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六、大詰め! すべてに決着ですわ! 一

『ご覧ください、この勇姿を! まさにいま、南側出入口より優勝者レンベが興行主のゼネーロ氏につきそわれて入場です!』


 北側出入口の両脇に陣どったブラスバンドが、勇ましくも晴れがましい曲を流し始めた。それにあわせて私達は入場した。


 割れんばかりの拍手と歓声。ちぎれんばかりにふられる腕の数々。


 ベレンはまちがいなく実力でのしあがった。八百長になれきった選手達ではこんな異常な変化についていけず、ふだんの実力がだせなかったというのもあった。


 花飾りをあしらわれ、簡単な階段が南北につけられた正方形の壇は思ったより狭かった。


 歓喜のさなかを二人で進むのは、なにかこう……なにかこう……け、結婚式のような……。って、ちがうちがうちがーう!


「気おうのはわかるが……最後のとどめだ。冷静になるんだ」


 兜を失ったベレンが、横目で私をみながらいった。この熱狂のなかで、だれかが聞き耳をたてられるはずがない。だから、私への助言も素直に受けとめ……たくても割りきられない。


「はい」


 はいという以外の返事はありえなかった。だからこそもどかしい。


『いま、おごそかに……二人が壇にあがりました! これより王子殿下が直接お越しになられます! 皆様、ご起立をもってお迎えください!』


 数万人の観客がいっせいにたちあがった。


 ブラスバンドが一度演奏をやめると、北側出入口から赤いじゅうたんがひとりでに壇までのびた。


 じゅうたんがのびきってから、ブラスバンドは国歌を流しはじめた。昔の癖でつい口ずさみかかり、あわてていずまいをただす。ベレンのほうがよほど落ちついていた。


『第三王子バル殿下、ご入場!』


 観客が自然に拍手をはじめる。本気で手をたたいているのは聞けばわかるものの、私達のようには熱狂的なものではなかった。白けているのではなく、敬意を表する気持ちが自然に品格のある拍手につながった。もっとも、王子個人を敬うというよりは王室を敬う気もちが強いだろう。この二か月ほどで、私はそうしたことも学んだ。


 王子がじゅうたんを踏みながら、一歩一歩壇に近づいてきた。聖女はおらず、一人だけだ。大事な儀式だから当然ではある。私はまだ仮面をつけたままだけど、どうせ外さないといけない。


 王子が壇にあがる直前、私達はひざまずいた。私はベレンよりもはるかになめらかにできたのだが、それ自体にはなんの感情も湧かなかった。


『王子殿下、ご登壇! 皆様、ご着席ください。なお、これよりは魔法による自動拡幅音声で壇上の儀式をお届けします』


 ブラスバンドは演奏をやめた。


「レンベ、そしてゼネーロ。顔をあげよ」


 私達は、ひざまずいたまま顔をあげた。


「この度お前達は、けっして有利とはいえない状況で見事優勝を果たした。ところで、ゼネーロ。私から祝福を授けるには、いささか邪魔なものがまとわりついているな」


 いうまでもなく、仮面を外せと要望している。断れるはずがないし、そのつもりもない。

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