五、いよいよ正念場! のるかそるかですわ! 五
いまさらとりにはいけない。ベレンは素手のままブロンゾに組みつこうとした。武器を失っても、とにかく相手が降参するか戦えなくなるかすればいいので規則は破ってない。でも著しく不利になったのはたしかだ。
ベレンの動きを十分に予想していたかのように、ブロンゾは脇をしめて短く鋭い突きをくりだした。ベレンの左手の甲にはじめて刃があたり、思わず彼はひるんだ。好機をえたブロンゾは、焦らず小さな突きを何度もくりかえした。ベレンは間合いを詰められず、それどころかじりじりと後退していく。
ついに、壁ぎわまでベレンは追いこまれた。彼の両腕は刺し傷だらけになり、出血がとまらない。
『おおーっとブロンゾ、レンベを倒すまであと一歩というところで両腕をたかだかとあげるパフォーマンス! 彼の右手には、この三日間しかと伝説を実証してきた古代剣が輝いています! 観客はもはや貴賤貧富をこえて興奮をおさえることができません! 総だちになってブロンゾに声援を送っています! どうするレンベ! 降参か!? それとも起死回生を狙っての反撃か!?』
私もまた、椅子からたっていた。ただし、ほとんど唯一ベレンの味方をしていた。声こそださなかったものの、こんなパフォーマンスにくじけないでほしかった。古代剣の柄にはルビーがはまってないのも見えた。そんなことはあとだ。
両腕をゆっくりおろしたブロンゾは、剣を一直線にベレンの胸元へと突きいれた。ベレンは自分からブロンゾへと突進し、刺される寸前に頭を下げた。兜に剣が直撃してまっ二つになったのも束の間、割れた兜の破片を手にしてブロンゾへ投げつける。
ブロンゾの剣は、方向がずれてベレンのこめかみを削った。同時に、ベレンが投げた破片がブロンゾの顔を叩きのめした。
うしろへ背中をそらせたブロンゾに、今度こそベレンは組みついた。足をかけて転ばし、ブロンゾの背中を踏みつけるようにして右腕を逆にねじる。たまらずブロンゾは古代剣を手ばなした。すかさずベレンはブロンゾの右腕を折った。さらに、頭のうしろをかかとで地面にめり込ませるほど激しく踏みつける。
ブロンゾの手足がぴくぴくけいれんし、やがてとまった。
『しょ……勝負あり! 勝負ありました!』
「や……や……やったーっ! やったーっ!」
私は椅子をどこかに転がして喚き、床を突き破らんばかりに飛びあがった。仮面が外れかかったけど、かまうものか。
他の元締め達はみんな、無表情にぞろぞろ退場していった。連中からすれば番狂わせにつきあう必要はないだろうし、そうでなくとも残る必要は薄い。




