幻魔達の華 第二章 ふれ合う鬼達
今回はまた長くなりました。
いろんな人物が出るから仕方ないですね。
誤字、脱字があったらすみません。
土曜日の朝、結花が目を覚ますと目の前に天渡の体が目に入った。
「おはよう、結花。ゆっくり眠れた?」
「…うん。爆睡していた。」
天渡は結花の額にキスをした。
振り返ると雷黄も起きていた。
「おはよう、結花。」
雷黄も結花の額にキスをした。
「…雷黄。寝た?」
「いいや?眠くならないから寝ないよ?」
「え?じゃあ天渡も?」
「あぁ。だからたくさん結花を抱いていたから良い気分だ。」
「…もう。…今何時?」
「七時半だな。」
「休みの時はこの時間か八時に起きるから丁度いいんじゃないかな?」
雷黄はずっと結花の中にいたせいか、大体結花の日常の行動を分かっていた。
「…朝ご飯食べに行くべきか、このままいるべきか…。」
「…そうだな。朝ご飯食べてまた三人でいたら良い。」
「…まあ、その方がお母さん、片付くからね。待っておく?」
「…そうだな。結花といたいから体の中にいて、終わったらまた出てきて結花とハグしたいな。」
雷黄は結花を抱きながら言った。
「…結花、体の中に入るぞ。」
天渡は結花の体の中に入った。
「じゃあ、俺も。また後でね?」
雷黄も結花の中に入ると結花は部屋を出て台所に向かった。
「おはよう、結花。朝御飯出来てるわよ。」
「おはよう、お母さん。」
結花が椅子の前に行くとトーストとサラダがあり、横にもサラダが置いてあった。
「隣の分はリョクさんの分よ。今日は青龍と戦うとか言ってたでしょ。…結花、龍に勝てるの?」
「んー。青龍の頭にさ、木の力の光線を後ろから不意打ちしたらいいんじゃない?」
結花は掌から緑色の光を出した。母親はそれを見て驚いていた。
「…あとは双葉が使う技はトラップタイプだから、うまくいくかどうか、かな?翼は防御系の術が得意だからね。攻撃はほぼ駄目。」
結花は母親に説明するとリョクを出した。
「リョク。お母さんがリョクの朝御飯を用意してくれたからお礼言って、食べてね?」
「はっ!ありがとうございます!」
「…今日は結花が青龍と戦うって言うから不安なのよ。リョクさん、危ないようだったら結花を連れて逃げてね?」
「…はっ!」
緑は挨拶するとサラダを食べだした。
「…リョクって木の精霊だから、野菜食べさせているけどさ。何でも食べるの?」
「精霊や魔人は大丈夫かと。ただ、朱雀に鶏肉を出すのはやめた方が良いかと思います。」
「んー。クリスマスは絶対機嫌悪くなるでしょ。私、フライドチキン好きなんだけどさ。買い物もダメね。覚えておこう。…お母さん、もし買い物に人手がいる時は貸せる幻魔いたら貸すね?」
結花が言うので母親はビックリした。
「…そんな事出来るの?」
「確か東野さんが黒澤さんの鬼と仲良くなったからさ。リョクはお母さんから朝御飯貰ったから、大丈夫じゃない?」
「結花さんが命令するのなら…。」
「…意外と買い物って大変なのよ。助かるわ。」
結花の母親はちょっと嬉しそうにした。
「…昨日天渡と雷黄は服を着た姿になれた。リョク達もいける?」
「はい。大丈夫です。」
「決まりね。ただ、交通ルールとか分からないかもしれないから、お母さんはそこは気をつけておいてね。まあ、リョクは今日は私と外に出るから見ておいてね。」
「はっ!」
朝御飯を食べ終わると結花はリョクを石に戻した。
「今日出掛けるのが11時半だから15分になったら天渡の瞬間移動で良いかな?この感じだと双葉の光鬼の輝光さんもいけるんじゃないかな?問題は黒澤さんかな?光鬼はいなかったはず。まぁ、いいや。私はちょっと部屋で休んでおく。ごちそうさま。」
結花は食べた食器を洗い場に持って行くと部屋に戻った。
「…今日は青龍さんの分の夕御飯が必要じゃないかしら?夕御飯は唐揚げにしましょう。」
結花の母親は夕御飯の鶏肉の味付けの準備を始めた。
結花が部屋に戻って扉を閉めると天渡と雷黄が出て来て、すぐに結花を抱きしめた。
「結花、少しの間だったけど寂しかった。さぁ、続きのハグをしよう。」
「俺も。結花と一緒にいるのが一番だな。へへっ。結花、大好きだよ。」
二人はとても嬉しそうな顔をしていた。逞しい腕で優しく抱き、片手は結花の腰に、もう片方の手で結花の頭を撫でた。
