮った。
闇の魔人は器用に二本の手でホバリングのように飛んでいた。
口から何かを溜めると波動砲を放ってきた。
「天渡、魔人の頭の後ろと空間を繋いで波動砲を頭を下げさせて。」
天渡が空間を繋ぐと闇の魔人の波動砲は頭に当たって首を下げた。
「雷黄、あれで上から雷落とせるでしょ。レン、援護して。上から炎の槍を落として。終わったら天渡はまたリョクに力を送って地面から顔面を攻撃。」
結花に言われてレンが炎の槍を落としてそこに雷黄が雷を落とした。
闇の魔人がビクビクと体を痺れさせている所を天渡の光の力を持った草の光が闇の魔人の顔を貫いた。
闇の魔人は顔を失うと体がぼろぼろと崩れていった。
「いける?闇の魔人コク!闇の石になりなさい!」
結花が言うと黒色の石が掌の飛んできた。
「…結花、空間が壊れ出した。大学前に空間を開くぞ。」
赤色の空はヒビが入って空に登っていった。
「うわっ。ブラックホールみたいなのが空にある。レン!このまま天渡の開いた空間に入って!」
天渡の開いた空間を抜けると大学前に勇吹が立っていた。
「…結花!」
「ちょっ!勇吹!来たの!?」
結花が言うと勇吹は刀を出して飛び上がった。
よく見ると空間から悪霊が来ようとしていた。
勇吹は悪霊を刀で切りつけていた。
雷黄も空間に雷撃を放つと空間は閉じていった。
「…ごめーん!助かった!」
「いいけど。…終わったのか?」
「うん。あれは人多かったらまずかったかも。闇の魔人の上半身を切り離したら、腕から闇の力出しながらホバリングしたんだよ。」
結花が勇吹と話していると翼や小林さん達がやってきた。
「…結花。翼以外の人は誰なんだ?」
「え?同じ写真、映像科目の人。」
「…大丈夫か?しかもまだ幻魔化してるだろ?」
「まあ、天渡や雷黄嫌われるの嫌だから戻しますか。」
結花は四人の幻魔化を戻すと天渡に朱雀から降ろして貰った。
「おかえり、結花。あの大きな赤色の鳥が朱雀のレンさんで、緑色の長髪の人が木の精霊のリョクさん。」
翼が小林さん達に説明していた。
「俺が結花の彼氏の天渡だ。光の力を持つ鬼だ。」
「俺は雷黄!雷の鬼だ!…で、説明したから人間の服装になって良いのか?」
「いいよ。レンやリョクも人間の姿になって。…私の横にいるのが火爪さん。翼の彼氏。」
その言葉に翼は噴き出すし、勇吹もおどおどしだすが、朱雀から人間の姿になるレンや鬼から人間になる天渡や雷黄の姿を見て小林さん達は呆然となった。
よく見たら他にも何人か結花達を見に来ていた。
その中に、先に口を開いたのは小林さんでも三瀬さんでも土居さんでもなかった。
「初めまして。志波です。中村さん、今から時間があるならいろいろ何があったか聞きたいいんだけど。」
「…天渡、またちょっとどこか、ファミレスとかに行ってもいい?」
「あぁ、構わないぞ。」
「いいよ。って小林さん達は?一緒に来れる?私、さっきの大学の動画どんな感じかみたいんだけど?」
「…あっ!あ、いいけど!」
小林さん達は慌てて言った。
「じゃあ、行こっか?天渡、レンやリョクに何か食べさせてもいい?」
「いいぞ。」
12人でファミレスに向かった。
「志波さんには言ってなかったけど、私、最近いろいろ悪さをする幻魔を光鬼の天渡と雷鬼の雷黄と一緒に倒してるの。今日私はきさらぎに飛ばされて闇の魔人と戦う事になっていたからさ。やっつけてきた。」
「なんで幻魔が中村さんに襲って来るんですか?」
志波さんが聞いた。小林さんも魔女が幻魔を使って悪い事をしているという説明は聞いていた。
「…たぶん、私が邪魔だからじゃない?いや、市村さんも強いよ?魔女は人の命を奪ってその魂で不老不死状態になるみたい。私、人がむやみに死ぬのは嫌だからさ。地震がこの前あった時は市村さん達と怪我人治して回ってた。」
「え?中村さんや市村さんって怪我とか治せるの?」
土居さんが話に入ってきた。
「小さいのはいける。…まあ、土居さんはお母さんが腰を痛めているんでしょ?後で行っても良いなら私が治しておく」
翼が言った。
「…良いのか?翼。」
「今日は私特に何もしてないから大丈夫よ。結花の方が疲れてるでしょ。闇の魔人、強かったでしょ?」
勇吹に翼が言って結花が動画の事を思い出す。
「そうよ!動画!小林さん達撮ったでしょ!見たい!」
「なら、私のが良いかな?」
結花に小林さんがスマートフォンを見せた。
結花と志波さんが一緒に教室の出口に行くと結花だけ姿がスーッと消えた。
「…!いっ!い…いません。」
「…まあ、大学の入り口に中村さんがいるから、行く?」
「は…はい!」
志波さんと翼のやり取りがある。
そのまま大学の入り口に向かうと朱雀の姿が映った。
朱雀が出た空間の後に悪霊が出て来ようとして勇吹が刀を持って飛びかかっていた。
そこに雷黄が雷撃を放つ姿も映っていた。
「あっ、幻魔化した姿も映ってるかぁ。朱雀が一番分かりやすいけど、紫色のオーラ出てるでしょ?幻魔化って言って私が力を送って体が強化するの。」
