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幻魔達の華 第四章 結花の厄日

今回は気がつくと結花にいろいろ起こる回である。

玄武の戦いで起こるわけではない。

後は伏す。

誤字、脱字があったらすみません。

月曜日になり、結花は早めに7時にセットした目覚まし時計で目が覚めた。

目を開けると天渡の体があった。

寝る時はいつも天渡と雷黄は上半身裸に長ズボンの姿だった。

大体男の鬼は上半身裸にズボンだけのワイルドな姿だった。

(…よく考えたら、私ってちょっと変わってる方かもね。勇吹や護が鬼になった時も、二瀬さん達や林田さんや月ヶ宮さんの時も、男の人の上半身裸の姿を見て、

恥ずかしいとかいう気持ちより、翼や黒澤さんや双葉を守ってくれる鬼が側にいて、いいなって羨ましい気持ちが強かった。

…まあ、勇吹や護も私を守ってくれたけど、翼と愛し合うって聞いたから友達までって決めてたから。

…でも、私が一番鬼と一緒だよね。天渡と雷黄はいつも私の横で寝てくれる。)

結花は目を覚めないといけないと思い、体をベッドから起こした。

天渡や雷黄も体を起こすと結花を抱きしめた。

「おはよう。結花。」

「おはよう、天渡。」

「結花、おはよう。もっと一緒にいたいけど、そろそろ起きないとね?」

「…うん。」

天渡と雷黄の体を見るといつも割れた腹筋に目が行く。

結花は雷黄の腹筋を指で触った。溝が深いのがよく分かる。そして天渡の腹筋も触れた。

「…結花は鬼の腹筋をゆっくり触るのは初めてかな?」

「…普通の人間の男の人ってこんなに腹筋無いもん。それに仲も良くない、知らない人の体は触りたくないから。」

「そうだよ?人間の男はケダモノが多いからな?警戒はしないとダメだぞ?俺達は結花の男だから。まあ、我が強いと五十嵐さんみたいに冷酷になるけどな?」

雷黄は苦笑いして言った。

「…もう。まあ、二人は私の事を考えてくれると思うから良いけど。護、ヤバそうだったら止めてね?」

結花は雷黄と天渡に軽くキスをすると体の中に入れた。

結花は階段を降りて洗面所で顔を洗って台所に行くと母親が朝御飯を作り終えて椅子に座っていた。

「おはよう。お母さん。」

「おはよう、結花。…昨日の朱雀の熱波、ニュースになっているわよ。」

テレビでは謎の熱波で少し洗濯物が茶色になったと言っていた。

「まあ、太陽フレアよ。…無理か。怪現象で。今日も地震発生って出ると思うから。…お母さん、一応食器とか割れ物とか気をつけておいて。」

「分かったわよ。…一応行く前と終わった時にメールしてね?」

「オッケー!」

結花は朝御飯を食べると着替えて出かける準備をした。

「…じゃあ、行ってきます。」

「今日は玄武ね?気をつけてね。行ってらっしゃい。」

結花は玄関を開けて出ていった。

(…結花が出かけると、まだ交通事故の事を思い出す。お医者さんが助からないかもって言われて泣いたかな。…天渡君と雷黄君、結花をお願いね。)



結花がバス停でバスに乗ると護がいた。

「…おはよう、結花。」

「おはよう、護。今日地震起こるんだよね?お母さんに気をつけるように言った?」

「…あっ。言ってない。」

「もーっ!ダメ!大学着いたらお母さんに言いなよ!」

結花が言うと近くの女子高生が結花の方に近づいた。

「…あの。今日、地震、あるんですか?」

結花がその子を見ると頭に何かが浮かんだ。

女子高生が体操着で下駄箱に上履きを入れていると地震が起きて下駄箱が倒れるのが見えた。

挿絵(By みてみん)

「…なんだろ?あなたが倒れた下駄箱に下敷きになるみたいなのが見えた。…今日、午後に地震が起きるの。北側の方が震源地だからさ。たぶん少し校庭に残った方が良いよ。もし、予想が外れたらそれでも良いじゃん。…確か体操着、着てた。たぶん15時過ぎから体育の授業、あるでしょ?」

「…当たってます。…分かりました。そうします。」

結花が大学前に着いてバスを降りようとすると少し不安そうなバスの運転手が結花を見た。

すると、バスの運転手が慌てて運転して落石に巻き込まれる風景が浮かんだ。

挿絵(By みてみん)