二人は頬を何度も結花の頬に重ねた。
「…結花。本当はキスをしたいけど、今日は結花が昼御飯を食べに行くから我慢する。」
「…いいの?」
「…だって、キスしたらやめられなくなる。」
雷黄は少し寂しそうに言った。
「…じゃあ、ちょっとだけ私がキスしてあげる。」
結花が少し背伸びをして雷黄にキスをした。
「…天渡。少し顔を下げて。」
顔を下げた天渡に結花はキスをした。
いきなりキスをされた雷黄はビックリして、天渡は嬉しそうにしていた。
「…これで大丈夫?」
「…っ!結花っ!好き!大好き!元気になった!」
「俺も。結花のキス、美味しかった。」
雷黄は少しオーバーな気がしたが本当に嬉しかったのだろう。少し勇吹に似た感じがする。
それを言ったら天渡も控えめな護といった感じかもしれない。
「…天渡。…こう…向かいあって…抱き上げて貰っても…。」
「あぁ、こうだろ?」
天渡がしゃがんで結花を持ち上げた。
「……よしよし。家の中しか出来ないからな。」
結花は天渡の胸に置いた両手を少し動かした。
…本当は不器用に動いているフリをして天渡の体を触りたかった。
自分の体とは違って天渡の胸は浅い谷間が長く続いていた。
勇吹や護だって体つきは良い。でも、向き合って体を触った事はない。
「…結花。あの鬼達と出来ない事。出来るようになったな?鬼達は結花の鬼。そして、結花の男。結花の気が済むまで俺達の体を見て、触れて良い。」
「…うん。天渡の胸、ちょっと大きい。」
「あぁ、普通の人間より大胸筋があるからな。」
結花が天渡の体を触った後に雷黄が間から顔を出す。
今度は雷黄が体を触って欲しいのだろう。
「…そろそろ雷黄と変わるからな?」
「うん。」
天渡がしゃがんで結花を降ろすと今度は雷黄が抱き上げた。
「結花。好きなだけ俺の大胸筋触っていいからな?」
「うん。雷黄も大胸筋盛り上がってる。」
「…見て?結花?大胸筋動かせるよ?」
雷黄は大胸筋をゆっくり動かせてみせた。
少し恥ずかしいけど、ちょっと動いている所が見てみたいという好奇心はあった。
「…雷黄。大胸筋を顔を当てて動かしたらどんな感じかやってみたい。」
「いいよ。」
雷黄が結花を降ろして大胸筋に結花の顔を当てて動かした。
結花の耳にはピクッピクッと低めの音がした。
天渡も大胸筋を当ててピクッピクッと動かした。
低い音、これが男の人の音なのかなと結花は思いながら聞いていた。
気がつくと11時になっていた。
「…時間が過ぎるのが早く感じるな。そろそろ準備するか?」
「そうだね。」
天渡に言われて結花は出かける準備をして三人で玄関に向かう。
結花の母親も見に来ると天渡が大学前に空間を繋げた。
そこには護がいて、電車の駅から翼と勇吹が歩いて来ていた。
「じゃあ、行って来るね?」
「気をつけてね。変な運転をする車が多いから。」
「はーい。」
結花が大学前に移動すると天渡が空間を閉じた。
「お待たせ。皆集まったね。」
「天渡さんも空間移動出来るのよね。確か黒澤さんも出来るはず。」
「じゃあ、いつでもお互い行き来出来るね。」
「じゃあ、ちょっと早いけどお店に行こうか?」
六人で少し歩いてレストランに入る。
多いので広い席に案内された。
翼は勇吹と護の真ん中で、結花は雷黄と天渡の真ん中に座った。
「悪いな、火爪さん。四人と思ったがこれが一番だと思ったから。そのかわり俺が奢るから機嫌悪くしないでくれ。」
「…え。天渡、お金持ってるの?」
「あるぞ?一応数十万円」
天渡が結花に財布を見せると中にはまあまあな金額のお金が入っていた。
「…結構入っているね…。」
「ただ、金銭は邪気が溜まるからこれ位でな。」
「俺、ドリンク取ってくる。結花は始めはオレンジジュースだろ?市村さんが野菜ジュースで、五十嵐さんがカプチーノで、火爪さんがコーラかな。」
「…う、うん。」
雷黄がそう言ってドリンクを取りに行った。
結花は少し子供っぽいかなと顔を赤くした。
「…結花。別にいいんじゃないか?オレンジジュースを飲んでも?子供っぽくないから気にしなくていいぞ?雷黄だってレモンサイダーだから。」
「…うん。」
天渡はさりげなく結花の手を握って言った。
「…大分結花と親しくなったんだな。」
「あぁ。ただ、結花の父親は少し反抗的だから雷黄が目を光らせたりしていた。悪いが、結花を愛しているから俺達の付き合いを反対させる気はない。」
