幻魔達の華 第一章 草の獣
今回は第一章ですが、最終的に全部のシーンが長くなりました。
特に最後のラブシーンがね。
誤字、脱字があったらすみません。
結花は翼と護と昼御飯を食べに食堂に行った。
「夢で天津さんから貰った輝く石を割ったみたいで、朝起きたら粉々になっててさ?」
「何かしたの?結花?」
「天渡と雷黄に名前を付けたら壊れちゃった。」
結花が巾着袋を開けると粉々になった白色の石が入っていた。
「これは…。結構派手に壊れているね。」
「流石にちょっと天津さんに言わないと悪いからさ。」
結花が護に言った。
昼御飯を食べながら、昨日の夜に勇吹に土曜日の誘いを断った事が頭に浮かぶ。
「…今日が木かぁ。後は水、火、土、風、氷、月、闇かなぁ。氷はどれも強いよね?今から寒くなるのにもっと寒くなるじゃん?」
「…闇は皆特殊よね?私は闇九尾の狐からだけど、黒澤さんが池の呪いの男の召喚、双葉さんが冥界よね?」
「…天渡鍛えないと駄目じゃん?いや、鍛えるって何か分かんないけどさ?」
結花が言いながら護を横目で見た。
「…護はね。双葉の時は手伝って貰ったけど、流石に不安になったから氷の時は来て欲しくないな。」
「…なっ!大丈夫だよ!」
護は機嫌悪そうに言った。
「…いや、護だけじゃないって。水の時は勇吹、操られたでしょ?あれとか。」
「…まぁ、私もちょっと心配したから、結花の気持ちは分かるかな?でも、護も勇吹も行かないと気がすまないでしょ?」
結花が言うが翼は苦笑いして言った。
「…気を付けるからさ。一緒に行きたい。除け者は嫌だ。」
護は拗ねるように言った。
(あぁ。勇吹もこんな感じ?って言うか、護、こんな感じだっけ?)
「…結花。護は昔の岩愧の時の記憶を思い出したから前とは違うのよ。勇吹も一緒。旭陽の記憶を思い出したから鬼としての気持ちが強いの。結花が大切な友達だから逢えないと心配になるみたい。」
「…それでね。明日昼御飯誘われたけど、翼を誘いなよって昨日断った。何かあったらいつも勇吹を頼ったのが仇になったか。」
結花は頭を悩ませて言った。
「…俺も勇吹のポジションなら、同じ事をしていたかも。」
「うー!私!気を使ってるんだからね!…明日四人で昼御飯。もう!それでいいでしょ?」
「あぁ。分かった。四人で昼御飯だね。」
護は少し嬉しそうに言った。
午後の授業を終わらせて。大学前に行くと勇吹がいた。
「結花。久しぶり。来たよ?」
「…うん?来るの頼んで言うのもあれだけど、最後に逢ったの一昨日だからね?」
結花はまた頭を悩ます。翼の鬼何だけど…。
「…勇吹。明日の昼御飯、四人でね?」
「…!分かった!」
翼が明日の昼御飯の話をすると勇吹は笑顔で喜んだ。
「…って、今日は木の精霊が出るみたいだから。勇吹、フォローお願いね。」
「あっ。分かったよ。…って、結花。鬼使いになったって?」
「うん。光鬼の天渡と雷鬼の雷黄。…呼ぼうか?」
結花が目を閉じて掌を出すと二人の鬼が出た。
「…初めまして。光鬼、天渡だ。結花に名付けられた石の鬼だ。」
「俺は雷黄。結花のオーラの鬼。よろしく。」
二人は手をあげて笑顔で言った。
身長は雷黄は護と同じ、天渡は一番大きかった。
「えっと。大体私達の事、知っているのよね?今日はよろしく。…聞いていると思うけど、今日は木の精霊が出るの。向こうに火、氷、木の鬼と天津さんがいるけど、強いから勇吹にも来て貰った。」
「…え?八人も鬼が必要なの?」