「…運転手さん、今日の昼は北側運転するんでしょ?慌てて運転したら落石に巻き込まれるから、普通に運転してね?覚えていて。」

結花が言うと運転手は頷いた。

結花達がバス停を降りると翼がいた。

「おはよう、翼先生。」

「…いや、先生じゃないし。」

「翼、結花の事、何か知っているのかい?予知能力みたいなのが現れているみたいだけど?」

「…結花のは危険予知能力よ。青龍と朱雀を手に入れたから神通力が高くなっているの。」

「じゃあ、朝の女子高生とバスの運転手、怪我するの当たってるじゃん。」

「怪我じゃないの。結花が見た女子高生とバスの運転手さんは今日の地震で亡くなる人よ。他に亡くなる人はいないみたいだけど。」

「…そっか。まあ、人が亡くなるのは嫌だからそれで助かるならいいかな。…今日の玄武は結構被害出るって事でしょ。授業終わったら早く行かなきゃ。翼、勇吹は今日の地震の事を家族に伝えてる?」

「…一応、勇吹は伝えているけど信じてないみたい。ただ、棚の扉とかはテープで止めるって言ってた。」

「…もう、勇吹ったら。」

結花はメールを勇吹に送った。

「…翼。護の家は大丈夫?」

「うん。結花の家も大丈夫よ。」

「…護、もし私達が予知能力で危険が分かるのに家族に伝わらなかったり、信じなかったら、鬼の暗示の力、使いなさいよ。家族が大怪我したら困るでしょ。」

結花は真剣な顔で護に言うので少し焦った。

「わ、分かったよ。」

「…じゃあ、行こうか?」

結花は先頭を歩いて大学に向かった。

「…ふふっ。結花、スイッチ入ったわね。本当は私より結花の方が行動力あるから。黒澤さんや双葉さんの時も気を張ってたからね。」

「…ちょっと、翼が俺の主人で良かったかなって思った。きちんとしないと結花に怒られそうだ。真剣な結花ってちょっと怖いんだよな。」

護は少しため息をついた。翼は護の手を繋ぐと護は顔を赤くした。そして、二人は大学に向かった。



大学で授業をして、昼御飯の時間に結花は地図のアプリを開いていた。

「…んー。お父さん、無事に帰れるかなぁ。西東が山だからね。…いろいろ考えたら、保育園に預けている人とか大変よね。」

「一応、真ん中の方はいくつか通行止めになるけど、車が通る道は確保出来るから大丈夫。」

「時間はたぶん15時45分前後かな。火事が起これば青龍呼んで鎮火させよう。」

結花がふと護を見ると少し機嫌が悪そうにしていた。

(あー。護、土の力持ってるけど、この感じだと他の人の為に力使いたくないのかもね。)

「…翼、ごめん。今日、私と天渡と雷黄だけで行くから。場所だけ教えて。」

「分かった。…ここよ。一応、外から結界張って援護するから。」

結花と翼の会話に護はハッとした。

「…ゆ、結花っ!」

護は結花に声をかけたが結花は少し笑って護を見た。その表情が怖いと護は思った。

「…何?…大丈夫よ。私には天渡と雷黄がいるから。」

結花は食べ終わった食器を返却口に持って行った。

「…護が結花を心配する気持ちは分かるけど、結花は誰かが傷つくのが嫌なのよ。結花が他の人の事で危ない事しようとしていて嫌だったんでしょ?まあ、結花の解釈は少し違うけど、嫌そうな顔をしていたから断ったみたいよ。」

「…そんなつもりはなかったんだ。本当に結花が傷ついたら嫌だなって思ってたから。…謝ったら許してくれるかな?」

「…今日はもう下手に話さない方がいい。だから、私も外から援護するって言ったでしょ?…私も確かに人が怪我したら嫌だけど結花の気持ちの方が強いんだよね。それに、ずっと私達が手伝ってるし、幻魔も集まって来てるから単独行動しだすと思う。」

