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忘却の時魔術師  作者: 東雲潮音
第二章【出会いと別れの帝都】
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3匹の大豚

 王国と帝国、そのトップしか知らないルナの帝国訪問。それを知ってしまった一般人。これだけで今の自分の立場が非常に危ういのは分かるのだが。


 「これって、俺は悪くないよな」


 「ん」


 自分の独り言にルナが一言で反応した。彼女の言う通り、自分は別に彼女の事を知ろうと思って知ったわけではない。むしろ回避することもできずに一方的に知らされた立場だ。


 「アメリア」


 「も、申し訳ありません、姫様!リクも、本当にすまない……」


 アメリア曰く、ルナが無事に見つかったことで思わず彼女の事を伝えてしまったらしい。彼女の騎士としての資質を多少は疑ってしまいそうになるのだが、彼女がルナの事を本気で心配していたのは既に実感している。巻き込まれてしまったのは既に過去の事であり、今考えるべきなのはこれからの事。


 「俺はこれからどうなるんだ?」


 「リクには、私達と帝都まで同行してもらう。そこで君の入国を確認できれば大丈夫だ」


 彼女らが自分をそこまで同行を要求する理由は、もし自分が彼女達と行動を別にした後、ルクス王国へ戻り、情報を売ったりするのを防ぐこと。自分は言いふらす気などは到底無いのだが、政治の事を考えれば仕方ないのかもしれない。そして自分が帝都内に入ってしまえば、そこで王国の勇者が帝都にいるなど言っても誰も信じるわけがない。それに帝都から王国までは地竜を使用しても1日以上はかかる為、自分が仮に戻ったとしても、それまでに彼女達の任務は達成できる。


 「俺も元々帝都に行く予定だったんだ。気にしないでくれ」


 「助かるよ、リク」


 今の自分に王国内に戻るつもりは元よりない。それよりかは帝国内で自分の時魔法の事を調べるのが最優先だ。そうでなければ村に戻ることもできない。


 「――ルナ、アメリア、止まれ。魔物が数匹近づいてきてる」


 「なんだと?そのような気配は全くしないが」


 アメリアは疑っているようだが、この感覚が今まで間違っていたことは一度もない。魔物の探知に関しては自信が有る。暫くするとアメリアにも気配を感じたのだろう。彼女は剣を抜き戦闘体勢となる。


 「な?言ったとおりだろ?」


 自分も桜楓(おうか)を構えようとするが、目の前に手を出されて制止された。アメリアだ。


 「まて、リク。ここは私に任せてもらおうか」


 「大丈夫か?」


 「ふん、これまで君には、不甲斐無い所ばかり見せてしまっていたからな」


 最初に会った時はキラービーの大群に襲われていて戦意を喪失していたし、その後もルナに泣きながら抱き着いたり、こちらを勝手に巻き込んだりして良い所が無かったアメリアだが、そこは彼女も自覚していたらしい。剣を抜いた彼女は先程までと違い、凛とした顔つきだ。これが騎士としての彼女の顔、というわけだろうか。


 「オークが3匹か」


 以前自分が相手をした大きな豚の魔物だ。オークと言う名前らしい。防具は何も身に付けていないし、武器は石で作った粗雑な斧。自分だったら苦戦する相手ではないが。


 「いくぞ!」


 アメリアは剣を構えながら突っ込んでいく。彼女の速度は自分からすればあまり速くはない。そもそも彼女が王宮騎士団の中でどのくらいの実力なのかも不明なので何とも言えない。

 オークが斧を振りかぶるが、アメリアは回避をする気配が無い。まさかそのまま受けるつもりなのか。彼女は力に物を言わせるタイプには見えないのだが。


 「風よ!」


 アメリアが叫ぶと同時に風が剣を包み込み、オークの斧を迎え撃つ。


 「ブモッ!?」


 剣と斧が触れる瞬間、剣が斧を風で弾き返し、そのままオークをのけぞらせる。


 「死ね!」


 そのままアメリアはオークの腹を剣で貫いた。絶命したオークは魔石を残し灰へと変わる。アメリアはオークのいる方向へ剣を振るう。本来なら剣では届かない距離なのだが、剣に纏われていた風が剣から飛び、オークの眼を切り裂いた。


 「近距離は武器を弾くことができるのに加えて、中距離相手には威力は低いが風の刃か」


 アメリアの戦い方は正しく騎士の戦い方だ。綺麗な剣筋に教科書通りの魔法の使い方。剣に風魔法を付与できていることから、剣だけなく魔術の訓練も怠ってはいないのだろう。

 そうこうしている内に残りのオークは1体だ。アメリアの実力は把握できた。彼女なら難なく残りの1体も倒せるだろう。


 「ルナは戦わないのか?」


 「別に」


 何気なく質問しただけだったのだが、素っ気無く返されてしまった。ルナはアメリアの代わりに捕まった際に身代わりになったが、結果的には賊のアジトを壊滅に追い込んでいた。その実力を少しでも見れたら良かったのかと思ったのだが。


 「……見たいの?」


 「え?」


 「見たいの?」


 そこでルナがこちらを覗き込んできた。相変わらず感情のない青い瞳だが、珍しく向こうから話しかけてきたことに少し驚いた。見たいの、とは恐らくルナが戦うのかどうかをという意味だろう。


 「まあ、そりゃ見てみたいけど」


 「……ん」


 静かに一言だけ述べ、再びルナは黙り込んでしまった。ルナは結局何もしないようだが。アメリアもそろそろ残りの1体も倒し終えそうだ。暗くなってきたので、そろそろ野営の時間かもしれない。


 「……ルーチェ」


 隣にいたルナが何かを呟くと突然ルナの肩のあたりが光り始める。

 

 「なんだっ!?」


 これは魔力が集まっていってるのだろうか。集まった魔力は何かの形を形成して、


 「はいは~い!」


 そこから謎の生き物が現れた。掌より少し大きい狼のような狐のような生物。色は全体的に白いのだが、ぼんやりと発光している。驚く自分を無視して、ルナは人差し指をオークに向ける。


 「光よ(ライトニング)


 「はいどーん!」


 ルナの小さな声と同時に短い光線のような光が指から放たれる。放たれた交戦はそのままオークの頭を貫き、絶命させる。


 「ひ、姫様!?」


 突然の横やりにアメリアもかなり驚いたようで、こちらの方を振り向いている。だが自分もかなり驚いている。突然魔力が集まったと思ったら摩訶不思議な動物が現れてルナが指から光線を放ったのだ。


 「どう?」


 頭を混乱させていたらルナがこちらを再び覗き込んでいた。しかも肩に乗っかっている白く発行する狼もこちらを見ている。


 「ほらほら、ルナが魔法の感想を聞いてるんだから、答えてよ」


 肩に乗った白い狼がこっちに喋ってきている事実はいったん置いといて、ルナは魔法の感想を求めていたのか。確かに最初に戦わないのかどうかを聞いたのはこちら側だったか。


 「――想像以上に凄かった、ぞ?」


 「ん」


 「そりゃそうだよね!だってルナと僕が使う魔法だもん!凄くないわけがないよね!」


 元気にルナの肩の上できゃんきゃん喋り続ける狼。これまでの人生で見たことも無い光景に頭が痛くなりそうだ。


 「ひめさまぁ~、私じゃ頼りになりませんかぁ~?だからオークを倒してくれたんですかぁ~?」

 

 泣きそうなアメリアが戻ってくる。それでも喋り続ける狼に、いつも通り無表情のルナ。


 「はぁ……なんなんだこれは……」


 今日はもう色々と疲れた。ここで野営することにしよう。

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