「…闇の力が強いから毒液や硫酸を撒くから。気を付けて。かと言って、火に必ず弱いわけじゃないの。体が赤くなったら火に耐性を持って、土、水に弱くなって光の術は普通にダメージが入る。まあ木と火、そして闇の力があるの。」
「…じゃあ、護の力も必要じゃん。」
結花が横目で護を見たら笑顔を見せた。
「結花も必要なら俺の力を使っていいからね?」
結花は少し考えながら天都と雷黄の顔を見た。
「…二人共、援護はいける?」
「…あぁ。俺は得意だ。雷黄もいけるな?」
「俺なら毒液と硫酸は雷の力で分解出来る。」
「…決まりね。でも、勇吹と護は油断しないでね?」
「あぁ!任せろ!」
「俺も全力で行くよ。」
結花が言うと翼は天津の住む山への空間を開いた。
「…先に天津さんね。とりあえず、木の精霊は近づいたら危ないのに妖術の耐性は高いの。気を付けてね。」
四人が移動すると奥に氷鬼、火鬼、土鬼がいた。
氷鬼は相変わらず体格が良い鬼だ。
火鬼、土鬼は初めて見た。
火鬼は赤色の長髪の男、土鬼は天津のような茶色の短髪の鬼だった。
「…む?お前は…」
「…久しぶり。氷鬼さん。中村ちゃんだよ。天津さんから貰った輝く石が鬼になっちゃって、石が壊れちゃったから謝りに来たの。」
結花が言うと天渡と雷黄は頭を下げた。
「…娘よ。普通は天津様のように無から鬼になる事は滅多にないのだぞ。それも天津様の石。何をした。」
火鬼は少し怒っていた。
「…名前。付けたの。寝ていたら、輝く石の中にいて、二人がいたの。それで名前を付けたら実体化したの。」
「…それは名前を付けなくても鬼になっていたと言う事だ。普通はあり得ぬ。」
土鬼も少し怖そうな顔をして言った。
「…止めぬか。火鬼、土鬼。そんな顔をしたら、中村さんが恐れるだろ?」
奥から天津さんがやって来た。
「天津さん。久しぶり。…聞こえた?天津さんの石、壊れちゃった。…天渡と雷黄に名前付けたら壊れちゃった。」
「…天渡、ねぇ。お嬢ちゃん、天津様の名前から名付けただろ?」
「えへへー。」
氷鬼が言うと結花は照れ笑いで言った。
火鬼と土鬼の表情はまた怖くなる。
「…火鬼、土鬼。お前達は真面目過ぎるから試練に出しにくいな。そう怒るな。さて、中村さんの夢は俺も見た。市村さんの時もそうだが、特殊な夢を見ると不思議な力に目覚める時がある。…分かるな?火鬼、土鬼?」
「…まさか、自然の力から命を生み出す…。」
「…光と雷の力から鬼を作ったのか…。」
火鬼と土鬼が言って結花が双葉の事を思い出す。
「…私も生命の巫女?」
「…いや、違うと思うな。おそらく創造の力だろう。」
「…結花、分かる?反対は破壊、魔女よ。」
「…あっ!そういう事ね。」
その事に氷鬼達や天津の表情が変わる。
「…市村さん。俺はうっすら人影しか夢で見ていない。…相手は魔女か?」
「…結花がハッキリ見ました。…そして、今から木鬼さんの元に闇の力の木の精霊を送って来ます。彼を浄化するのに力を貸して下さい。」
「…ここは俺の領域だからな。木なら土鬼、ここの護衛は任せるぞ。」
「…御意。」
「…あっ。氷鬼さん。気を付けてね?赤くなったら火の属性になるんだって?」
結花が言うと氷鬼の表情は悪くなる。
「…とんでもない精霊だな。変わったら俺は援護だな。」
「火に変わったら俺が押さえておこう。」
火鬼が言うが翼の表情は良くない。…たぶん、強すぎて相手の力を押さえる事が出来ないのだろう。
暫くすると空が黒くなって何かが落ちると黒色のドーム型の空間が広がって結花達は黒色の空間の中にいた。
「…今回はこんな感じね?やっぱり黒澤さんや双葉の時に似ているかも。」
