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番外編 陛下からのお使い……予想はしておりましたけれど 四十七(番外編完結)

 ラルコーが剣を引き抜くと、伯爵は横倒しに倒れた。頭から地面へと血だまりを作っていく。


「ひ、ひいいいっ!」


 腰の抜けた御者が、両手をついたままあとずさる。


「どうやら終わったな」


 ベレンが姿をだした。ついでレクシャ。私も馬の手綱を引きながら歩いて路上にでた。


「お前には、こちらからは危害を加えない。ケガも手当てしてやる。ただし、手足を縛っておく。街の近くで解放してやる」


 ベレンがまず御者に伝えた。ことが終わったからには、負傷者が先だろう。御者は死なずにすんだし、拘束もすんだ。


「馬車はまだ使えるな。よし、伯爵の指輪は俺達で山分けだ。馬車と馬はラルコーにやる。余った指輪と、お前達に貸した武器もそのまま持っていけ」


 こういうときに欲張らないのは基本中の基本で、ベレンはちゃんとわきまえていた。


「いいのか!?」


 ラルコーでなくとも信じられないだろう。


「ああ。どのみち、馬車の一つもなきゃ格好がつかないだろう?」


 そうこうするうちに、護衛が乗っていた馬ももどってきた。


「おっ、都合がいいな。じゃ、こいつらで馬車の姿勢をもどそう。馬は一頭くれ。残り二頭もラルコーのものだ」

「どうやって持って帰るんですか?」


 私は馬を操れないし、御者は動けない。


「一頭は荷車を引っ張るのに追加する。もう一頭は馬車だ。あと一頭はラルコーかレクシャが乗れ。馬車でも馬でも大丈夫だろ?」

「なら、俺は馬がいい」

「私は馬車を」


 伯爵が、というより父がまともに他人の役にたったのはこれが最初で最後だった。指輪のいくつかは血がついていたものの、ふけばすむ。


 これで分け前の話はすんだ。面倒な作業があったものの、時間をかけたらすんだ。


「たしかに見届けた」


 一通りがおわったとき。トリンジが自分の馬にのってやってきた。


「ラルコーは貴族として立派に振るまったぞ」


 ベレンは忘れず念押しした。


「うむ。陛下にも、しかと報告しよう」

「場合によっては、レクシャとラルコーの……」

「私は貴殿ほど野暮ではない」


 トリンジがベレンをさえぎった様子に、つい吹きだしかけた。私からすれば目くそ鼻くそだ。


「帰るぞ!」


 ベレンは、最初から自分が持っていたほうの馬にまたがった。私は荷車にあがった。手当てのすんだ御者は馬車にいれられ、レクシャがかわりの御者になる。ラルコーは新しく自分のものになった馬にまたがった。


 ☆


 数週間後。仕事場を処分し、改めて旅にでた私とベレンの元にラルコーが宮殿入りを許されたという知らせが入った。レクシャと婚約したという知らせも。


 私は、ようやくにも鑑定士の修行を再開した。流れの鑑定職人としてあちこちの土地を知っていかねばならない。並行して乗馬の稽古も。


 それはいいけど、いつになったらキスの先へ進めるのだろう。


 終わり

 皆様、番外編のご読了ありがとうございます! 本作はこれにて完結です。


 思い起こせば数週間前、本編完結のさいにとある読者からのご感想がきて番外編を書く運びとなりました。本編の続きをご所望くださったその方にはいくら感謝してもしきられません。


 皆様、面白いと思われましたらどうかご遠慮なくブックマーク、星、レビューコメント、ご感想など投下してくださいませ。


 またお会いしましょう!

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