勇吹に天渡が言った。護は少し目が赤っぽい気がした。警戒しているのだろう。
結花は少し不安そうな顔をしたが、天渡は余裕の笑みを浮かべた。
翼は気がついて慌てだす。
「…ちょっと、護。駄目よ。」
「…ごめん。でも、結構計算して行動しているみたいだからさ。」
それを遠くから見ていた雷黄が少し呆れてやってきた。
ジュースのストローは翼と結花の分だけ持って来ていた。
「…五十嵐さん、ちょっとピリピリし過ぎじゃないか?俺達は敵同士じゃないからさ。結花と友達なら、怖がる事したら駄目だ。」
「…まあ、俺達がいきなり現れて結花の恋人になったんだ。警戒するのが当然だ。友達だけど、大切なものだからだろ。」
「…あぁ。だから、結花を泣かせたら殺す。それだけは言っておく。」
護は天渡に言った。より目は赤くなっていた。
「…おいおい、護。落ち着けよ。」
「…今、結花を泣かせそうなのはお前だぞ。」
雷黄が言って護はハッと気がついて目の色を戻した。
「…五十嵐さんは市村さんを恋人にした。だから、結花とは友人だ。だが、俺と雷黄は結花の男だ。
君達と俺達は違う。君達は友達、俺達は結花に肉体や魂を捧げる鬼。結花は友人から恋人を取るつもりは無い。分かっているから火爪さんと五十嵐さんに友人として接するようにしている。
抑えて付き合っている。
それを理解してあげないと酷だぞ?」
「…すまない。」
護は天渡に謝った。丁度料理が出来上がったようだが、店員が止まって待っていた。誰が見ても気まずい雰囲気だろう。
「あっ!すみません!料理持ってきていいですよ!」
雷黄が笑って店員に声を掛けた。
店員が料理を見せると勇吹と一緒に皆の前に配った。
「…あ。火爪さんはピザ、カットしてもらえる?俺はお皿持ってくるからさ。」
「…あ、あぁ。」
雷黄はまた席を離れた。
「…雷黄、よく動くだろ?ああ見えて周りの人間の電気感知しているんだよ。それに火爪さんが飲食店でアルバイトしている事、知っているんだよ。」
「…え?そうなのか?」
「…市村さん、五十嵐さんの事、気にしなくていいから。前に五十嵐さんと火爪さんが飲食店であった時はもっと険悪だったみたいだから。」
「…っ!し、知ってるのかよっ!」
勇吹が慌てる間に雷黄が戻って来た。
「今している話って大掛って人が市村さんに嫌がらせして、五十嵐さんと結花だけになっていた時の話だろ?火爪さんがむちゃくちゃ五十嵐さん睨んで火花出そうになってた。あの時も結花は不安になっていたな。いろいろあって結花が大分疲れてた。」
「一人で帰ったからな。まあ、五十嵐さんはもう少し、気を付けた方が良い。赤目で市村さんを怖がらせただろ?二回目だ。」
カットしたピザを雷黄が皿に乗せて、天渡が苦笑いをして護に渡した。
護は以前翼が大学で大掛さんの友達と揉めた時に大学の生徒を複数人赤目で操った事があり、翼を怖がらせた事があった。
それを思い出して少し落ち込んでいた。
「まあ、これでこの話は終わりだな。結花が鬼使いになったから、お祝いって事で。」
雷黄は結花のドリンクのグラスに自分のグラスを当てて言った。
そこからは翼達と結花達で完全に雰囲気は分かれた。
翼達は普通に食べていたが、雷黄と天渡は自分のハンバーグやドリアをお皿に入れて結花に渡して、結花のパスタを少し貰っていた。
「…あっ。」
思わず勇吹が声を出した。
「…火爪さんも市村さんに少しあげるならあげていいよ。恋人同士なんだろ?」
雷黄が言って勇吹や護も翼とご飯を分けあった。
「…恥ずかしい。私達より結花の方が三人共仲がいいじゃない。」
「俺達結花と一緒に三人寝ているからな。」
天渡が言って翼達は咳をした。
「…っていうか、三人で寝泊まりしたらいいのに。それか片方ずつ、勇吹や護の家に行くか、翼の家に行ったり。双葉は今日家で林田さんと月ヶ宮さんと一緒に昼ご飯食べてるはず。」
「…恥ずかしくない?」
「恥ずかしいけど、楽しい。」
結花は勇吹にズバッと言った。
「じゃあ、こうしよう。双葉さんに今日は火爪さんと五十嵐さん、どちらの家に泊まった方が良いか聞いてみようか?市村さんは瞬間移動出来るから夜だけ一緒に寝ても良いと思うぞ。」
天渡が言って翼達三人は顔を赤くして驚く。
