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六、大詰め! すべてに決着ですわ! 五

 ベレンが会話に加わった。


「ええ、そもそも私は悪魔などではないからです」

「ちがう」


 ベレンは、ポケットから一個の宝石をだした。大粒のサファイアだ。


「師匠は、私に商会の記録をあたらせたのでございます。万が一悪魔が復活したときに、もう一度封印できるような品がないかと。私が商会の倉庫からこれを見つけだしたときには、師匠は殺され悪魔は剣ごと行方不明になっておりました。まさかブロンゾがかかわっているとは、今回話を聞くまで想像もできなかった次第にございます」

「では、なにか。そのサファイアがどこにあるかをはっきりさせないうちは、派手な騒ぎをおこさないようにするほかなかったということか」

「それだけではございません。悪魔はいまだ力を完全にはとりもどせていないのでございます」


 ベレンは、サファイアを頭上に高くかかげた。いくたばかの日光がサファイアにあたり、とおりぬけるときには青い渦のような光になってリオクをとりまいた。


「聖女リオクを騙る悪魔よ、師匠の魂にかけてこのサファイアにお前を封印しなおす」

「や、やめ……」


 リオクの衣服が内側から膨れあがった。顔も手足も常軌を逸して風船のように膨らみ、みるみるうちにまっ赤になっていく。


 ぱちぃんと鋭く弾ける音が響き、一頭の赤い竜がリオクの姿をした殻を破って姿をさらした。ただし、背丈や体長は人間とたいしてかわらない。


「わーっ!」


 腰をぬかすかわりに、王子はまわれ右して北側出入口へ走った。それを皮切りに、ブラスバンドも観客も悲鳴をあげて逃げまどいだす。


 竜はまだ、青い渦に縛りつけられている。ベレンはサファイアを手にしたまま大粒の汗をかいていた。


 なんの妨害もなければ、このまま竜はサファイアに封印されるのだろう。肝心の竜がおとなしく待ってくれるとはとても思えない。


 私が……私がベレンを守らねば。でも、どうやって。


 どうやって? そんなことは、体を張ってからだ。ここ一番で自分の命を賭けられない人間が陰謀家などと、おこがましい。


 リオクだった竜とベレンとのあいだに割りこんだ私は、両腕をいっぱいに広げてベレンをかばった。竜はほとんど身動きがきかなくなりつつあったものの、尻尾をむちのようにしならせた。


「きゃあーっ!」


 文字どおり叩きのめされた私は、壇の床に横倒しになった。たちあがりたくとも痛みと打ち身でどうにもならない。


「ロネーゼ!」


 ベレンが動揺し、竜をしばる青い渦がゆらいだ。


 勝ち誇ったかのように、竜がぱっくり口を開けて私に噛みつこうとしたとき。

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