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忘却の時魔術師  作者: 東雲潮音
第一章【目覚めた力と旅立ち】
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また明日

 「……母さん」


 母親が無事でいた事に加え、ここに来たことでリクは安心していた。今の自分と彼女がいれば残りの2人手の敵はすぐに殺すことができるだろう。


 「……」


 静かに歩きながら道場へと入って来たミズキは道場内の片隅にいるレオに視線を移している。恐らく彼の無事を確認しているのだろう。彼女が無防備でいる状態でも、後ろにいる2人の内、1人は怯え、1人は魔力量も底が突きかけているようで、疲労が目に見える。遠目での確認を終えた彼女はそのまま視線をこちらに向ける。


 「全員、殺す」


 全身の身の毛がよだつような殺気を感じ、反射的に桜楓(おうか)を構えた瞬間、母親は既に眼前に迫っていた。そしてそのまま刀を振り下ろして―、


 「……へぇ」


 「な、なんで!?」


 相対した刀の向こうで殺意に満ちた眼を細めながら静かに呟く母親。理解ができなかった。今の瞬間、殺気を感じ構えていなかったら自分は確実に死んでいた。肩から侵入した彼女の刀は自分の内部の大事なものを全てズタズタに一刀両断しただろう。


 「母さん!?どうしたの!!!」


 「……死になさい」


 「くそっ!加速Ⅱ(アクセル・ツヴァイ)


 叫んでいる声を無視したまま繰り出される斬撃を全て迎撃する。彼女の眼は本気だ。なんの冗談もなく自分の事を殺しに来ている。縦横無尽に幾多の方向から飛んでくる斬撃。それらを全て対処しながら残った思考で考える。何が起きているのか。何故彼女は自分に殺意を向けるのか。

 まさか幻惑系統の魔法の影響か。それなら敵が同士討ちを目論んでこちらに彼女を誘導したのか。いや、奴らは過半数をこちら側に割いていたし、こちらが自分とレオの2人だったことは把握していたはず。だったら幻惑系統の魔術師はこちら側の襲撃に加わるはず。魔法の線は消えた。


 「なんで!!!どうしてなんだよ!!!」


 「お、おい、逃げるぞ!今しかない!」


 「この化け物どもがぁ!!!」


 これまで怯えて動けずにいた後ろにいた2人の男達。今が逃亡のチャンスだと判断したのか、行動を開始する。奴らは道場の穴へ向かって走りだすが、奴らに逃げられるのもマズい。ここの襲撃を依頼した依頼主を聞きださなければいけないのだ。さもなければ、この村が再び奴らの仲間に襲われるかもしれない。


 「待て!お前ら!」


 「(いかづち)よ」


 「くっ!!!」


 距離を取ったミズキが雷を纏った。彼女の雷魔法の事は知っている。運動性能を飛躍的に向上させる魔法。これは本当にマズい。


 「母さん!!!話を聞いて――加速Ⅲ(アクセル・ドライ)!!!」


 一気に跳躍したミズキに対して、時魔法を発動する。跳躍した方向に素早く視線を移すと天井を蹴り、こちらへと刀を振り下ろす彼女がはっきりと見える。このレベルの攻撃を受け止めればこちらの肉体が耐えられない。後ろに跳び寸前の所で攻撃を躱す。攻撃を躱したのは良いが、未だに状況が理解できない。

 幻惑系統の魔法の線は消えた。他の可能性はなにがある。他に何が彼女に影響を与える。


 「母さん!!!」


 「一気に……」


 「加速Ⅳ(アクセル・フィア)!!!」


 母親の魔力が一気に高まった。彼女は更に機動力を増し、道場のまだ残っている床、壁、天井を跳び回りながら加速を続ける。先程以上の攻撃を連続で繰り出されるとなると、流石に時魔法を使用したとしても厳しい状況になる。時魔法は速度は上がるが、元来の肉体的性能が上がるわけではない。いずれ限界が来るだろう。それに加えて、先程の戦いからの連続の時魔法の利用の影響で残りの使用回数があと3回程だろうか。一体どうすれば―、


 「……殺す」


 道場中を飛び回りながら母親が斬りかかってくる。躱しながらこの状況を考えるしかない。迎撃はダメだ。彼女の勢いが凄まじいのに合わせて、母親を傷つけるわけにはいかない。だがこの攻撃は肉体的にも負荷がかかる技のはず。もしかしたら耐え抜けば話を聞いてくれるかもしれない。それでも時魔法が間もなく切れる。時魔法の効果が無くなった瞬間に自分は死ぬ。


 「もう一回だ……加速Ⅳ(アクセル・フィア)


 なんとかこの攻撃を耐えるしかないのだが、加速Ⅳ(アクセル・フィア)は消耗が想像以上に激しいらしい。残りの時魔法使用限度は、恐らく後1回。しかも加速Ⅱ(アクセル・ツヴァイ)だ。まだ完全にこの良く分からない力の消耗度合いを把握できていない。


 「くそ、無理、なのか」


 躱し続けているが、攻撃が止む気配はない。限界だ、これ以上は攻撃を躱すことはできそうにない。だったら一度形勢を整えてから再び来た方が良い。これが時()()と言うのなら、魔力と同じように力は回復するはずだ。明日来て、話せばいいじゃないか。


 「待ちなさい!」


 道場からの脱出を開始すると鬼の形相でミズキが迫ってくる。リクはそれらを全て完璧に躱した上で道場から脱出し、家の塀を飛び越えた。


 「……ここまでは、追ってこないか」


 一瞬殺気を感じたが、ミズキは外までは追いかけてこないようだ。これは形勢を立て直すチャンスだ。一旦村の誰かに事情を説明して、今日は泊まらせてもらうとしよう。大丈夫だ。1日経って話せば、きっと誤解も解ける。


 「母さん、父さん、また明日」

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