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六、大詰め! すべてに決着ですわ(本編完結)! 六

 ブロンゾが、竜を背後からしめあげた。彼もまた青い渦に取りまかれたものの、気に病む様子は一つもない。


「実父でもあった先代にうとまれ愛に飢えていた俺を励ましてくれたのはお前さ、リオク」


 暴れる竜を抑えつけながら、ブロンゾは打ちあけた。


「たとえ中身がかわっても、俺はお前をリオクだと思いこもうとしていた。けどな、それはもう終わったんだ。せめて、お前の脱け殻だけでもいっしょにいてやるぜ」


 ブロンゾが宣言した直後。直射日光をもしのぐ青い閃光が闘技場全体を圧してほとばしった。でも、それはあっというまに消えた。


「ブロンゾとリオク……」


 ベレンが、サファイアをためつすがめつしている。


「いたたたた……」

「すまん、つかまれ」

「ありがとうございます」


 ベレンは、右手でサファイアを持ったまま左手で私をおこした。


「大丈夫か?」

「はい、ちょっと身体を打っただけです。あの、ブロンゾさんとリオクは……」


 ベレンはだまってサファイアを私に見せた。宝石のなかで、抱きあったまま眠るように目を閉じる二人の姿があった。


「ようやく……終わった」

「そうですね……終わりました」


 闘技場には、私達以外にもはやだれも残っていなかった。


「これからどうする?」

「さあ、どうしましょう」


 王子のあの醜態は、今日にも国中に広まるだろう。それこそ王家の身分をはく奪されるかもしれない。どうでもよかった。


 私達が優勝したのは事実ながら、賞金が降りるかどうかはなんともいえない。口あたりのいいことをならべて油断させてから、責任をなすりつけるべく抹殺する程度のことはどこの王室でもふつうにする。仕たて屋のビヨットさんにはどうにかして報わねばならないから、仮に降りたらなにがしかは届けよう。


「俺は……このさい、旅にでようと思う。いっしょにくるか?」

「師匠。私、あなたの弟子ですから」


 本当は、もっとちがう気もちを打ちあけたかった。じっさい、生活が落ちついたらそうするだろう。でも、それはいまじゃない。


「よし、いざ出発だ。馬の世話はお前がやれよ」

「はい」

「字はちゃんときれいに書けよ」

「はい」


 そのときには、二人でならんで歩きはじめていた。


「朝は寝ぼけずにおきろよ」

「はい」

「さっきから、ばかに素直だな」

「師匠」

「ん?」

「サファイアは、そもそもどこにあったんですか?」


 聞きつつも、なんとなく想像はついていた。


「仕事場にある師匠の肖像画だ」

「あの、剣の柄にはまっていた……」

「そうだ。絵は絵だが、絵と額縁の間に挟む形で入れてあった」

「教えてくれててもよかったじゃないですか」

「ああ、すまん。お前がだれかにつかまって拷問でもされたらまずいと思ってな」

「ひ、ひどい! 人を信じられないんですか! せめてこう、敵をあざむくにはまず味方からだとか……」

「なにをいうか陰謀家!」

「それとこれとはべつです!」


 なんだか当分、べつな意味で落ちつきそうにない。


             本編おわり

 皆様、ご読了ありがとうございます! 本編を楽しんで頂けましたでしょうか? もしそうなら、どうぞお気軽に星・応援メッセージ・お気に入り登録などよろしくお願いいたします!


 ここから先は後日談の番外編です! 引き続きお楽しみ下さいませ!


 また、次回作が始まりました!


『没落令嬢トピアは結婚詐欺がただ一つの武器。父の仇、トローク公爵をあと一歩まで追いつめたのに! 公爵家の私設刑務所で仲間になった頼れるオラオライケメンは公爵家の元婚約者!? 今度こそ本気で脱獄ざまぁ!』


https://kakuyomu.jp/works/16817330647802916311


 こちらは没落令嬢✕ディストピア脱獄ものとなっております! ちなみに完結保証つきです。こちらもよろしくお願いいたします!

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