「別に変な話じゃない。服着たままでいいから、一緒に寝るだけ。それだけで大分違う。」
「私は翼と勇吹と護が一緒に寝ても良いと思う。双葉も林田さんと月ヶ宮さんと夜一緒に過ごしても良いけどね。」
「…結花。桃の紅茶飲むだろ?持ってくるよ。アイスでクリームと砂糖1個で。天渡は緑茶のホットだろ?」
「…あぁ、雷黄、頼む。結花、せっかくだし帰りは双葉さん達を連れてドーナツ買いに行くか?双葉さん達の所に無いドーナツのチェーン店あっただろ?」
「あー。コローリィードーナツだっけ?確か双葉の所にないって其田さんと木元さんが言ってたかな。メール送っておこうかな?」
結花がメールを送ると暫くして双葉のクラスメイトからも返事が返って来た。
その返事の中に蒼真が『結花さんの鬼の奢りだぞ。後悔する前に欲しい数を載せろ』と書かれるとポンポン返事が返って来た。
「おいおい。スゴい数だぞ。…もしかして結構なお金を持っていた理由って…」
「あぁ、これだ。」
天渡がその数をメモに書いていく。その間に雷黄がドリンクを持って来た。
「…さてと。お店にドーナツの予約しに行くか。」
天渡が消えて暫くすると戻って来た。
全員が食べ終わって会計に行くと天渡の財布のお金は半分位になっていた。
『天渡さん。ごちそうさま。』
「あぁ。今から一仕事だからな。」
レストランの外にいると空間が避けて、双葉、誠義、蒼真、公正、舞、輝光が現れた。
輝光は光の鬼だから分かる。何故かいる公正と舞に翼達と結花は不思議に思う。
「結花姉っ!来たよ?」
「…うん?」
結花が不思議に思うと天渡が別の財布を公正に渡した。
「あぁ、天渡さん。ありがとう。じゃあ、蒼真と行って来るから。」
「お願いします。」
何をするか見ていると公正は蒼真と舞を連れて酒屋に入って行った。
「天津さんのお酒を頼んだんだ。余ったら好きにして良いと言ったからそこそこ買うんじゃないかな?ちなみにさっきよりは入れて渡した。双葉さんが買い物に行く時に使うみたいだ。」
「あぁ。それで輝光さん、少し機嫌良いのね?」
「…良い酒屋があると聞いてな?その分双葉さんの力にはなる。」
輝光が誠義と顔を合わせると誠義は下を向いたが顔が赤い。
「…!もしかして今日は林田さんだ!」
「…いや、俺も今日は双葉と寝る。双葉の部屋に和室があって、布団もある。」
酒を買い終わって酒屋を出た蒼真が言った。
やはり顔が少し赤い。
結花は指を両手の指をチョキにして蒼真に変な笑みを浮かべている。
「…結花。お前むちゃくちゃニヤニヤしてるぞ?」
勇吹が言うと蒼真がじっと見た。
「…火爪さんの家と五十嵐さんの家は空いてる部屋と布団があるんだよな?」
その言葉に翼を含めてドキッとした。
結花が蒼真を見ると蒼真も結花に両方の手の指をチョキにしていた。
「じゃあ、翼は今日は勇吹の家かぁ。まあ夕御飯食べた後に行ったら良いからね?」
やはり結花は怪しげな笑みを浮かべた。
「…市村さん、なんかごめんね。結花姉むちゃくちゃ恥ずかしい事して。」
「いや、私が一番勇吹や護とコミュニケーション取ってなかったから。…反省しなきゃね。」
「…え?翼さんが?火爪さんや五十嵐さんじゃなくて?」
その言葉に勇吹と護が自分達が翼に積極的にコミュニケーションを取っていない事にやっと気がついた。
「…やっと火爪さんと五十嵐さんは気がついたか。」
「なんか鈍感よね。まあ付き合いだしてあんまり経ってないからいいけどさ。」
雷黄と結花が話している間に天渡は天津の山への空間を繋げた。
結花達が天津の山へ行くと気配を感じて天津が火鬼とやってきた。
「こんにちは、結花さん。双葉さんもすまないな。」
「公正さんと輝光さんもお酒を飲みたかったみたいだから。」
双葉が天津と話していると舞がお酒の瓶を数本出した。
「…天津さん。木鬼さんは?」
「昨日の場所にいる。少しは草が生えているが、へし折れた木はあいつには直せないからな。」
「じゃあ、皆行こうか?」
結花が皆を連れて荒れた山に向かった。
木鬼は折れた木に背を置いて座って静かになっていた。
結花はリョクを出した。双葉も生命の巫女の姿になった。
「まあ、先に折れた木の修復をしようか?」
「じゃあ、リョクさん折れた木をまた垂直に戻して。私がそれを修復するから。」
リョクの力で木を垂直にして、双葉が力を送ると少し傷が見えるが直ったようだった。
