表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
未知なる星の誓い  作者: くろあ
第1章 未知なる世界
5/7

食料の確保と現実

二人は再び歩き出し、できるだけ静かにその場を離れた。

まだ武装した異形の者たちが戻ってくるかもしれないという恐怖が二人を包んでいたが

とにかく安全な場所を見つけなければならなかった。


しばらく歩くと、少し風が和らぎ、太陽の光が少し遮られる場所にたどり着いた。

カイはユノを見て、少し休めるかもしれないと感じ、その場所に腰を下ろした。


「ここなら、少しは休めそうだ。」


カイは周囲を確認し、警戒しながらもユノに声をかけた。

ユノは無言で地面に座り込み、膝を抱えた。


「……私たち、本当に…どうすればいいんでしょうか。」


ユノは力なく呟いた。その顔には疲労と不安が漂っていた。

カイも励ませるような答えを持っていなかったが、

今は何とかして二人で生き延びなければならないことはわかっていた。


「……わからない。でも、まずは安全な場所を見つけないと」


カイは自分にも言い聞かせるようにそう答え、少しだけ深呼吸をした。

ユノもそれに頷き、二人は短い休息を取ることにした。

スマホが無力となった今、二人にとっての希望は、まだ見つからないままだった。


カイとユノは、喉の渇きと空腹に苦しみながら、ゆっくりと歩みを進めていた。

周囲は荒涼とした岩壁地帯が広がり、まるで希望を感じさせるものは見当たらなかった。

人は足元がおぼつかなくなりつつも、前に進むしかなかった。


「カイさん、もう私…限界です…」


ユノはかすれた声でつぶやいた。

彼女の表情は疲労と絶望が混じっており、今にも倒れそうだった。


「……ユノさん!あれを見て。」


カイは視界の先に小さな建物のような建造物を見つけ

その小さな建物のようなものを指さした。

荒れた風景の中にポツンと佇むそれは、武装兵たちが使っていたかもしれない

簡易な休憩所のようだった。


「もしかしたら…あの武装した連中が使ってた場所かもしれないけど

何か残ってるかもしれない。行ってみましょう。」


カイはユノに声をかけ、二人はその場所へ向かって歩き始めた。

近づくにつれ、建物の外観がはっきりと見えてきた。

錆びついたドア、放置されたような感じの窓枠。


長い間使われていないのかもしれないが

それでも人の手が入っていたことは間違いなさそうだった。


カイが慎重に扉を押すと、少し軋んだ音を立てながら中が見えてきた。

内部は荒れていたが、食料や水があるかもしれないという期待が二人の胸に芽生えた。


「ここなら、身体をしっかり休めることができそうですわね…」


ユノはほっとしたように言いながら、建物の中を見渡した。

カイは周囲を調べ始め、古い木箱の中に何かを見つけた。


「これは非常食みたいだ。それに…水もある!」


カイは目を見開きながら、中に入っていた乾燥した非常食と数本の水を取り出した。

賞味期限などは気にしている余裕などない、食べられるものであるという事実だけで十分だった。


「これで少しは…」


ユノも、感謝の気持ちを込めて微笑んだ。


二人は急いで非常食を分け合い、水を口にした。

乾いた喉を潤し、食べ物が体に入ることで、少しだけ力が戻ってきた。

二人はようやく一息つくことができた。


食料と水を手に入れたことで、カイとユノは少しずつ体力を取り戻し始めた。

建物の中には古い衣服や毛布が散乱しており

どうやら長い間使われていないようだったが、少なくとも安全に休むには十分だった。


「ここでしばらく休みましょう。外はまだ危険そうだし

今は体を回復させることが大事です。」


カイが提案すると、ユノは疲れ切った顔をしながらも、静かに頷いた。


「本当に助かりましたわ…。これで、少しは落ち着けそうです…」


ユノは座り込み、肩に古びた毛布を掛けた。体を温め、ようやく一息ついた様子だ。


「……こんな状況ですが、私達ちゃんと話すのは初めてですわね。」


ユノはふと、カイに笑みを向けながら言った。

二人は同じクラスにいたが、これまでほとんど関わることはなかった。

それが今では、こんな未知の状況でお互いの命を支え合っている。


「そうですね。僕たち、こんな状況でなかったら…

話すこともなかったかもしれませんね。」


カイは笑いながら答えた。

二人は、お互いのことを少しずつ知っていくために

これまでの生活や、学園での出来事を語り始めた。