「…ごめん。結花にもだけど、翼にも嫌な思い、させた。」

「私は大丈夫だから。…まあ、被害抑えるようにしたいから手伝って?」

翼は護の背中を擦って言った。



午後の授業は結花は護や翼と少し離れて座った。

相変わらずやる気のスイッチが入っているのか、表情はいつもと違った。

授業が終わると天渡から大学の外に勇吹がいると聞いて少し溜め息を出した。

「…私、行くから。外に勇吹がいるから護は話しておいてね。」

「結花、土と光の怪異が出るから。気をつけてね。」

翼が結花に手を振ると結花は教室を出て行った。

「…はぁ。嫌だな。勇吹に言うの。」

「私が代わりに言っておく。」

大学の前に翼と護が行くと二人しかいないので勇吹はキョトンとした顔をしていた。

「…あれ?結花は?トイレか?」

「結花はいつも手伝わせたら悪いからって一人で、…じゃなかった、三人で行っちゃった。」

「はあっ?悪いからって?んなわけないだろ?」

勇吹は結花に電話を掛けた。



「…雷黄、ちょっと電話掛かってきた。」

結花は北側の玄武の場の近くで勇吹から電話に気がついて出た。

「もしもし?結花?なに一人で行ってるんだよ。危ないだろ?」

「危なくないもん。雷黄と天渡が一緒だし。それにずっと手伝ってもらってるし、幻魔も三人いるから大丈夫だよ。」

「…ずっと手伝ってって…。確かにそうだけど、結花だって同じだろ?」

「…そうだけど、私さ、いろんな人の厄介事に首突っ込んじゃってさ?それに勇吹や翼や護をまきこむのって駄目だったなって思った。ごめんね。今日は家にでもいてよ?」

結花はそう言うと電話を切った。

「…厄介事って。今起こっているのは結花自身の事だろ。…翼、何かあったのか?」

「…ちょっとね。結花が今日の件でいろんな人に注意喚起とかしていてさ。護は結花が危ない事しそうで機嫌悪くしていたのが顔に出ちゃって、結花も機嫌悪くしちゃった。」

「…勇吹、ごめん。」

護が謝るが、勇吹は溜め息をついた。

「…護。お前何やってんだよ?そのうち俺みたいに距離置かれるぞ?」

護は結花に嫌われる事を考えると涙目で俯いた。

「…もう、護。そんなに落ち込まないの。…とりあえず、勇吹は家に待機して落ち着いたら私達と合流して、私は護と玄武が現れる場所の近くで結界張るから。まあ、破られるから家が揺れると思うから気をつけて。大きくて長いから。」

「…何するんだ?俺達。」

「火災が起きる家が出るから、私達と結花が青龍を呼ぶから四人で消していく。玄武は岩を飛ばすから体が長い青龍は不向きなの。朱雀は岩を溶かせるでしょ。」

「分かった。じゃあ、また後でな?」

勇吹は家の方に向かった。

翼は玄武が現れる場所の前に空間を開いた。

「…翼、結花は?」

「…場所?言わないわよ。結花、天渡さんを通して私達を見てるから。行ったら怒られるわよ?」

それを聞くと護はまた落ち込んだ。




「…だ、そうだ。」

「ぷーんだっ!」

「結花、可愛いよ?」

天渡が翼達の状況を結花に見せた。結花は雷黄の背中に乗っていた。

「…まあ、私を心配するのは分かるけどさ。大人しく出来ないからさ。100%は出来ないと思うけど、出来る事がしたら、やりたいからさ。」

「結花がやるなら、俺達は結花を守りながら手伝う。」

「天渡。…雷黄も。私の鬼だけど、手伝わせてごめんね。」

「…気にするなよ。それに勇吹さんも火で相性悪いから一緒は嫌だったんだろ?」

「…雷黄も相性悪いでしょ?だから、あんまり突っ込まないようにね?…セキとレイ、今日はお願い。傷ついた人がいたらリョクにも力借りるから。」

結花が言うと三人の石は光った。

天渡と雷黄が歩きだしたので前を見ると何匹か人より大きい泥人形がいた。

挿絵(By みてみん)

「…まあ、邪魔するよね。相性良いのは木の術かな?」

結花が泥人形に緑色の光の弾を放った。泥人形に草が生えて中の核を壊すと崩れていった。

「…まだいる。岩の蟷螂みたいなのが走って来てる。早いから倒しきれなかったり、岩を飛ばしたら叩き落としてね?」

奥から岩の蟷螂が走って来た。結花は今度は水の槍を放った。岩の蟷螂は崩れるものと岩を飛ばすものがいた。

挿絵(By みてみん)