「結花姉、これで終わった。けど、木鬼さんは木が折れる時の声が聞こえて暫く元気がないと思う。」
「木鬼殿!昨日はすみませんでした!」
「昨日はごめんねー。木鬼さん。」
リョクが頭を下げて、結花も一緒になって謝ったが、やはり顔を上げたがすぐに下げた。元気はない。
木鬼の回りに青い花が咲き出した。
「…結花さん。花を咲かせたからそっとしてあげよう。」
「林田さん、ごめんね。…じゃあ、木鬼さん。私は青龍を鎮めないといけないから行くね?」
結花が言うと木鬼は頷いた。結花が振り返ると翼と双葉の顔を見た。
「…どこに出るの?青龍。」
「結花、私が黄鬼さんと川辺で試練受けた事があったでしょ。あれの上流。ただ、水の力をかなり使うから気をつけて。双葉さんの時と違って現実世界で大量の水を出すから。」
「…ヤバくない?それ?」
「だから、輝光さんと鈴音にも手伝ってもらう。」
「その為のお酒とドーナツね。納得。…勇吹と護はなるべく防御ね。…確か勇吹は水を蒸発させたり、護は水の流れを岩で変えたり出来るよね。…結構頭脳戦になりそう。」
結花が少し頭を悩ませた。少し前に双葉の水鬼鈴音が悪鬼になった時は大量の水を作った。
ドーム型のバリアを包む水。恐らく同じ位はあるだろう。
今度は翼が黄鬼と戦った川辺に空間を繋げた。
結花達が行くと既に辺りは曇っていて、水滴が浮いていた。
「…結花姉。私達が来た意味、なんとなくわかるでしょ?青龍、結構力が強くて危ないからさ。」
「マジやばくない?異空間レベルじゃん?」
歩いていると子供の泣き声が聞こえた。前方には少女がしゃがんで泣いていた。
ただ、結花は何か違和感を感じた。
「…結花姉。違和感感じるでしょ?結花姉の中の力が妖怪を感知しているの。泣き子って妖怪よ。」
双葉が言うと少女は結花の方を振り返った。
白目で泣きながら笑っていた。
「うひひひひひっ!」
少女は笑いながら四つん這いで走ってきた。
「うわーっ!気持ち悪すぎてやめて!って感じ!」
結花が慌てる中、天渡が刀で泣き子を斬り倒した。
「…一応、何人も泣き子がいるから結界張ってるけど気をつけてね?」
「火爪さんと五十嵐さんは土地勘あるんだったかな?火爪さんと誠義君と輝光さん、五十嵐さんと蒼真君と鈴音ちゃんで西側と東側をお願い。今の所西側と東側は泣き子だけしかいないけど、負のオーラを放っているの。真ん中はちょっとヤバイのがいるから私達で行く。」
「…ヤバイのって…。大丈夫か?」
勇吹と誠が双葉を見た。
「…刀で向かうと不利だから。…不安かも知れないけど、市村さんと結花姉は任せて。」
「勇吹、護。私は大丈夫だからお願い。結構泣き子の負のオーラが強いの。それに西も東も赤ん坊がいる家がいるの。」
「…っ!そういう事かっ!」
護達は川を飛び越えて東側へ。勇吹も西側を走った。
「…ようは、弱い赤ん坊の生命を奪うつもりね。…後ヤバイのって奥のブヨブヨした塊でしょ?」
結花が指差すと前方には何か塊が蠢いている。
「…腐乱霊。腐った肉の妖怪だけど、浄化しないと土や水に病原菌を撒き散らすから。結花姉は絶対攻撃しないで。」
「…さてと、まずは小さな空間に包まないとね。」
腐乱霊は人間五人分位の大きさだった。翼が空間に包むと雷黄と天渡が術で攻撃した。
赤黒い煙を出すと無数の顔が蠢いた。
「…気っ持ち悪っ!霊って言うから気体何でしょ!」
「そういう事。まあ翼さんでもいけるけど、私の方が浄化は強いから。」
双葉が緑色の光を出すと赤黒い煙は消えた。
それを勇吹や護達が険しい顔で見ていた。
「…終わったけど、ヤバイな、さっきの妖怪。」
「…近くで見たらむちゃくちゃ気持ち悪かった。」
「…大丈夫?結花?」
勇吹や護が心配する中、天渡が近づいて掌から光を出した。
「…精神的な負担があるからな…。どうだ?結花?落ち着いたか?」
「…うん。大丈夫。…翼や双葉は?」
「…私は九尾の狐の力は闇の力もあるから大丈夫。」
「私は生命の巫女だから耐性あるから。雷黄さんも大丈夫かな?」
「元々輝く石の光の力を吸収していたからな。特に結花はまだ幻魔の石が一個だから。市村さんや双葉さんに比べたら強い負の力に弱い。気をつけているけど、あまり前に出ないようにしろよ?」
雷黄が言うが結花は少し落ち込んでいた。
(私、足手まといかな?)
