六、大詰め! すべてに決着ですわ! 三
そのうえで、後日あらためて私をどうにかすればいいと王子は判断したらしい。
「お許しをえて申しあげます。聖女リオク様、ならびに準優勝者のブロンゾをこの場に呼び、話に加えて頂きたく存じます」
ベレンは落ちつきはらっていた。バルなんかよりよほど威厳がある。
「ブロンゾはともかく、リオクだと? なぜだ!」
「私の優勝に深くかかわるからでございます」
「話に加えればお前の願いは満たされるのか?」
「はい、さようにございます」
しばらく王子はだまりこくった。しかし、断ろうものなら怒り狂った数万人の観客を相手にしなければならなくなる。
「よきにはからえ」
「恐れいります」
こうしてまずブロンゾが、ついで聖女リオクが壇までやってきた。
「今回にかぎり、社交に必要な儀礼は省く。レンベよ、お前のいうとおりにしてやった。どのような話があるというのか」
つまらない内容なら容赦しないという怒りが、王子の全身からふきあがっていた。
「殿下、まことに寛大なご采配にまずは深く感謝申しあげます。ブロンゾ、約束を果たせ」
ブロンゾもまた、負傷の手あてはすんでいる。その気になれば逃げもごまかしもできたろうに、堂々とこの場にきたのは認めるべきだった。
「私が用いた古代剣は、聖女リオク様からもたらされました」
ブロンゾは一言一言をかみしめるように口にした。
「リオクが!?」
二重三重におしよせるまさかの展開に、王子は思わずおうむ返した。いや、私もベレンも開いた口が塞がらない。
「はい、左様にございます。リオク様は、十年近く前から私の個人的な知りあいでした。その時分、ブロンゾ古美術商の先代会長に命じられた私は五百年前の古代遺跡をリオク様とともに探索しました」
ベレンこそ、一番ひどい衝撃だろう。でも、彼は古代剣を発見した冒険者からじかに再鑑定の依頼をうけたはず……?
「古代剣は、たしかにその遺跡にございました。しかしながら、ただの剣ではなかったのでございます。悪魔を封印した呪いの剣でございました。それと知らずに剣を手にした私は悪魔に精神を支配されかけ、リオク様に助けられました」
いまや、王子も観客も私達もくいいるようにブロンゾに注目している。リオクだけが無表情なままだった。
「リオク様は私を助けるのと引きかえに、死んだのです。さらには、剣に封印されていた悪魔がリオク様の遺体にのり移りました。ただし、それはまだ不完全でございました」
「な、なにっ!?」
「殿下、最後までおつきあいしてさしあげませんこと?」
聖女がにこやかにたしなめた。