「…異空間を出すタイプか。余程力があるのだろうな。」
天津が言い、歩いて行くと草の生えた死人のようなものがいた。
「…天津さん。ここってゾンビみたいなのっているの?」
「…あんな禍々しいものがいたらすぐに始末するぞ。」
天津が光の玉を放つと死人は塵になった。
「あれって人間?それとも作られた怪物?」
「作られたものだろうな。人の形をしているが、何も残らなかったからな。骨があれば骨が残るんだ。」
「…用心した方がいいな。突然現れる妖怪だな。」
火鬼が後ろから現れた草の死人に炎を放った。
結花も横から現れた草の死人を光の玉を放って倒した。
「こういうのって噛まれたらゾンビになるのかな?」
「ゾンビにはならないけど、肉は引きちぎれるみたいよ。」
「…あー。嫌だ。早く帰りたい。…っていうか…。草鬼の所もこうなっているよね?早く行かなきゃ。」
「…結花。待って。次がいる。」
道の先をいくつか緑色の塊が浮いていた。
「…樹液に霊を宿したものだろう。氷鬼、凍らせろ。」
「御意。」
氷鬼が樹液の霊を凍らせると地面に落ちて割れた。
空中に浮くだけなら良いが、中には木にくっ付いて枯らせている樹液の霊もいた。
氷鬼は凍らせたが、全員ため息をついた。
「…これは草鬼がショックを受けるな。」
「私も同じ事を思った。…今度双葉に相談しようかな…。」
「その時は私も力を貸す。まあ、明日のお昼は双葉さん、予定空いていて大丈夫じゃないかな?」
「じゃあ、お願い!私も木の精霊にご飯あげて手伝わせるから!」
翼と結花のやり取りを見て天津は少し安心した。
「頼む!もうやめてくれ!」
草鬼の声が聞こえた。
「黙れ。この山の木を腐らせて土砂を町に流してやる。」
もう一人声が聞こえた。
「…こういう事ね。土砂を町に流させるわけないでしょ!」
結花は走って行った。
奥には何本か腐って倒れた木があり、傷ついた体の木鬼がいた。
奥には全身緑色の体をした怪物がいた。
(スピード命でしょ!光線タイプならすぐに当たるはず!)
結花は火の力を集めて座り込む木鬼に近づく木の精霊に火の光線を放つ。
「…っ!お嬢ちゃん!」
「大丈夫!木鬼さん!こいつ木と火の力使うから気をつけて!」
結花が木鬼の前に立った。
「…っ!来たかっ!我が主の邪魔をする娘!」
「邪魔するに決まってるでしょ!どうせとんでもない事するつもりでしょ!土砂を町に流して何するつもりよ!」
「人間達を殺して魂を奪う!やつらを闇の力を集める贄にするのだ!」
怪物の言葉で池の呪いの男や源三朗が贄を求めていた理由が分かった。
「…そういう事ね。不老長寿の力を貯めたりする為ね。…ペラペラ喋っちゃったね!もう帰れないんじゃない!」
結花は挑発するように言った。
「…おのれ!おのれぇ!許さぬぞ!」
木の精霊は体を赤くさせた。
「娘!何を怒らせている!」
火鬼が慌てて言うが、天津は手を上げて静かにするように言った。
「…わざと怒らせて逃がさないようにしているのよ。…結花らしいわ。」
翼は小声で火鬼に言った。
木の精霊は結花に手を向けると周りの木の葉が燃えながら結花に向かう。
天渡が結界で防ぎ、雷黄が結花の元に向かう。
「…フン!馬鹿め!隙だらけだ!」
雷黄の地面から草の槍が飛び出して突き刺さる。
だが、結花は動揺していない為、草の精霊は違和感を感じた。
精霊の背後から雷黄が刀で斬りつけた。
怯む精霊を蹴り飛ばすと前から走って近づいた天渡、護が斬りつけた。