「…結花。結花は足手まといとか、役に立ってないとか気にしなくていいんだ。危険な場所で幻魔を鎮めて主人になれるのは結花だけなんだ。普通の人間には辛い場所にいる。だから気にするな。な?」
「…うん。」
天渡と雷黄が結花の手を繋いだ。それを見て誠義と蒼真もムッとして双葉の手を繋いだ。
「…勇吹と護も握る?」
翼は笑って言った。
「…ごめん。俺が言う台詞だ。」
「くっそー。何か俺達が一番鈍感だな。少し腹立ってきた。」
護と勇吹は少し機嫌が悪くなった。
山の中に入ると流石に泣き子はいなくなったようで子供の泣き声は全く聞こえなかった。…が、どこからかバチバチと電流が流れる音が聞こえる。
「…電線無いのにこの音はおかしいでしょ?」
「そろそろ青龍の前だからね。電気海月の怪異がいるみたい。…ほら、あれ。」
双葉が指差す先に空中を浮かぶ青い塊があり、下から電流が流れていた。
「…また、何となく下の電流で獲物を始末して魂抜き取ります、みたいな感じの怪異ね。」
結花が光の玉を掌から出して放つが呆気なく倒した。だが、まだ音はする。
「…これは…結構いるでしょ?」
「当たり。青龍と戦う時は水に触れたら来るから気をつけて。」
周りを気にする結花に翼が言った。
先に行くと長い体をした青龍がいた。
結花の頭に浮かんだのは緑色の長い蛇の映画だ。
(青い龍のアナコンダじゃん。)
「誰がアナコンダだ!蛇と一緒にするな!」
青龍は体を立ち上がらせると体がかなり長い事が分かる。30メートルはありそうだ。
「結花。何怒らせてるんだよ。」
「だって長かったら蛇じゃん。手足生えた蛇。」
勇吹が少し結花に怒って言うが結花は気にしていなかった。
「まあいい。怪異でお前達を誘き寄せたから始末してやろう。川の下に住んでいる人間共々なっ!」
青龍の体から激しい水が溢れる。結花は電流の塊を作って投げるが水に防がれた。
「…電流流れない水かぁ。じゃあ、木の術ね。」
青龍の周りを回る水から大量の木が生えた。もがき苦しみながら電流を放って逃げ出そうとした。
「…結花。相手の大技、来るからこっちに来て。」
翼に言われて空を見上げると大量の水が浮かんでいた。
「…ハッハッハッ!串刺しになれっ!」
空から大量の水の槍が降りだす。輝光が上空に空間を開けて水の槍を他の場所に移していた。
地面に落ちた水は大きな穴を開けてプルプル震えると結花達の方に向かって鋭い槍になって飛んできた。
翼、鈴音、誠義、勇吹、天渡が必死に地面から飛び出す水を防ごうとする。
「ハッハッハッ!動けないだろ!終わりだ!」
青龍は笑いながら言うと背中に激しい痛みを感じた。
強い衝撃で地面に倒れた。
青龍の背後は空間が開いており、翼と天渡の空間と通じていた。
「流石に五人分の攻撃受けたらきついでしょ?後は皆、ここよ?」
結花は頭を指差して言った。
翼の空間から勇吹、護、誠義、蒼真、天渡、雷黄が飛び出して青龍の頭を攻撃した。
「うがぁあああっ!」
青龍は声を出すと口を閉じ、体から水を散らしながら水色の塊になった。
「じゃあ、セキ。水の石になりなさい。」
結花が言うと青龍は水色の宝石のような石になった。
「…へぇ。こうしないと幻魔に出来ないのね。結花姉でないと無理そうね?」
「まぁ、でもまだ二人目よ。…双葉の時と同じだよね。鈴音さんの時に一緒にいたからね。…月詠さん達は今日いないけど。ちょっと前だったよね。なんか懐かしい感じ。…さてと、そろそろコローリィードーナツに行こうか?」
天渡でコローリィードーナツ前に空間を繋げた。
空間の先はマスコットキャラクターのコローリィーがドーナツを持っている看板が目に入った。
双葉や鈴音、舞は初めて来るので楽しそうにしていた。
「…結花も初めてなんだろ?」
「うん。気にはしていたけど、遠いからさ。」
結花をさりげなく雷黄が抱き寄せた。
それを誠義や蒼真、勇吹や護が見ていた。