「僕、普段はゲーセンばっかり行ってるような人間で…。

友達と遊んでばかりだったんですけど

ユノさんはいつも人気者で、遠い存在に見えてました。」


カイは少し照れながら、自分の日常を語った。

ユノはそれを聞いて微笑みながら、少しだけ自分の話を始めた。


「そうでしたのね。私は…人に囲まれていることが多かったけれど

実はいつも気を使ってばかりで、本音を話すことがあまりなくて…。

でも、今こうしてカイさんと一緒にいることで、少し安心できました。」


ユノはそう言って、感謝の気持ちを込めて微笑んだ。

その表情に、カイは何か心が温かくなるものを感じた。



二人はしばらく思い出話をしながら、ほっとした気持ちでその場を過ごしていた。

しかし、ふと話が途切れたとき、現実の厳しさが再び二人の心に戻ってきた。


「でも、…僕たち、元の場所に戻れるのかな…。

ここがどこなのかも、全くわかってないんですから。」


カイが静かに言葉を漏らした。彼の言葉に、ユノは少し沈黙した後、小さく頷いた。


「もしかして…ここは、私たちが知っている場所じゃないのかもしれませんね。」


ユノは恐る恐る言葉を口にした。

ずっと心の奥に隠していた恐怖を、今、口に出してしまった。

カイもそれに対して、何も言えずにいたが、その可能性を感じずにはいられなかった。


「地球じゃない場所…別の世界に来てしまったってことかもしれない。」


カイはそう呟く。カイたちがみた異形の生物の存在が、今までの常識とはかけ離れている。


「どうすれば元いた学園に戻れるんでしょう・・・」


ユノの声には、明らかに絶望が混じっていた。彼女は涙ぐみながら、カイを見つめている。


「……まずは、生き延びるしかないです。

何とかして、手がかりを探しましょう。きっと、何かが見つかるはずですから。」


カイは自分にも言い聞かせるように答えた。今は、前に進むしかない。

どれだけ不安があろうとも、生き延びることが優先だった。

そう思わないと心が折れそうだった。



食料と水で体力を少し取り戻したカイとユノは

休憩所の中をもう一度探索することにした。


内部には古びた道具や衣服が散乱しており

かつてここを使っていた武装兵たちが置いていったものと思われた。


「これ…使えるかもしれませんね。」


ユノが棚の上に置かれた鞄のようなものを手に取った。

それはしっかりとした革製で、武器や道具を入れて運ぶためのもののようだった。


「さっきの連中が使ってたのかな…?」


カイは鞄を確認しながら言ったが、持ち主が戻ってくる様子はなさそうだった。

彼はその鞄を開け、非常食と水を詰め込んだ。

何が起こるかわからないこの状況では、少しでも準備を整えておくに越したことはない。


「とにかく、これでしばらくは大丈夫そうですね。」


ユノは微笑みながら、少しずつ落ち着きを取り戻しつつあった。

だが、まだ心の奥には、この状況が全く理解できていない不安が渦巻いていた。


「そうだね。でも…今はあまり時間がない。

ここに居続けることもできるけど、あいつらが戻ってくるかもしれないし

元の場所に帰る手がかりも探す必要があります。

とにかくもっと安全な場所を見つけましょう。」


カイは慎重に外を確認し、周囲に異形の武装兵がいないことを確かめた。


カイは休憩所を出て、ユノと共に次の行動を決めるべく辺りを見渡した。

先ほど異形の武装兵たちが通り過ぎた道を避けるため

二人はあえて反対方向に進むことに決めた。


「さっきの連中が戻ってきたら厄介だ。逆の方へ行きましょう。」


カイは鞄をしっかりと背負い、ユノに声をかけた。


「はい…その方が良いですわね。」


ユノも同意し、二人はゆっくりと歩き出した。


少し進むと、やや小高い丘に出た。

風が強く吹き抜けるその丘の上で、二人は一息ついた。


そこからは周囲がよく見渡せたが

目に入ってくる景色は相変わらず荒れた岩壁地帯ばかりだった。


「……あ、あれを見てください!」


ユノが急に指を差し、声を上げた。

カイもその方向に目をやると、岩壁地帯の先に広がる緑の影が見えた。


「森だ……森がある。」


カイは息を呑んだ。岩壁地帯とは異なり、生命の気配を感じさせる森。

水や食料、そして身を隠す場所があるかもしれないと、カイは直感的に感じた。


「行こう、あそこに行けば…もっと安全かもしれない。」


カイは再び決意を新たにし、ユノに声をかけて森へ向かうことを決めた

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