「私の従妹、不意打ち得意だから勉強になったの。よく言うでしょ?馬鹿にする方が馬鹿って。」
結花はまた挑発をした。だが、同じ手に乗らないように精霊は周りの木から力を吸収して回復しようとした。
「…木鬼。俺の力を貸そう。光の力を木々に宿らせろ。」
「はあぁあっ!」
天津の力を木鬼が周りの木に送ると精霊は手を止めた。
「…闇の力が弱まるから回復出来ないよね。勇吹。火の術を使うから行くよ!」
結花が火の力を集めて精霊に放った。
「…はっ!そんな力で俺がやられるか!」
精霊は前に強い結界を張って結花の術を防いだ。
火の術が消えて精霊が邪悪な笑みを浮かべたが、結花も余裕の表情をしていた。
精霊は背中に痛みを感じて振り返ると翼の空間移動で精霊の背後に現れた勇吹が刀を振り終わっていた。
「…結花を馬鹿にするんじゃねえよ!化け物!」
木の精霊はそのまま倒れると体が緑色の光の塊になった。
「…結花。木の精霊に名前付けないと駄目みたいよ?」
「…え?木の精霊…リョク?」
結花が言うと光の塊は緑色の宝石みたいな石になった。
余りにも単純な名前で勇吹がちょっと複雑な表情になった。
「…単純すぎないか?」
「いいの。いいの。分かりやすいじゃん。」
結花は石を拾うが、周りは荒れ果てていた。
木鬼も元気がない。
「…派手にやったね…。明日直しに来るから、木鬼さん落ち込まないで。」
「うぅう…。」
「…回復は終わったな。…氷鬼、火鬼。運んでおいてくれ。」
「御意。」
「…っ!重てぇっ!木鬼!しっかり歩け!」
氷鬼は体格が良いが、火鬼は普通なのできつそうに運んでいた。
「…さてと、また面倒な敵が現れたな。また何かあれば中村さんや市村さんに力を貸すからな?」
「天津さん。木鬼さん悲しませてごめんね。明日のお昼にまた来ます。」
「うむ。待っているぞ。」
結花が天津に謝ると翼の空間移動の力で大学に戻った。
「翼、勇吹、護。今日はありがとう。…って、リョク、強かった。明日もかな?」
「…そうみたい。明日は青龍ね。」
翼が言うと三人はギョロ目になる。
「…っ!いきなり龍!本格的に私を潰しに来てるじゃん!…明日はまた考えて戦わなきゃ。」
「…結花。明日も俺、手伝うから。」
勇吹が言うが結花は少し考えていた。
「…翼。もしかして、水と何か?」
「そう。水と雷。」
それを聞くと勇吹と護の顔を見た。
「…二人とも水は不利だから、無理しない程度でね。」
「…そうだね。って、勇吹、機嫌悪くするなよ。」
「…はぁっ!分かった!分かった!」
勇吹は以前水の妖怪にやられかけたので機嫌が悪かった。
「…さてと。結花。買い物して帰るだろ?一緒にお店に寄って帰ろうか?」
雷黄と天渡は角を消して上着とズボンを着た格好になった。
「…え?そんな事も出来るの?…じゃあ、私達はちょっとリョクの夕御飯を買って帰るね。明日昼御飯食べに行くなら11時半集合でいいんじゃないかな?…後で双葉に連絡しなきゃ。やる事いっぱいあるなぁ。今日は三人共ありがとう。」
「うん。また明日ね。」
翼が即座に返事を言ったので結花は商店街に向かった。
「…勇吹、一緒に行こうとしたでしょ?もう結花は自分のパートナーの鬼がいるし、勇吹のパートナーは私だから。結花が勇吹から距離おこうとしてるんだから邪魔したら駄目よ。」
「…うん。」
勇吹は翼に抱きついて甘えた。
「…何やっているんだよ。勇吹。」
「…翼。俺、ちょっと淋しい。」
「はいはい。よしよし。」
「勇吹だけずるい。翼、俺も。」
「…はいはい。護もよしよし。」
翼は二人の頭を撫でた。
「…だ、そうだ。」