天渡は刀を上から下に振ると岩を叩き落とした。

それでも飛んでくる岩は雷黄の雷の力で地面に引き寄せていた。

「…さてと、残りは空中浮かぶ宝石が地面に隠れているんだったかな。右に二体、左に三体。」

結花が言うと地面から光る石が現れて光のレーザーを放った。

挿絵(By みてみん)

天渡が空間を開いて二体の石の上からレーザーを跳ね返した。

雷黄は左側の光る石三体に雷を落として倒していた。

「…結構、攻撃するの早かったね。…私達三人で丁度良かったかも。さてと、レン、出て来て。」

結花が赤色の石を出すとレンが出て来た。

「…レン、今日は玄武と戦うけどたぶん岩とか飛ばして来ると思うから近づき過ぎないようにして。」

「分かりました。結花さん。」

「じゃあ、朱雀の姿になって。」

レンは朱雀の姿になったが、昨日と違って地面に足を置いて立っていた。

天渡が結花を抱き上げて雷黄とそれぞれ朱雀の左右の方に乗ると低空で羽ばたいた。

「…翼達やお父さんやお母さんに連絡しよう。」

結花がメールを送るとサイレンが鳴り出した。

「…五十嵐さんがやっているみたいだぞ。」

「やるじゃん。これで被害が少し抑えれるかな。」

天渡と話していると木々が激しく揺れて何本か倒れだした。

「…翼が結界張ってこれ?やばくない?」

結花が言っていると大きな体の亀が地面から姿を現した。

その姿は12畳はあるだろうか。朱雀よりは大きいようだった。

挿絵(By みてみん)

「…でかっ。…写真撮っちゃおう。甲羅から岩を飛ばすみたい。朱雀、炎のバリアを張って。」

「オォオオオオオオッ!」

玄武の甲羅から岩が飛んで朱雀に向かって狙って飛んで来た。

朱雀は結界で岩を溶かして残った岩は雷黄が雷の術で落とした。

「…大技来るよ!朱雀、高く飛んで!」

朱雀が高く飛ぶと地面から大きな岩が突き上げた。

天渡が空間を開けるがいくつか朱雀に向かって来た。

「ハハハッ!落ちるが良い!」

玄武は笑って言う。

だが、朱雀に岩が突き刺さると通り抜けていった。

玄武の背後に朱雀が揺らめいて現れると結花は水の術を集めて放った。

「水よ!押し潰せ!」

結花が玄武の周囲から水を作り出して撃ち込む。

玄武は殻に籠ると高速で回転して朱雀の方に飛んで来た。

天渡はまた空間を開いて玄武を朱雀の後ろに出した。

回転して空を飛ぶ玄武は太陽に体を当てて止まると光を受けて体を点滅させた。

「また大技使う気!?リョク!出てきて!玄武の光を吸収して!」

結花がリョクを出すと空中を浮遊しながら朱雀の前に立った。

玄武が光のレーザーを放つとリョクは緑色の結界を張って光を吸収した。

「…リョク!光を溜めたら木の力にして放って!」

リョクは緑色の木の力を高めて玄武に放った。

木の力は光を吸収するので玄武の甲羅に当たると勢いよく吹き飛んだ。

朱雀が玄武に近づくと体を地面に潜らせた。

「…ハハハッ!これで狙えんだろ!終わりだ!」

また玄武が岩を無数に突き上げて来た。

「…天渡、玄武のここ、突き上げる岩の前から空間繋げて出して。」

結花が小声で心臓を指差した。

天渡が突き上げてくる岩の前に玄武の心臓との空間を繋げると地面が大きく揺れた。

そして、静かになると地面が光り出した。

「玄武、ガン!土の石になりなさい!」

結花が言うと茶色の宝石が地面から飛び出して結花の掌に乗った。

結花は土の石を袋の中に入れた。



朱雀は高く飛ぶと町は所々火が上がっていた。

「…セキ!出てきて!雨を降らして火を消して!レンも火の勢いを弱めさせて!」

セキが出てきて火事になる家に雨を降らした。

「…結花!」

翼が九尾の狐の姿で結花に近づいた。結花が翼の顔を見ると朝のバスで出逢った女子高生が怪我をした生徒を見るのが頭の中に浮かんだ。

「…護や勇吹は幼稚園や小学校の怪我人を直すのに回ってる、私は中学校に行く、結花は高校に行って。」

「…分かった。」

結花は大体どこに行けばいいか分かっていた。

「朱雀、このまま前方右側に見える学校に向かって。」

「分かりました。」

朱雀が飛ぶ中、天渡が結花の肩を軽く叩いた。

「結花、後でメールで良いから五十嵐さん達に連絡したら?」

雷黄が言った。

「…うん。」

(…結局、護は手伝ってくれたんだよね。勇吹も翼も。お礼言わなきゃ。)