結花が説明していると料理が運ばれてきた。
「お待たせしました。オムライスセット二つ、肉盛りグリルセット二つ、ハンバーグステーキセット二つ、シーフードドリア二つ、ミートパスタ一つ、大盛フライドポテト六つ、チョコパンケーキ二つ、フルーツパフェ一つ、残りは食後のデザートですね。」
結花、天渡、雷黄以外はガッツリ食べるようだった。
『いただきます!』
皆が食べる中、結花がアイフォンを出した。
「…私の方はきさらぎの風景写真と怪異と闇の魔人の写真、撮ったよ。」
結花が小林さん達に見せた。
「…本当にいろいろ写ってる。」
「ここで自分の写真を撮ると瘴気が流れて病気になる。だから、結花や俺達は写ってないからな。」
天渡が説明した。
「闇の魔人、腕が六本あったし上半身だけホバリングして強かった。腕も修復していたから顔狙って倒したの。ゴーストタイプで心臓ないみたいだから。」
「よく頭が弱点って分かったね?」
「半分勘、後はここしかないなって思った。」
護に結花が言った。
結花が横目でレンを見ると少しケチャップを頬につけていたので拭き取った。
「…中村さん、レンさんって何歳?」
「…ん?俺?最近生まれた。」
土居さんにレンが言った。
「…たぶん一ヶ月もないんじゃない?だから体は大人だけどほぼ子供よ。」
「天渡さんと雷黄さんは?」
「俺は一ヶ月前位かな。ただ、結花の側で石の姿でいたから少しは人間の生活については分かる。」
「俺は結花の中にいたオーラだから同じ歳だ。18歳。」
天渡と雷黄の話をしていると皆食べ終わったので雷黄がデザートを頼んだ。
「さてと、明日の幻魔は何だろう?」
結花が掌に球体を出した。翼も出すと何かもやのようが見える。
「…霧?でも結構明るい気がする。」
「なんか浮いてる。光ってる。」
三瀬さんと小林さんが言うと志波さんが口を開いた。
「…これ、デパートの近くじゃない?南側の。」
「じゃあ、場所は南側のビル街かぁ。たぶん、光の精霊ね。残っているのは白虎、麒麟、光の精霊、氷の精霊なの。」
「…タイプは光と氷ね。光は木と土に弱いけど氷が木と土に強いの。バランス取れてる。とりあえず、皆ご両親が仕事に行く時に気を付けるように伝えてね。」
翼が言いながら注文したパンケーキを食べていた。
『ごちそうさま!』
皆が食べ終わると天渡が会計を済ませた。
「私は土居さんのお母さんの腰を治しに行って来る。北側の方に家があって、小林さんと志波さんが前後の駅だから一緒にね。」
翼が土居さんの家の近くの電車の駅への空間を開いた。
「…便利ね。市村さんの空間移動。」
土居さん、小林さん、志波さんは空間の中に入って行った。
「じゃあ、私は三瀬さんと護と勇吹と帰るわ。また明日ね。」
翼達を見送ると結花は三瀬さんの顔を見た。
「…三瀬さんは確か東側よね、家。天渡に空間開いて貰おっか?近くの高校で良い?」
「う…うん!」
結花が三瀬さんの家の近くのマップ写真を天渡に見せると天渡は東側に掌を伸ばした。
そして、空間を開くと高校前に繋がった。
「…良さそう?場所?後二日だね。じゃあ、また明日ね。」
「うん!また明日!」
三瀬さんに結花達は手を振ると空間が閉じた。
「…やばい。本当に高校の前。バス代ういたけど、凄くない?」
三瀬さんは空間移動を初めて体感してドキドキしていた。
空間移動をしてドキドキしたのは小林さん、土居さん、志波さんも同じだった。
「小林さんと志波さんはここから電車の移動ね。じゃあ、また明日ね。」
『う…うん!また明日!』
翼と土居さんに手を振ると二人は駅の中に入る。
「…小林さん。私、ここの駅に入るの初めてなんです。…本当に移動したんですよね。」
「…私は土居さんに逢いに来るけどさ。…ガチで移動してる。凄くない?凄すぎて胸がドキドキしてる。」
二人は電車の切符を買う手が少し震えていた。
二人は駅のホームで電車を待つと同時に上りと下りの列車が来た。
「…じゃあ、また明日。小林さん。」
「また明日ね。志波さん。」
二人は電車に乗るとお互い手を振った。
(変な感じ、大学であんまりお互い話さないのに。)
二人は不思議な気分だった。
その頃、翼は土居さんのお母さんに逢っていた。
「初めまして、市村です。…ん。分かった。土居さんのお母さんの腰の骨が少し潰れてるみたい。治して少し強化しておく。」
翼は土居さんのお母さんの腰に掌を当ててオーラを送った。
暫くすると土居さんのお母さんはベッドから体を起こした。
「…うーん?腰の痛みが無いから良さそうだねぇ。」
「ありがとう!市村さん!」
「うん。ただ、あまり無理はしないように。重すぎるものは持たないようにして下さいね。…じゃあ、私は家に帰るわ。また明日ね?」
翼は靴を履いて土居さんの家を出ると自分の家の前に空間を繋げた。
(…一応結花達に終わったってメールしようかな?)