天渡は光の玉を結花に見せていた。
「…勇吹ってお子さまなんだから。…まあ私も。天渡と雷黄に甘えたいから人の事言えないけどさ。」
「結花もこっちだよな。まあ、これだとあの鬼の方が甘えてくるか?」
雷黄は結花の頭を撫でて言った。
「…そう!私だって甘えたいんだから!翼がもうちょっとスキンシップ増やさないと!」
「…黒澤さんはお互いバランス良く甘えあっている感じか。双葉さんと東野さんが甘えるタイプか。」
天渡が光の玉の風景を変えると雫は透の頭を撫でながら要に頭を撫でられていた。
双葉は今日は家に誠義と蒼真がいるらしく、二人から頭を撫でられていた。
杏璃は部屋の中で辰夜に抱かれていた。
「…これを見たら翼が一番良くも悪くも大人し過ぎるって感じなんだよね。」
「九尾の狐の力を持っているけど、邪悪な力で男を惑わしていた狐と逆の力を持つせいかもな。」
「…そっか。そういう事ね。罪悪感があるんだ。双葉もそうだったかもしれないけど。」
「…俺達は双葉に甘えてほしいな。好きなだけ抱きついていいからな?」
「お店とかでイチャイチャはしないけどね。買い物してて『邪魔、うざっ』ってなるから。狭い場所でイチャイチャされて迷惑だった事あるから。」
「あぁ。夜に三人でな?」
結構大胆に雷黄が結花に言う。強気だけど、言えない勇吹と真逆な感じがする。
買い物を終えると結花は今から鬼を連れて家に帰るとメールを送った。
天渡が結花の家の前に空間を繋げた。
結花が鍵を開けて入ると両親がやってきてギョロ目になる。
まあ、娘が男を二人も連れて帰ったらビックリするよね。
「ただいま。天渡にここまで空間を繋げてもらったからすぐ帰れちゃった。こっちの銀髪の人が光の鬼の天渡、金髪の子は雷の鬼の雷黄。」
「お…鬼って!普通の人間じゃないか!」
「あ?じゃあ、二人共元の鬼の姿に戻っていいよ。」
結花の父親が少し強気で言うので二人に鬼になるように言うと元の姿になった。
「光鬼天渡です。結花さんの光の石として仕えていて、名付けで鬼の姿を得ました。」
「雷鬼雷黄です。結花さんの中にある雷の気が名付けで鬼になりました。」
二人共丁寧に言って頭を下げた。
「…まあ、雷黄はずっと私の中にいたし、天渡は先月からいたからお父さんとお母さんの挨拶は無しで良いか。山の中に入ったからお風呂入るね?二人共、市村さんと黒澤さんと双葉の事と私の今日あった事、説明してね。はい、アイフォン。中に鬼と写った写真あるから見せてね。」
結花はお風呂場に向かおうとした。
「ゆ…結花!」
「何?お父さん?」
「…あ…。いや、ちょっとお母さんと二人きりは…。」
「何言ってるの?秀雄叔父さんは一人で双葉無しで話したって聞いたよ。後、さっき上から目線っぽいから駄目。」
「結花!早めに出てきて!」
「えー?嫌。」
結花は笑顔で父親の返事に断るとお風呂場に向かう。
機嫌が悪いのだ。
「…夕御飯の準備をしていますよね?居間でお話ししましょうか?後、飲み物はいりませんから、時間稼ぎをしようと思わないように。お父さん、ゆっくりお話しましょうか?」
「…お父さん、しっかりして。」
雷黄は笑顔で言うが、目をわざと光らせた。もちろん怖がらせる為だ。
結花の母親の方がしっかりしている。
居間の場所は天渡も雷黄も知っている。
移動してすぐに説明を始めた。
「…朝、月詠先生と市村さん、火爪さん、五十嵐さんの話はお母さんに話していたかな?先月市村さんが鬼を使役する力に目覚めて、鬼の力を持つ火鬼の火爪さんと土鬼の五十嵐さんと九尾の狐を倒して市村さんが九尾の狐になる力を持っています。その際に月鬼の月詠先生と共に結花さんの命を救ってます。
