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五、いよいよ正念場! のるかそるかですわ! 六

 試合の性質上、優勝した選手には負傷や疲労を回復するための時間があてられる。そのあいだに、試合場には栄冠をさずけるための壇がこしらえられる。このとき、一般席の観客は最後まで残らねばならない。王子があらわれるのに席をたっては不敬にあたるからだ。特別観覧席の元締め達も本来ならいなければならないのだが、『国民のためにより大きな責務を果たしている以上、一刻もはやく日常の仕事に復帰する』という名目でさっさと帰るらしい。なんにせよ、邪魔者が消えてちょうどいい。


『なんという逆転劇! なんという不屈の精神! これほどの爆発力は、大会はじまって以来です!』


 あまりの予想外におどろきあきれた観客達は、ほんの数秒ほど言葉を失った。ついで、ありとあらゆる絶賛と絶叫が円形闘技場を何度となくゆさぶった。


『勝者、レンベ! 自由参加選手同士の決勝、自由参加選手の優勝! 優勝興行主は女性! すべてがはじめてづくめ、異例中の異例! 大会史上特筆すべき結末となりました!』


 よろこんでばかりもいられない。私……いや、私達にとってここまでは前座にすぎない。


「失礼いたします。ゼネーロ様、試合場へご足労頂けますでしょうか」


 運営の職員が、私を呼びだしにきた。現場につくうちに、ベレンの負傷は回復し壇は完成しているのだろう。そして、王子がくる。優勝者は王子に願い事が一つだけできる。なにを願うかは、ベレンとじっくり打ちあわせをしてきめてあった。


 壇はあらかじめ作ってあるものを試合場の中央に持ってくるだけなので、どのみち時間はかからない。基本的には毎年同じものをつかう。


「ありがとうございます。よろしくお願いします」


 私は席をでた。職員からニ、三歩遅れてついていく。


 この大会で特別観覧席を最後にはなれるのは、私ということになる。名残りを惜しむつもりはないものの、ちらっと振りかえった。


 この三日間、男衆に混じってじっと試合を見まもる以外にやれることは一つもなかった。何事にも待たねばならないときはある。わかってはいても、何度歯を食いしばって胃をおさえたことか。


 職員が、気を利かせてか足をとめた。私はふたたび歩きはじめ、もう前だけを目ざした。

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