中に入ると天渡がかなりの量のドーナツを貰っていた。
「…一番大きいのが双葉さんと鬼達の分だ。後は林田さん、月ヶ宮さん、井川さん、其田さん、東野さん、根綱さん、木元さん、畑田先生の分だな。こっちは五十嵐さんと火爪さん、これは市村さん達の分だな。中に勇吹さんと護さんの分を入れている。後は結花の家の分。」
双葉達の方はかなり量があるのでまた舞が異空間にドーナツを入れた。
「良かったね?鈴音ちゃん、舞ちゃん。…じゃあ、私は皆にドーナツを配るから先に帰りますね。」
「双葉。今日はありがとう。またね。」
双葉は輝光に高校の前に空間を繋げてもらっていた。近くの広場に集まるのだろう。
双葉は結花に手を振ると帰った。
「じゃあ、私達も帰ろっか?翼達は一回ご飯食べてから集まるんだっけ?あっ、良いムードの中、ごめん。明日の幻魔は何?」
「明日は朱雀。火と風ね。火は護の方が有利で、風は雷黄さんが有利。…だけど、飛んでるから逃がさないようにしないと。明日はまた私も行くから。むしろ、行かないと町が燃やされるわ。」
「…なんだかごめんね。厄介ね。明日はお昼過ぎにね。」
結花は天渡に家までの空間を繋げてもらうと手を振って帰った。
「…うーん。絶対翼達三人気まずいでしょ?もう少しオフの時間を三人で過ごして欲しいな。」
結花が玄関を開けて家に帰った。
「ただいま。」
結花が言うと母親がやってきた。
「お帰り、結花。お風呂入るでしょ?…あら、ドーナツ?確か結構離れた所のドーナツ屋さんよね?」
「双葉達の所にないからさ。天渡が注文して買ってくれたの。」
天渡が結花の母親にドーナツを見せると中にはいろんなドーナツが入っていた。
結花がお風呂に入って出ると夕食が用意されていた。
天渡と雷黄が結花の中に入ると結花は水色の石を出した。
「青龍のセキ。…強かったわ。雨の槍を降らせて、地面に落ちたらこっちに向かって雨の槍が飛ぶの。」
結花がセキを出すと青いポニーテールの男が出てきた。
相変わらず首輪やネックレスをつけていた。
「セキ。お母さんがご飯作ってくれたからお礼言って食べてね。」
「…はい。母君、いただきます。」
セキは唐揚げを箸でモグモグ食べていた。手掴みじゃなくて良かった。
「…明日は朱雀って言ってたかな?たぶん暑くなるから洗濯物は良いと思う。問題は町に逃げられたら火災になるから阻止するわ。今日は…。セキが呼んだ妖怪が子供の命を奪おうとしてたのはそれはそれで駄目だけど。」
「…うっ!す、すみません。操られている時は全く悪事を気にしないので。」
「まぁ、結花が未遂で止めたのね?何だか、危険だけど結花にこの人達の暴走を止めてもらわないと大事になりそうね。気を付けなさいよ?結花。」
「はーい。明日はセキの力がいるから。頑張ってね。」
「はい。我が主。」
「…結花さんよ。結花さん。主だと外で白い目で見られるから。駄目、絶対。」
「…っ!はいっ!」
食器を洗い場に運んでセキを幻魔の石に戻すと結花は部屋に戻った。
メールが来ていた。送ってきたのは透。
「中村さん!明日雫と要と幻魔退治のお手伝いをするからコローリィードーナツが食べたいです!お返事待ってます!(^-^)」
「…何で二瀬さん、知ってるの?ドーナツの事。双葉が言った?」
結花が不思議がると天渡と雷黄が出てきた。
「…結花。其田さんの動画チャンネルだよ。」
雷黄が言って結花は動画サイトを開いた。
「こんにちは!ソノチャンネルのソノです!今日はなかなか食べれないレアなコローリィードーナツを友達のお姉さんからいただきました!いろんな種類があります!じゃあ早速食べてみようと思います!」
其田君の動画のコメント欄には「トールに買ってきて貰えるか頼もう!」と書かれていた。
「…これね。たぶん二瀬君のクラスメイト。って、黒澤さんは大丈夫かな?」
三人のグループチャットに連絡すると明日幻魔退治に来ると連絡が来た。