その後に民泊に泊まった際に黒澤さんが鬼を使役する力に目覚めて、水鬼の二瀬要さんと風鬼の二瀬透さんに出逢い、呪いの池を浄化しています。
この黒澤さんが従妹の双葉さんの友達で、双葉さんも鬼を使役する力を持っていて、木鬼の林田さんと月鬼の月ヶ宮さんと源三朗と言う忍者を倒しています。
そして、今回は結花さんが俺達を使役する力を持ちました。が、他の方と違って結花さんは名付けで精霊や聖獣を使役する力を持っています。
今日は木の精霊が山で土砂を起こそうと暴れていたので結花さんが俺達と市村さん達と一緒に鎮めに行きました。」
天渡が長々と説明した。
「…うちの結花は、行かないと駄目なんですか?」
結花の母親が聞いた。
「おそらく、最終的に結花さんを魔女が命を奪いに来るでしょう。
魔女の狙いは人々を贄として殺して魂を集める為です。
結花さんは人がむやみに殺される事を嫌っています。
今まで結花さんは闇の力で操られた鬼、悪鬼との戦いを見てきています。
結花さんは悪鬼達が苦しむ姿を見ているので決意はとても強いのが分かります。
魔女に抵抗する為には精霊や聖獣を名付けで幻魔にして手に入れる必要があります。
明日も青龍が現れる為、昼に行くと言ってました。」
「…青龍って。龍?」
「はい。水と雷の力を持っているそうです。」
遠くではドライヤーの音が聞こえた。
結花がお風呂からあがったのだろう。
結花は着替えて居間に来た。
「天渡、雷黄。説明終わった?」
「あぁ。丁度終わった。」
「そっか。じゃあ戻ろうか?」
結花が言うと二人は光になって結花の中に入った。
「はい。じゃあ夕御飯にしようか?」
結花の母親は普通にしていた。
父親はヨロヨロしていた。
「…お母さん。木の精霊のリョクにご飯食べさせたいから出してもいい?」
「椅子、余っているから大丈夫よ?…天渡さんと雷黄さんはいいの?」
(大丈夫だ。)
結花もだが、結花の母親も天渡の声が聞こえたようだ。
「…大丈夫って。声、聞こえた?結花?」
「うん。へぇー、他の人にも声を飛ばせるんだ?便利。」
結花がリョクを出すと緑色の長髪の上半身半裸のズボンの男の姿だった。
「…んー。戦った時は全身緑色の怪物の姿だったからそれで出ると思ってた。」
結花が言っているとリョクは結花に跪いた。
「主よ!今日は申し訳ありませんでした!」
緑が言うので父親が驚いた。
「な…なんだ?この人は何をしたんだ?」
「お父さん。さっき、天渡さんからリョクさんが山で土砂を起こそうとしていたって言ってましたよ?」
「…見て。この写真。山の木が破壊されてむちゃくちゃなの。明日、双葉が生命の巫女の力があるから木を直しに来るの。手伝って?もう、自然大好きな木鬼さん放心状態よ。この山にも鬼がいるの。」
結花はめちゃくちゃになった山の写真を見せた。
「…あら、酷い。これって時間掛かるんじゃない?」
「…うっ!うぅっ!」
リョクが泣く中、双葉に明日の山の修復の件のメールの返事が来た。
「双葉から連絡来た。『直せるから明日行くね?』だって?良かったね?明日手伝える事があったら手伝うのよ?」
「はっ!」
「…じゃあ夕御飯食べようか?」
結花達は夕御飯を食べ始めた。
「…あっ。両方。明日青龍が出るから鎮めに行くけど、後誰がいるか分かる?」
「…青龍、白虎、朱雀、玄武、麒麟、氷の精霊、光の精霊、月の魔人、闇の魔人。…です。」