翼はメールを送信した。
結花は家に帰ってお風呂に入ってから夕食を食べていた。
闇の魔人を出すと紫色の長髪の男が出た。
「我が主、お呼びでしょうか?」
「…うん。まあ、夕食の時間だから呼んだんだけど、とりあえず私は結花さん、で、私のお母さんの幸恵さん。お母さん、明日は闇の魔人のコクと月の魔人のセイをお願いして良い?明日は光の精霊だから相性悪いと思う。」
「分かった。青龍のセキさんは結花に返すね。」
「…明日はたぶん光のもやが広がるみたいだから、コクはセイと一緒にお母さんを守ってあげて。」
「はっ!」
コクは結花に返事を言った後にカレーライスを食べていた。
頬にカレーライスを付けるとかしていなくて良かった。
夕食のカレーライスを食べ終わると昨日の件がよぎって口を軽く洗った。
(結花、気にしなくていいんだぞ?)
(私が恥ずかしいもん!)
結花が部屋に入ると天渡と雷鬼が現れると同時にメールが送られてきた。
結花が確認すると翼からだ。
「土居さんのお母さんの件は終わった。結構高齢で腰の骨が潰れていたから治して強化しました。」
「ありがとう!翼先輩!」
「今日のご飯の奢り分働きました。」
結花は体を伸ばした。
「んーっ!いろいろあったけど、終わった!」
「お疲れ様、結花。」
天渡がキスをすると少し甘かった。パンケーキを食べたから?
雷黄もキスをしてきたが、雷黄はマンゴーみたいな味だった。
…あれ?チョコのパンケーキじゃなかったっけ?
「…結花、今日のキス、美味しい?」
「…甘い。雷黄はマンゴーっぽい。天渡はホイップっぽい。…もーっ!甘いと眠くなるじゃん!」
結花は雷黄の胸に顔をぐりぐり当てる。そして、やがてそのまま止まった。
後ろから天渡が結花の頭に胸を当てた。
「結花、俺達の胸、温かい?」
「…うん。好き。」
結花は交互に雷黄と天渡の胸に顔を当てた。温かい肌の熱は気持ちを安心させた。
雷黄と天渡の大きな掌が結花の頭を撫でた。
「…私、ちょっとワガママ。勇吹は天渡と雷黄を小林さんに見せるのを警戒していたけど、私の自慢の鬼を見せたかったの。」
「知ってる。大丈夫だから鬼の姿を見せていた。学園祭の時に鬼の写真を出すつもりだろ?」
「…そう。二人は特別。強くて、怖さと優しさを持つ。幻魔の皆も。私が三瀬さんを空間移動をさせたのはわざと。『非現実』の世界は怖さもあるけど、スリルや胸を高まらせるものもある。きっと四人はなかなか眠れないと思う。」
天渡に結花が言う。
「…でも、結花はもっと特別だ。俺達と恋人同士。鬼と愛し合う特別な存在。」
「…うん。」
結花は雷黄の肩に顔を置いた。
雷黄は優しく結花を揺らした。
「結花、好きだ。愛している。」
「俺も結花を愛している。毎日結花を抱きたい。」
「うん、抱いて。私を二人の体で包んで。」
その日も鬼の肌が結花を温めた。鬼は温かい吐息を吐いた。それは結花も一緒だった。
非現実ワールドに引き込まれる結花の同級生。
まあ怪異は怖いけど、空間移動とか便利すぎる能力は胸が高まる気がしました。