不安と恐怖
現実 - 未知の惑星
カイとユノは、荒野の中を慎重に進みながら
少しずつこの場所が異常であることを実感し始めた。
二人とも言葉を発することができず、ただひたすら前を見据えていた。
まだ全貌は見えないが、少しずつ何が起きているのかを
理解しなければならなかった。
「カイさん…私たち、一体どうなってしまったんでしょうか?」
ユノの声にはまだ敬語が混じっている。
お互いに対しての距離感があり、いつもとは違う状況に言葉がつっかえるようだった。
「僕にもわからないです。今はここがどこなのか調べないと。」
カイも答えに困りながら、慎重に言葉を選んでいた。
二人は探りながら、見知らぬ場所を進んでいく。
カイとユノは、岩壁地帯を何も分からないまま歩き続けていた。
砂塵が舞い上がり、乾いた風が顔に吹き付ける。
目の前に広がる風景はただの荒野で、まるで終わりがないように思えた。
疲労が体中に広がり、カイはどうにかしたいという焦りが募るが
何もできない自分への苛立ちが大きくなっていた。
「ユノさん、大丈夫ですか?」
カイは声をかけながら、ふと彼女の表情を盗み見る。
ユノは疲れ切っていて、足元もふらついている。
彼女が必死に耐えているのは明らかだったが、カイもどうすればいいのかわからなかった。
どうにかしたい、守りたいという思いが強くなる一方で
状況がわからないままでは行動に移せない自分に苛立ちを覚えた。
「はい、まだ…なんとか…」
ユノは微かに微笑んで応えたが、その声には力がなく、疲労と不安が滲んでいた。
カイは彼女の頑張りに応えたいと感じながらも
自分自身が不安定で、どうやって状況を打開すればいいのかがわからなかった。
「……せめて休める場所を探さないと、このままだと夜まで持たない。」
カイは呟くように言ったが、それが自分自身への問いかけのようにも感じられた。どうすればいいのかが見えない。不安が胸の中で大きく膨らみ、彼を圧迫してくる。
周囲を見渡すと、少し離れた場所に洞窟のような小さな隙間が見えた。
身体を休める場所が必要だという焦りから
カイはそれを希望として捉え、ユノに声をかけた。
「ユノさん、あそこなら少し身体を休められるかもしれません。
行ってみましょう。」
カイの言葉には自信がなかったが、今は選択肢がない。
何かをしなければ、ただ無力なままここで倒れてしまう気がした。
ユノは頷き、二人は洞窟の方へ向かった。
洞窟にたどり着くと、そこは外の風を遮るには十分だったが
暗く冷たい空気が漂っていた。
安全かどうかはわからなかったが、少なくとも身体を休めるには適しているように見えた。
「ここで少し休みましょう…」
カイは洞窟の中を見渡し、岩壁に近づいて座った。
ユノも、疲れ切った身体をなんとか動かしてカイの隣に腰を下ろした。
「そうですね…でも、まだ信じられないですわ。
どうしてこんな場所に…私、友達と帰っていた途中だったのに…」
ユノは静かに言葉をつむいだが、その声には強い不安がにじみ出ていた。
カイも同じだった。
何が起きているのか、どうしてここにいるのか
全く理解できなかった。自分をどうにか奮い立たせて行動しているものの
心の奥底には強い恐怖と戸惑いが渦巻いていた。
「僕も、わかりません…。どうしてこんなことに…」
カイは自分の無力さに歯がゆさを感じながら、ぼそりと答えた。
本当は、ユノをもっと安心させたいと思っていたが
自分自身の気持ちをどう処理していいのかわからないままだった。
「でも、まずは休んで…それから考えましょう。
今は無理をしても、余計に疲れるだけですし。」
そう言うことで、自分自身にも言い聞かせているようだった。
ユノは微かに頷き、疲れた顔をゆっくりと岩に預けた。
カイもまた、洞窟の奥から吹く冷たい風を感じながら
無意識に自分の肩を抱きしめた。
不安と恐怖が体を支配している中で、何も考えずに少しでも眠ろうと目を閉じる。
それでも、カイの心は休まることはなかった。