朱雀は高校の入り口前に着いた。

「…結花、皆回復の術は使えるからな。結花も木の石から回復の術が使える。」

天渡が言った。

「…雷黄は二階、リョクは三階、セキは四階、レンは体育館。天渡は私と一階。分散して怪我人の治療して。終わったら入り口で合流よ。」

四人は分散して行った。結花が高校の一階に行くと朝の女子高生と怪我人の生徒が数人倒れているのが見えた。

「…また逢ったね?私の事、呼んだでしょ?」

「結花、その子は足の切り傷と左肩にヒビが入ってる。神経を集中したらどこに怪我をしているか分かる。後はそれを治すイメージをするんだ。」

天渡は倒れている生徒の元に行く。

結花が怪我をした女子高生の足に木の石を近づけると傷口が塞がった。そして、肩に木の石を近づけると女子高生の表情が軽くなった。

「…この子はもう大丈夫。地震はもう起きないけど、倒れそうなものには近づかないようにね?」

結花が女子高生に言うと他の生徒の治療を始めた。一階の怪我人は10人程いた。思っていた以上に骨にヒビが入っている生徒がいた。

結花と天渡は一通り怪我人を治すと高校の入り口前に戻った。

「…さてと、他に老人ホームで怪我人出てるって連絡来てるから私達は行くから。…後は学校から避難指示があるからそれに従って下さい。」

結花は冷静に言うが、幻魔が四人いるせいか、女子高生から『帰りたいからどうにかしてほしい!』と言うのがガンガン伝わってきた。

「…分かった。…負けましたよ。後で家が遠くて帰れない子がいたら駅かバス停まで帰らせてあげるから。後で体育館でね。えっと、私、中村さんだから。」

「二年B組、川井絵里(かわいえり)です。絶対戻って来てください。」



結花が川井さんに言うと朱雀に乗って翼が言った老人ホームに向かう。

「…結花、思った以上に厄介事になったんだろ?」

護からメールが来た。

「むちゃくちゃ絡まれた。蛇に睨まれた私は蛙よ。ゲコゲコ。」

結花は悪ふざけでメールを送った。

「結花、バスのおっさん助けたぞ。乗客の爺さん婆さんが暴れて大変だった。」

勇吹からもメールが来た。

「ごめーん!ありがとう!…次から暴れる人は眠らせちゃえ!」

メールを送りながら結花は老人ホームに着いた。

「…リョク、セキ、レン。鬼みたいに人に暗示かけれたら、暴れている人がいたら大人しくさせていって。」

「分かりました。結花さん。」

三人は目を赤色にした。老人ホームは職員が暴れる老人に苦戦していたので怪我人を治すよりそちらの方が大変で、一通り終わって帰ろうとすると老人ホームのスタッフから『うちで働いてください!』としつこく言われて逃げるのが大変だった。

…分かるけど、私、美術大生だから。

「…結花、終わったから私達は先に私の家の近所の喫茶店で待ってるから。ご馳走になります。」

翼からメールが来た。

「はいはい、天渡に頭下げておきますよ。」

結花がメールを送ると天渡が結花の頭を撫でた。

「丁度、結花と喫茶店に行ってみたかったんだ。後でお母さんに少し遅くなるって連絡しないとな?」

「…そうだった。」

結花は両親に高校生を自宅付近に送るから遅くなるとメールを送った。

母親からは「分かりました。頑張ってね、天渡さん。」と来たが、父親からは「こっちは渋滞していて泣きそうだよ。」と来た。

結花がまた川井さんの高校の体育館に行くと10列で60人位並んでいる人がいた。

「中村さん、分かりやすく並べました。駅で帰るグループが4班とバスで帰るグループが6班です。」

川井さんに言われて天渡が駅やバス停への空間を一気に広げた。

「わー!便利だから毎日して!」

男子校生が悪ふざけで言う。

「早く行かないと閉じるぞ!」

天渡が言うと慌てて生徒達が帰って行った。

「…まあ、今日は特別だから。これで帰れるでしょ?」

「中村さん。またお願いしますね?」

「わー!朝の乗るバスの時間ずらさなきゃ!」

川井さんが笑って言うので結花も半分冗談で言ったが、ヤバい子に捕まったと思った。

最近の子は怖いわ。

「…えっと、中村さん?良ければコーヒーでも飲んで行かれますか?」

学校の職員がジリジリと近づいてくる。

あっ…、これ、マズイやつじゃない?

