五、いよいよ正念場! のるかそるかですわ! 四
ブロンゾが、ベレンとの確執をよそにもらすとはとうてい考えられない。つまり、私の周囲にいる男衆は自分達が信じる予定調和とまるで異なる結末に襲われるだろう。何人かは破産するかもしれない。同情はしないが緊張は強いられた。
『それでは、第一試合の選手以外は退場してください!』
試合は、というより運命は情け容赦なく進行した。
いざはじまると、様々な技や装備が一戦ごとに火花を散らした。軽傷を負っただけで降参する者もいた反面、せっかく勝ったのに体力がつづかず相討ちで死ぬ者もいた。一喜一憂する一般客をよそに、特別観覧席は静観が保たれている。
ベレンもブロンゾも、最終日まであっさりと勝ち進んだ。ブロンゾのやり方は、一度知ってしまえば簡単だった。相手を殺さないように降参させればいい。竜云々は、死体にならないとでてこないというのをはじめて知った。とはいえ相当な技量がいるはずだ。ブロンゾは腕はそれほどたたないということだし……それを見こして根まわしをしたのだろう。興行主の何割かは特別観覧席に姿を見せなくなったが。
『いよいよ決勝戦! なんの因果か番狂わせか! 最後まで残ったのは、若き当主ブロンゾと謎の男レンべ! いったいだれがこの展開を予測しえたでしょうか! もうすぐ、どちらかがバル殿下より栄冠を授けられる名誉に浴します! そのとき、両者の身体からどれほどの血が流されるのでしょうか! もはやとどめることはできません! 決勝戦、開始!』
二人の男が、私の運命を賭けて戦うことになった。レンべことベレンは自分自身や自分の師匠についても背負うものがある。それはもう、私の運命と一体化しつつあった。
固唾を飲んで見守るのは、他の人々も同じだった。
むかいあったまましばらく睨みあったあと、ベレンとブロンゾはゆっくり歩みよった。
最初に仕かけたのはブロンゾだった。腕をのばせば切っ先が届くところまできて、いきなり首筋に斬りつけた。
ベレンは軽くうしろにさがってかわし、地面を蹴って大きくブロンゾへと跳ねた。ブロンゾもまた剣を斬り返し、空中で刃同士がかちあって火花が散る。
そのままつばぜりあいになるかと思ったら、ブロンゾは身体をひねりながら腰を沈めた。
ベレンは足が泳いでもつれ、両手首に隙ができる。ブロンゾの古代剣が襲いかかってくるのを、ベレンは剣を手ばなすことでかろうじてかわした。しかし、彼が態勢をたてなおすあいだに、剣はブロンゾがなぎはらうようにして弾きとばした。