「…多いわね。結花、全部鎮めるの?」
母親が心配そうに聞いた。
「まあね。明日の青龍は水、雷だったかな?利に手伝って貰うから。ちゃんとご飯食べてね?」
「はっ!我が主!」
「…他の人に聞かれたら冷たい目で見られるから、『結花さん』にして。」
「はい!結花さん!」
リョクが言い直したが、微妙だ。
リョクが食べ終わると石に戻した。
「お母さん。明日はお昼に火爪さんとはいつも逢わないから市村さんと五十嵐さんと四人で昼御飯食べに行ってくるね?」
「双葉ちゃんは?」
「今、林田さんと月ヶ宮さんが双葉の彼氏なの。昼御飯は二人と双葉ちゃんの鬼とご飯食べると思う。まあ自宅デートよ?」
「双葉ちゃんもやるわね。明日は気を付けて行きなさいよ?」
「はーい。」
結花は部屋に戻って行った。
「…お父さんは気を付けないと。結花を泣かしたら、天渡君と雷黄君に睨まれるわよ?」
「…俺が泣きたいよ。」
結花の父親は雷黄の睨みが効いたらしい。
結花が部屋に戻って戸を閉めると天渡と雷黄が出てきた。
「お疲れ様、結花。やっとゆっくりできるな?」
「今日は疲れた。まあ金曜日だからね。」
天渡は結花を抱きながらキスをした。唇を離すと嬉しそうに笑みを浮かべた。
雷黄も結花にキスをして嬉しそうにした。
「やっと抱けた。この時を待っていた。」
「俺も。へへっ!結花、大好きだよ!」
天渡と雷黄が交互に結花を腕に抱いて揺らした。
まるで赤子のような姿は誰にも見せれなかった。
「…こんな事されたの初めて。…可笑しくない?」
「可笑しくないよ。双葉さんは林田さんや月ヶ宮さんにこうして抱かれたりするんだ。甘えたい時は一番だな。」
「俺もまた抱いていいか?…結花、ほら?俺が守るからな?結花も俺達にいっぱい甘えよう。」
天渡と雷黄の鬼の揺りかごに結花は揺られていた。
もうすぐ夜のドラマが始まるが、今日は見る気になれなかった。
天渡や雷黄に抱かれていた方が良かった。
22時に歯を磨いて三人でベッドに入った。
窮屈なベッドだが、天渡と雷黄はベッドに体重が掛からないようにしていた。
ベッドも強化されて軋む音はなかった。
横になる天渡と雷黄の嬉しそうな顔が目に入る。
「不思議だな。こうして主人と寝る鬼は俺達が初めてみたいだ。」
「…翼は無いの?…一人暮らしだから護か勇吹とあるかと思ってた。…まあ無いか。あの感じだと。」
「…結花。抱かれると落ち着くだろ?俺達の胸は結花のものなんだ。結花が顔を置いて、心を落ち着かせる場所。あぁ…結花、大好きだよ。」
雷黄が結花を抱く、暫くすると天渡が
抱いた。
「今度は俺だ。結花、愛しているよ。もっと俺の胸に顔を当ててくれ。…結花、聞こえるか?鬼の鼓動。心臓の音。結花の為に俺は生まれて、生きている。結花に『生命を与えてくれてありがとう』って強く言っている。」
ドクッ、ドクッ、っと音がする。
気持ちが落ち着くせいか結花は眠くなってきた。
「結花、大丈夫だよ。これは夢じゃない。明日も、明後日も抱いてあげるからな?」
「あぁ、無理に起きなくていいよ。おやすみ、結花。」
鬼の優しい抱擁に包まれて結花は眠りについた。
ふと、いろんな鬼達を比べると、
朱は鬼が甘えん坊。
蒼は鬼が微妙に甘えん坊。
碧は主人が甘えん坊。
今回の華はぶっちぎりで主人を愛しまくる鬼です。
遊びで天渡と雷黄がベッドに横になるイラストを作った時にこれだと思いました。
他の鬼と違ってベッドも優しい一時を。
まあ普通の男とだとこんな甘いベッドシーンはあんまり無いと思いますけどね。
次回に続け。