「…あ、私達、友達と待ち合わせがあるので失礼します。」

結花が言うと雷黄が結花を抱えて走った。

「天渡!」

「分かっている!」

天渡が遠くに空間を開くと三人は入って即座に空間を閉じた。

「…やっばっ!とことんコキ使われる所だった!」

「…やっとゆっくり出来る。行こうぜ?」



結花達が喫茶店に入ると翼達は奥に座っていた。

勇吹はサンドウィッチを、護はケーキを食べていた。

翼はコーヒーだけ飲んでいたが、三人共コーヒーのカップは変わっていた。

「結花、お疲れ様。」

翼がニッコリ笑う。気のせいか、勇吹だけ少しおどおどしている。

「今日はヤバい人ばかりだった。厄日?」

「…だから、俺は嫌だったんだ。」

「…まあ、今度から気をつけるわ。」

結花がメニュー表を見た。

えっと…皆が飲んでいるコーヒーは…。3000円。やけに高い。値段見間違えたかな?

「…結花は俺達と一緒の珈琲でいいか?」

「あっ!うん!いいよ!」

結花は何も分からずに天渡に言った。天渡は店員を呼ぶと店員はよく分からない呪文のような事を言っていた。

結花の頭に全く入らなかった。

店員が持って来て一生懸命何か説明していた。

やはり何を言っているか分からなかった。

結花は何も考えずに珈琲を一口飲んだ。

うん、飲みやすいし、美味しいかな?でも、砂糖とクリームは入れたいかな?

「結花。砂糖とクリーム入れるだろ?」

「うん。」

雷黄に言われて結花は砂糖とクリームを入れた。

「…あっ。」

勇吹は焦った顔をしていた。翼は変わらず微笑んでいて、護は笑っていた。

「…うん!飲みやすくなった!」

「そうか。…五十嵐さん達はもう一杯飲むか?」

「…あぁ?貰おうかな?」

「いっ!俺はいいよ!」

「…私、紅茶飲んでみようかな?」

天渡が店員を呼んで珈琲と紅茶を頼んでいると紅茶を頼んだ翼はまた何か長々と説明されていた。

何頼んだのよ。

暫くして護の珈琲と翼の紅茶が運ばれた。

翼の紅茶のカップがまたお洒落なカップだった。

「…うん。香りが良いわね。この紅茶。」

翼は上品に飲んでいるようにみえる。勇吹だけ相変わらず変な顔でおどおどしていた。

「…一応、明日の件だけど、明日は月の魔人よ。月と闇。日食が起こるから暗くなるから。」

「…うん。分かった。場所は?」

「玄武より手前の北東の森の中ね。学校から離れてないから。」

「分かった。」

「…結花、ごめん。俺、明日、明後日バイトあるから。」

「うん?いいよ?まあ日食あるから気を付けてね?」

全員飲み終わると天渡が口を開いた。

「…じゃあ、そろそろ帰ろうか。」

天渡が会計に行くと値段がスゴい事になっていた。

珈琲と紅茶で四万円を越えていた。

「…うっわ。勇吹の一日のバイトより高いんじゃない?」

「あんなの見たら冷や汗止まらなくなるって。」

「火爪さん。また皆で一緒に来ようか?」

「はぁっ!?今度はまた昼御飯でいいよ!」

「…そうか。分かった。」

天渡が勇吹に言うとハッとした顔になった。

「…昼御飯はまた土曜日位?翼や護は大丈夫?」

「私は大丈夫。」

「俺も。決まりだな。」

「え?え?」

勇吹は嫌な予感がしていた。

「…じゃあ、俺達は帰るから。」

「三人共、ありがとうね。じゃあ、また明日。」



結花がいなくなると勇吹は顔を真っ赤にした。

「ヤバい!あの喫茶店!あんなに高い珈琲や紅茶あるのかよ!」

「…正直、俺も緊張した。」

「天渡さんが良いって言うから頼んだけど、私日頃からあんなの飲まないから。紅茶一杯五千円とか初めてみたわ。…今度の土曜日楽しみだわ。勇吹を驚かすとか言ってたから。」