結花がドーナツの数を聞くと結構な数の注文が来た。
「…天渡、九グループ分、行けそう?」
「あぁ、大丈夫だ。」
結花がOKサインを送ると其田君のコメント欄に「買って貰えそう!」と書かれている。早すぎる。
「…結花ー。そろそろ皆でドーナツ食べましょう。」
「はーい。」
結花は居間に行って幻魔を出して父親抜きの六人でドーナツを食べた。
「初めて食べるけど、軽くて味がしっかりしてる。これはレアなドーナツって言われるね。」
「さっき見ていた動画の人も食べていたわね。」
「…お母さん。それ、ソノ?」
「…知り合い?」
「双葉のクラスメイトよ。」
「…天渡君。ご馳走になりました。」
双葉の母親は苦笑いをしていた。
「…世界って狭いわね。」
「いや、日本だし。」
双葉は笑って言った。
その頃、翼は勇吹の家で誠と三人でドーナツを食べていた。
「…甘すぎないし、油っこくないから食べやすいね。…早速其田君の動画で友達から聞いて透君が結花にメールで明日手伝うからこのドーナツを買って欲しいって言ったみたい。」
「あぁ、これか。この感じは男だな。…たぶん、天渡、俺達の好きな味のドーナツ選んでるな。俺イチゴ。翼がピスタチオで誠がキャラメルアーモンドだろ。」
「…翼、今日はごめん。」
「…うん。」
翼は誠の頭を撫でながら言った。
結局翼が寝る時は勇吹と誠が間から翼の体に両手を置いて甘えるように寝ていた。
(…なんだか不思議。あんなに怖い表情見せるのに甘えるんだから。まだちょっと感情が未熟なのかな?まあ、私も一緒か。甘えるのは苦手。)
双葉の家は大量にドーナツがあった。まあ公正や輝光はお酒を飲んでいたのでプレーンのドーナツを食べていた。
「…双葉が桃とブルーベリーだな。誠義がチョコミントと抹茶。俺がコーヒーとティラミスだな。」
「結構いろんな味があるみたいね。鐵広君のパイナップルと天外さんのレモンはビックリしたけど。」
「俺は朱馬がシナモンのドーナツが好きだとは思わなかった。鈴音がマカダミアナッツとホイップで舞がミルクとチョコレートか。」
誠義はチョコミントのドーナツを食べながら言った。
「…確か皆違ったよね?」
「あぁ、天渡さんは誰が何が好きか分かるみたいだぞ。明日は黒澤さん達の分も買うみたいだ。其田の動画に早速書かれていた。」
双葉が見ると大体誰だか分かった。
「…佐藤君ね。普段真面目にしてるけど、オフはお調子者な所があるから。」
「…さてと、食べ終わったら和室にいようか?親父さん、帰ってくるだろ?」
「うん。」
蒼真に言われて三人が和室に行くと蒼真と誠義は交互に双葉を抱いて座っていた。
同じく、結花も天渡と雷黄と座って抱かれていた。
「…前に翼が護が怖かったって言ってたけど、今日分かった。反省。赤色の目で見られたら怖くなるね。」
「まぁ、お互い様だな。五十嵐さんの気持ちは分かるが、女性の前で『殺す』は駄目だな。」
「殺気を抑えれないのかもな?今日は結花が泣かなくて良かった。心配だったからさ。よしよし。頑張った。」
雷黄は結花の頭を撫でながら言った。
「さぁ、続きはベッドでやろう。」
天渡は結花をベッドまで抱き上げて連れて行った。
結花は天渡と抱き合うが少しキスをした。暫くすると雷黄も顔を近づけた。そして、雷黄ともキスをした。
「…結花。もう恥ずかしくないね?俺達と愛し合おう。」
「…うん。」
その日の夜、結花は天渡と雷黄からキスをしてもらった。
少し甘いキス。
最後は雷黄の胸で結花は子供のように眠った。
今回は鬼人達の宴朱のAエンドだから勇吹もだけど、護ともギクシャクする流れになりました。
中途半端に守りたい気持ちは良くあるんじゃないかな。
それって酷ですよね。
元々勇吹と雷黄が仲悪い予定でしたが、変わりました。
冷酷な護と挑発的な天渡が一番仲が悪くなりました。
上手くいかない事もあるさ。
次回に続け。




