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神器の力

「取り憑いているのは一頭だけ、後はただ従属せられているだけのようじゃ。そいつを叩くぞ」


 ヒミコはそう言うと右手の指輪を藪の方向にかざした。


巌貫終閃いわつらぬきしついのひらめき!」


 指輪から先ほどより細く、しかし、はるかに強烈な光が一直線に伸びた。


「グフォア!」


藪の中で姿は見えないが、おそらく野犬の一頭を貫いたのだろう、肉の焼けるような匂いが漂ってきた。


周囲から野犬達の気配が消える。

ボスが倒され逃げ去ったのだろう。


「お見事です、ヒミコ様。野犬達の禍々しい気配が完全に消え去りました」


「思ったほどではなかったのう、やはりこの時代、邪鬼王は復活などしておらぬようじゃ」


 ヒミコが笑みを見せる。

 そして全身をだらりと脱力させると、上空では先ほどまでの皆既日食のような状態が解除された。


 その代わりに焦げ臭さが辺りに広がり、煙が充満してきた。


「いかん、久しぶりで加減を少し間違えてしもうた。ソラミ、頼むぞ」


「はい、ヒミコ様、お任せくださぁい!」


「いえ、その前に雨具を着用した方がよろしいかと」


ハルカがそのように指摘する。


「雨具だって? こんなに晴れているのに?」


 そんな疑問を持って言葉にしたが、彼女たちは無視するようにレインコートを取り出して着用し始めた。


 今まで散々不思議な現象を見せられたのだ、疑っても仕方がないと、俺もレインコートを取り出して着用した。


 そしてソラミが指輪をつけている左手を天空に向かってかざす。


 すると、途端に水蒸気が集まり始め、雲を形成し、濃さを増していき、やがてポツポツと水滴が落ちてきた。


 それは次第に激しい雨となり、それに伴って充満していた煙がおさまっていく。

 雨の範囲はやはり半径200メートルほどだった。


「ソラミの神器、能力は、範囲限定ながら天候を操ることじゃ。わらわの力は、先ほど見せた日の光を集め直接相手を倒すものじゃ」


 信じられない言葉の連続であったが、目の前で見せられ続ければ納得せざるを得ない。

 本当に神器は、そしてそれに付随する能力は存在したのだ。


「じゃあ、ハルカさんも?」


「はい、でも、私の力はまだ秘密にしておきましょう。それと、私のことはハルカと呼び捨てにしていただいて結構ですよ、カケル様」


 ハルカが意味深な笑みを浮かべる。

 どうも俺はカケルという者の生まれ変わりということになっているらしい。


 とりあえず野犬に襲われる心配もなくなったし、山火事の危険もなくなった。

 ただ日はだいぶ傾いてきている。早く帰らないと本当に遭難してしまう。


 全員急いでレインコートを脱いでいた。その時だった。

 野犬に囲まれていた時以上の悪寒が背筋に走った。

 三姉妹も気づいたようだが、まだレインコートがうまく脱げていない。

 もたつかなかったのは、自転車通学でその脱ぎ着に慣れている俺だけだ。


 藪の中から出てきたのは、体重300キロ はあろうかという大イノシシだった。

 怒りに目を充血させ、猛然と三姉妹に突っ込んで行く。


 刹那、俺の視界からから色が消えた。

 ただ、意識を全て集中させ、時がひどくゆっくりと流れる中を駆けた。


 三姉妹と大イノシシの間に立ちふさがる。

 本能に従うように、左手の腕時計、右手の指輪に宿った神器の力を発動させる。

 そこに出現したのは、金色の柄に白色の刃を付与された長槍だった。


 渾身の力を込め、突進してくる大イノシシに突き立てる。

 そのケダモノは額を貫かれ、一瞬、カッと目を見開き、しかしすぐにそこに宿る輝きを失い、その巨躯を爆散させた。

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