「いっ!やっぱり!嫌な予感がする!」

勇吹はまた慌ていたが、翼と護は楽しそうにしていた。



「ただいま。お母さん。」

「おかえり。結花。…何処か行っていたの?」

「んー?喫茶店?なんか珈琲の話、長々されちゃった。お風呂入ってくるね。」

結花はお風呂に入って、入浴を済ませると台所に行った。

「今日は地震の後ハヤシライスを作ったわ。…結花の方はどうだった?」

「…まあ、怪我人は何人か治したけど。高校で帰れない子をいろんな駅やバス停前に天渡が空間開いて送ったり、老人ホームの暴れるお年寄りを天渡や雷黄が大人しくさせたらスタッフの人から働かないかって引き留められて大変だったわ。」

「…まあ、手から喉が出るほど欲しいだろうね。そんな人材。」

結花が玄武のガンを出した。

玄武のガンは緑色の髪をした額に緑色の大きな宝石を付けた男の姿だった。

挿絵(By みてみん)

「…我が主よ。今日は無礼を働きすみませんでした。」

「むちゃくちゃ後片付け大変だったからね。…まあ、ガンが悪いって言うか、出会った人が悪かった。お母さんがご飯作ってくれたからお礼言って食べてね。」

「はい。ありがとうございます。頂きます。」

結花がガンをじーっと見ていると箸でコロッケを取ると丸のみにする勢いで食べようとしていた。

「…ちょっと、詰まらせないようにしなさいよ?」

ガンは口一杯にコロッケを入れてコクコクと頷いた。

あかん、朱雀と一緒じゃん。ドジっ子なの?

「…明日、月の魔人が相手みたいだから。…土と氷に弱いはずだから。」

「…頑張ります!」

「うん。まあ食べている時に言った私も悪いけど、お願いね。」

真剣だが、やはりどこか抜けた感じの玄武の頭を撫でながら結花は言った。

「…ご馳走様でした。お母さん、これはご飯を頂いたお礼です。」

ガンは何か金色の棒を出した。

「…これって…」

「売ったらお金になるってご主人様の…。あっ、結花さんって言えって言っているな。結花さんの鬼が言ってます。」

「…重たいね?10キロあるんじゃない?へぇ、こういうの出せるんだ?ちょっと運ぶの大変ね?…明日は月と闇かな?お母さん、リョク、お願いしていい?」

結花がリョクのいる木の石を出した。

「…じゃあ、リョクさんを借りるわね?お昼は何かリョクさんに作ろうかしら?」

結花の母親が言うと木の石はゆっくり光った。

「さてと、私は明日の事もあるから部屋に戻るね?」

「…私も金ののべ棒、直そうかしら?リョクさん、早速だけどお願い。」

「はい!」

結花の母親は早速リョクを出して金を運んでいた。



結花が天渡と雷黄を出すと天渡は早速結花にキスをした。

「…お疲れ様。少しキスで力を回復させてくれ。」

「俺も。…へへっ!やっぱり結花のキスは最高だぜっ!」

天渡は座ると結花と向かい合って抱いた。その後ろで雷黄が結花の肩をマッサージした。

「…キスを少ししただけで大丈夫?」

「あぁ、五十嵐さん達と違って、俺達みたいな霊的な鬼は喜びが力になるんだ。」

「だから、結花を抱きたくなる。抱くと力が湧くんだ。」

天渡と雷黄が言った。それに天渡と雷黄の力のせいか、疲れが取れて眠くなって来た。

「…結花、ちょっと疲れちゃったよな?少しベッドで寝よう。」

雷黄が結花を抱いてベッドに行った。

「…よしよし。結花、良い子、良い子。」

雷黄は自分の胸に結花の頭を置いて体を揺らした。

結花はすぐに安心して眠ってしまった。

「…結花。無理して起きなくても大丈夫だから。おやすみ、結花。」

天渡の声が聞こえた。

明日はゆっくり天渡と雷黄と過ごしたいと結花は思った。


今回の護との喧嘩は思っている以上にソフトに終わりました。

ただし、結花の親切が仇になり、いろんな人に振り回される回になりました。

こんな事もあるよね?

次回に続け。

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